1.タイワンオオクワガタについて
Dorcus grandis formosanus (タイワンオオクワガタ)は、グランディスの台湾亜種として知られています。グランディスの生息域を地図上に示すと、ヒマラヤ西部からインドシナ中央部、そして海を隔てて本種が生息する台湾と広く分布しています。氷河期の終わりとともに海面上昇、現在の台湾に取り残されたんでしょうな。しかし、境界線上に位置する中国の海南島に本種の公式記録がないのは不思議。インドシナやヒマラヤで混棲しているアンテも居るのに。近縁種のホペイの生息地でもあるのでこの数千年の間に取り込まれたのか?? 不思議な島です...今回は台湾が主役だっつーの。
台湾域内での生息地を以下のマップで星マークで示すと、台湾全土に分布しているように見えますが、山脈に沿って産地が集積しています。
手書きなので超大雑把…台湾を南北に走る雪山山脈(青線包囲部分)が本種の多産地域としてよく知られています。たとえば、桃園市復興区産、新竹県尖石郷産、苗栗県泰安郷産、南投県仁愛郷産など。次に黄緑色線で包囲した阿里山山脈系の阿里山郷産。また、緑線で包囲した玉山山脈系の高雄市六亀郷産。産地が漢字ばっかでタイプするの疲れるわ..県は簡単な方にしました。
生息地をプロットしただけのつまらない内容ですが、生息地の位置関係を知るって後々点と点が繋がったりして役に立つことがあるので毎回載せるようにしています。
台湾は南北に500km程の島なので地域毎の変異はない印象で、個体差がバラエティにとんでいるかと。例えば、同じようなサイズにも関わらず、hopeiのような顔が出たりインド/ミャンマー亜種のような顔が出たりする等、歯型変化が楽しめるクワガタと思います。
→はモリヤイっぽい大顎。←はあータイワンだわ、って感じしませんかね?
良くある話では、前胸背反側縁の上部形状の差異。この部分が膨らむcurvidens的側縁上部形状なC型、逆に刳れるgrandis原名亜種的側縁上部形状なG型と呼ばれる、みたいな。ちなみにインド/ミャンマー亜種は膨らみます。同腹でも累代が浅いと別々の形質が出ます。
左が親、真ん中、右が兄弟です。C型、G型両方が発露していますね。
台湾では90年代後半に保護生物に登録され採集が禁止されているので、累代品のみ。建前上はね!しかしながら根強いファンが多く流通量は多いので、簡単に手に入ります。オークションであれば2000円台から。
2.種親紹介
今回ブリに使用した種親は、南投県産 CB ♂55mm ♀43mm、35mmで2ライン組みます。BEKUWA飼育ギネスが確か84.3mmなのでクソ小さい。単なる親バカでございますが、本個体はザ★タイワンオオって感じの大顎形状とボディバランスのGoodな美麗個体っす。
今回使用する種親は、ヤフオクにて幼虫で購入(送料除きで500円/頭くらいだったかな)し、2018年6月末(♂)と同年4月末(2♀)に羽化させたもの。♂は、三齢幼虫のときに28gを超えていました、ん!?でも体長は55やんけ!!...体重計測時にマット飼育に切り替えたのですが、羽化時のマットがかなり乾燥してしまったため、予想よりもはるかに縮んで羽化してしまいました。ただのヘボブリーダーです、すみません。。。 でもポテンシャルは絶対あるはず!!
3.ペアリング
多産を志向するのであれば、性成熟を十分にするために、羽化後1年は交配させない方が良いと言われています(主にDorcus属)。が、サイクルを早くまわしたかったので、♂の羽化後半年でペアリングを決行することにします。ゼリーも良く食べてたし。でもね、一般的にこうした方が良いって話は素直に聞いた方が良いよね、やっぱり。飼育ログを辿ると、ペアリングは2018年11月初旬に実施。プリンカップに入れるとすぐに♂がモーションをかけ始めます。
今回は累代品なので、顎縛りはしていません。
交尾を確認。♂には別♀とのペアリングを連続して頑張ってもらいます。
4.産卵セット投入
Aライン(35mm♀)の産卵セットは、コバエシャッター(中)にマットを5センチほど詰め、ホダ木(中)×2を加水、皮を剥いだものを転がしてセット完了。ホダ木は芯も残って入ればシミもあるB材使うあたり良い感じで力抜けてます笑
一方、Bラインは♀(43mm)の体格が良いため、期待を込めてモンスターの植菌カワラ材(M)、土埋め霊芝材をセット。気合い入っているときの結果は大体イマイチっすね...
5.割出
割出は2018年12月3日に実施。晩秋-初冬にかけてのセッティングだったので、25℃くらいまで加温してあげないと産卵行動に移らないかな、と心配していましたが、その予想に反して、Aラインはセット組んでから2,3日で材を齧りだしました。一方で、Bラインはウンともスンとも...ハイ、寝たようです...準VIPセットだったのによ...
セット環境ですが、当時は引越し前でブリスペースがリビングの片隅にあり、暖房入ると25-6℃まで上昇、朝方は20℃切るくらいを繰り返しているような感じ。虫からすると産卵スイッチ入れにくかったでしょうねぇ。
(写真を撮り忘れていたので、材の状態は忘れてしまいましたが) それでも35mmの小柄な♀でしたがきちんと結果を残してくれ、Aラインからは初齢4頭、卵4頭を割出ました。
埋め戻した木屑がアオカビに侵食されつつあったので卵で回収出来て良かった…
こちらは孵化したての可愛らしい幼虫。
いやーこれくらいの割出頭数が丁度管理しやすくて良いね。←言い訳炸裂!ただの負け惜しみやないか。
卵は、オオヒラタケ菌糸(月夜野きのこ園Basic)を 250CCプリンカップに入れて、25度設定の温室で管理し孵化を促します。
6.幼虫飼育‐羽化
その後、卵も全て無事に孵化、250ccのプリンカップにて管理。(管理途中1頭のみ暴れたので500ccカワラ菌糸/月夜野きのこ園へ投入)
12月初旬にプリンカップに投入し、3月初旬に第一回目の菌糸瓶投入。3か月も放置プレイ…これやっちゃうとだいたい小さくなるのよね…
菌糸も幼虫の怒りが乗り移って暴発しそうです。温室のサーモコントローラが故障してしまい温度変化によって菌糸活性しただけなんだな。
比較的居食いしていて食痕が発現しない個体が多かったです。
1頭は溶けて★に。2齢後期-3齢初期。放置プレイの弊害です。このときは、雌雄比率は3♂4♀な感じかとおもっていたんですがねぇ。それぞれ1400CC、800CCボトル(月夜野きのこ園/Basic)へ投入。
暴れにより先んじて500ccカワラボトルに投入個体は、遅れること1か月、4月中旬に交換。
90%近く食い上がっていますね。
15gで ボディもまだまだ白い。更に大きくなってもらうべく、1500ccカワラ菌糸瓶に投入!菌糸は月夜野きのこ園カワラ菌糸に粗めのおが屑を添加したケチケチ瓶だけど。
プリンカップで引っ張りすぎてしまったので、1本返しで羽化まで引っ張りました。管理温度は22度ほど。
6月下旬から蛹化が始まりました。子の個体は、菌糸を全部食い上げていて、マット飼育したみたいになっています。
中からは美型個体がポロリ。
こちらは蛹室が菌糸に圧倒されそうだったので人工蛹室で羽化までもっていった個体。丸を描く感じがhopeiっぽい?
羽化直後は羽パカかと思われましたが、体が固化するとともにリカバリーしてくれ完品羽化。
劣化が進み泥状になってしまった瓶からはこのサイクル最大個体がこんにちは。
♀たちも完品で羽化。
7.羽化個体紹介
結局、プリンカップからの交換で1頭★で仕上がり5頭。雌雄構成は当初3♂4♀を予想していましたが、4♂2♀。お恥ずかしい...それでは以下、お目汚しをば。
①♂68.3mm. 2019年11月末羽化。当代最大個体。内歯が横に向いた中歯型。まだまだ伸びるかな?体も太く、重量感ある個体。戻し交配するか悩み中。
②♂66mm. 2019年10月末羽化。上翅が間延びしていて若干バランスがよろしくない感じ。当初羽パカかと思われましたが見事にリカバリーしてくれました。顎が綺麗に円を描く感じで角度によってはhopeiっぽく内歯が重なって見えます。1400cc一本返し。
②♂65mm. 2019年9月中旬羽化. 800ccの一本返しにも関わらず、お尻が小さく大顎が外に迫り出す理想の美形個体が出てきました。次期の種親候補です。
③ ♂60mm. 2019年9月初旬羽化。ちっせえんですが、顎が太くて個人的には好きな個体っすね。
④ ♀43mm.
⑤ ♀43mm.
(参考)
種親ですね。まだまだ存命です。(2019/12/1現在)
親子2ショット。うん、息子いいよ。タイワンオオクワ美形コンテストあったら応募したい...
8.まとめ/次サイクルについて
今回の反省点は、充分な休眠を取っていればもう少し産卵数伸ばせたかもなぁと考えていることと、幼虫飼育がかなりズボラになってしまったことの2点かなと。幼虫飼育なんか、プリンカップで必要以上に時間を使ってしまったことや、その後は1本返ししちゃいましたし。まだ菌糸食べたりないよ~って感じで羽化してましたもん。今回は特に②の個体がお気に入りなので、2020年春に別系統の♀40mmと交配する予定です。
2019年9月羽化個体。南投県産CB 40mm. (親は85.8mm/台湾王…BEKUWAレコードよりデカいんですけど) . ヤフオクで500円で購入。