1.はじめに
予め申し上げておきますと、今回のブリードは近年稀に見る(←決して稀ではないだろうが!)大失敗でございます。へっぽこでございます。本種初挑戦の諸兄姉が同じ轍を踏むことがないよう、恥を忍んで筆をとりたいと思います。
キンオニクワガタ(Prismognathus dauricus)は日本では長崎県対馬のみに生息していますが、韓国では全土に生息している普通種とのこと。彼の国は日本より緯度が高く多少涼しいので、比較的冷涼な環境を好む本種が広く生息できるのですかねぇ。体長は飼育ギネスで40mmですが、♂のアベレージサイズは20mm後半-30mm中盤くらいでしょうか。
実物を見ると「ちっさ!!」「全然金色じゃねぇ!!」と思ってしまうのは、「キンオニクワガタ」という看板倒れの名が冠されていることに他ならないですね。あとはオニクワガタ≒オウゴンオニが浸透しているからかな? いっそのこと「ドウイロオニクワガタ」とか「チョウセンオニクワガタ」とかの方がしっくりくるよなぁ。対馬の気候は、対馬海流の影響で寒暖差の少ない比較的温暖な (対馬の冬はすっげー寒いと聞きますが...) 海洋性気候で、雨が良く降ります。特に本種が発生する6-8月の降水量は990ミリの雨が降り、同期間の東京の約2倍以上です。また、島の89%が勾配のある山林に覆われている地形のため、保湿もされ冷涼な環境が維持されてるのかなと想像。事前情報+妄想をインプットしいざブリード開始!
2.種親紹介
今回の種親はオークションで購入。1♂2♀のトリオで3,200円程。2年経った今でも値崩れしていないので小型種ながらそこそこ人気ありますね。購入日は2018年6月中旬。産地は対馬北部にある標高479Mの御岳(みたけ)。2017年12月末に材割採集個体を羽化させたものなので表記はWF0になるのかな?サイズは♂32mm、♀22mm, 20mmです。ゼリーも舐めていますし、♀の飛翔行動も確認できたので即ブリトリオと判断し直ぐにセットを組みました。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①ペアリング - 産卵セット投入(2018年7月)
丁度夏場に差し掛かったので、20度設定のセラーに投入して管理します。中ケースによく加水したモンスターさんの夏菌マットにこちらも加水したホダ木を2本埋め込んだセットを組みます。
オスの気性は荒いものの、大顎も短く挟む力も弱いためメス殺しはないと判断、同居飼育とします。写真を撮り忘れてしまいましたがメートガードしている様子がよく観察でき、予想以上にメスに対して優しいようですね。
小さいのに威嚇だけは一丁前です。
②割出(2018年10月中旬)
セットを組んでから3か月が経過。終始セラーに入れて時折霧吹きをして保湿します。ケース底や側面に初齢-二齢幼虫が見えていたので、割出。夏菌マットの菌糸が回ってオガを良い感じに分解してくれています。幼虫はマット表層近くまでアリの巣状に縦横無尽に食べている感じで、菌糸が良い具合に回りスポンジ状になっている箇所では複数の個体が固まっていました。写真撮り忘れた... 材にも少なからず入っていましたので、マット、材両方に産む種類のようです。結局20頭回収できました。ここまでは絶好調やないか…うち4頭は里親へ!
割り出した幼虫は産卵セットと同じ夏菌マットを堅詰した250CCプリンカップで個別飼育していきます。
③幼虫飼育(2018年10月-)
お待たせしました。ここから暗黒面へ落ちていきます。
250CCに投入してから2か月が経過した2018年12月末。側面から覗いている幼虫を観察すると、3齢初期程度の幼虫が見えており、2-3gまで成長していたので少し窮屈そう。そのままブチ込んで羽化まで引っ張ればよかったんだよバカヤロウ。 そこでマットの交換に踏み切ります。(ミスその1)
そして、高添加マットに切り替えれば更なる大型化が狙えるのではないかという邪心が頭をもたげます。(ミスその2)で、選んだマットが高添加マット&安価マットの代表格であるき〇こマット!!良い子はキンオニ飼育で絶対に選んではいけません。←だれも選ばねーよ、お前くらいだよボケ。そして、500CCボトルに当該マットを加水して幼虫を投入したのですが、幼虫ちゃんたちは大暴れ。コバエも湧きまくったぜよ。根本的に高添加マットは本種にマッチしていないと気付いたものの はじめから気付いていない時点でセンスねぇよな…、落ちに落ちまくり16頭いた幼虫はみるみる8頭まで半減。フォーテックさんの産卵一番に切り替えて様子見。ここでやっと落ち着いてくれたので、もう安心だな、と。春には羽化してくれるだろうなぁ♪と。2018年、平成30年の暮れ頃に呑気に考えていました。
④羽化(2020年3月-)
羽化が始まったのは平成の世はとっくに終わった令和2年3月です。2年1化とまではいかないけど、小さな体してちょっと長すぎじゃありませんか?知人に里子に出したペアは1年前に羽化済みなので、高添加マットに入れたことでひねちゃったんですね。セミ化して一向に蛹化しないので、加温してみたりしましたが全く反応せず。あろうことか真っ黒になって落ちていく個体も続出し蛹化まで漕ぎ着けたのは4頭…ところが2頭も羽化までたどり着かず死滅・・・・。
残る2頭は無事蛹化、そして1頭は無事羽化しています。
最後の1頭は人工蛹室で管理します。アップで見ると複眼の上の突起が厳ついですね。
脚をゆっくりと動かしいるのでもう羽化間近です。
1日経過して羽化直後の写真でも撮るかと思い覗くと・・・・
お亡くなりになっていました。
4.羽化個体紹介
はい、というわけで、たったの1頭の羽化紹介であります。
さみしいねぇ。たくさん羽化させて♀とか割愛しちゃいたかったぜ。。。。。
① ♂36mm.
こしきゆかしき雰囲気のある渋いクワガタ。大好きだぜ。全滅してたら大嫌いになるところだっただけど。
裏面。
大顎先端の下側に窪む湾曲好きだなぁ。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。こうやって綴ってみると改めて悪手の連続だったなぁと。手練れの大先輩ブリーダー方からすると何やってんねんと突っ込まれそうな行為をしまくっていましたが、私のようなキンオニ初挑戦者の方々の反面教師になると思い敢えて晒してみました。やはり、私の失敗はなんといっても幼虫飼育でしたね。キンオニ幼虫飼育は無添加、乃至は低添加マットが必須です。私の場合、そのまま夏菌マットを使用し続け、250プリンカップ1本返しで何ら問題なかったはずです。高加マットに変更したりボトル交換を頻回にしたりするとヒネます。今サイクルで得た学びを次サイクルで…って♂単でどないすんじゃ、と思っていましたが、心優しいtwitterのフォロワーさまが同時期羽化の♀単を譲っていただけることに。
takahiroさん、本当にありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。気合入れて次サイクル回して成虫ペアバック出来るよう精進します!!