1.はじめに
今回は、リュウキュウコクワガタ(Dorcus amamianus nomurai)の飼育記事です。南西諸島に4亜種が生息する小型のクワガタで、原名亜種は奄美大島に生息するアマミコクワガタ、他3亜種がトクノシマコクワガタ(徳之島)、リュウキュウコクワガタ(沖縄本島)、ヤエヤマコクワガタ(石垣島?西表島)になります。一昔前は、リュウキュウコクワガタが原名亜種として分類されていましたが、現在は一亜種として認知されています。
コクワガタといっても本種は脚長で、体に対する比率はヒメオオクワガタに似ています。実際、近縁種のようで、大顎形状や幅広な前胸のフォルム等、見た目も類似点が多いように思います。
沖縄本島における生息域は原生林が残る北部地域になり、比較的標高のあるエリアでスポット的に観察例が報告されているようです。
2.種親紹介
種親は3000円弱にて購入。不人気種なのでオークションだともっとお手軽に手に入るかと。
野外♂ギネスは37mmなので、34mmは比較的大きい方ですね。
♀は30mmとこちらも大型です。
大顎は内歯が重なりながら前に出るオオクワミニチュア版のようなフォルム、前胸背板の広さ、脚の長さが特徴的です。アベレージ50-60mmくらいあったらそこそこ人気あると思うんだけどな...
体色は漆黒ではなく至極色といったところでしょうか。趣があります。雌雄ともに2018年7月羽化なので即ブリです。羽化してすぐに後食するようですがペアリングは羽化後1年は待った方が良い気がします。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-蛹化-羽化
①ペアリング(2019年5月上旬)
プリンカップに雌雄を1-2週間放り込んでおきました。警戒心が強く交尾の様子は確認できませんでしたが、まず掛かっているでしょう。
②産卵セット(2019年5月中旬)
(1回目)2019年5月中旬
産卵セットは、デジケース(中)に、ばくさん君特Aマットを4-5センチ固詰した上に同マットを無加圧で同じ厚さだけ敷き、自作のバクテリア材を半分埋めたもの。加水量は握ると水が滲み出てくるほど。20度管理。
割出は2-3か月後を予定。
(2回目)2020年3月中旬
1回目と志向を変え、菌床を使用した産卵セットも試してみました。クリアスライダー小にDOSのヒラタケ菌糸(ブナ)を詰めたもの。
③割出
(1回目 2019年8月下旬)
組んでから4か月弱経過してしまいました。割ってみると良い雰囲気の食痕が確認できたので期待に胸膨らむも結果4頭のみ。1頭はプチった訳ではないのに死んで間もない生々しい頭部が。共食いでしょうかね。サイズもバラバラなのでダラダラ産んでる感じです。
(2回目 2020年5月上旬)
菌床セットが腐海状態になっていたので割出。組んで1か月程で側面から幼虫が見えていました。5幼虫回収できました。1回目のセットでは20度管理でしたが、今回は25度管理にしていました。多少温度が高い方が比較的レスポンスが良いような気がします。
④幼虫飼育
管理温度はいずれも18-20度です。
(1回目割出分)
1回目で割出た幼虫は月夜野きのこ園のカワラ菌糸(500cc乃至は430cc)を使用、1本返しを前提としていましたが、途中劣化してしまったボトルは一部2本返ししています。
(2回目割出分)
在庫の関係でバンブーインセクト(ヒラタケ)の800ccボトルへ全頭投入しました。
⑤蛹化-羽化
(1回目割出分)
2020年4月上旬から蛹化が始まりました。カワラ菌糸で劣化が激しいボトルの個体は人工蛹室管理をします。
色付きだした4月下旬頃。
羽化。
趣深いクワガタです。
500ccカワラ1本返し。上部含め全然食べていません。食細過ぎ...
♀も同時期に蛹化。
シャープな良い個体です。
4.羽化個体紹介
ざっと羽化個体を紹介していきます。1回目分と2回目分で合わせて9個体羽化してきました。
(以下、1回目割出分個体)
① ♂31.8mm
2019年8月→500cc 月夜野カワラ
2020年5月中旬羽化
② ♂ 30.7mm
2019年8月→月夜野カワラ 430cc
2020年1月→DOS ヒラタケ 500cc (3g)
2020年4月下旬羽化
③ ♂ 30.4mm
2019年8月→月夜野カワラ430cc
2020年4月下旬羽化
④ ♀ 28.5mm
2019年8月→月夜野カワラ 430cc
2019年12月→DOSヒラタケ 430cc
2020年5月羽化
(以下、2回目割出分個体)
⑤ ♂ 34mm
2020年2月29日セット(DOS菌床)
2020年5月1日割出→バンブーインセクト ヒラタケ800cc
2020年9月13日DOS生オガ500cc (4g)
2020年12月30日前蛹確認
2021年5月自力ハッチ
⑥ ♂ 33.5mm
2020年2月29日セット(DOS菌床)
2020年5月1日割出→バンブーインセクト ヒラタケ800cc
2020年9月13日DOS生オガ500cc (3g)
2021年3月22日蛹化確認
2021年5月自力ハッチ
⑦ ♀ 29.8mm
2020年2月29日セット(DOS菌床)
2020年5月1日割出→バンブーインセクト ヒラタケ800cc
2020年9月13日DOS生オガ500cc (3g)
2021年5月自力ハッチ
⑧ ♀ 30.1mm
2020年2月29日セット(DOS菌床)
2020年5月1日割出→バンブーインセクト ヒラタケ800cc
2020年9月13日DOS生オガ500cc (3g)
2021年5月自力ハッチ
⑨ ♀ 31mm
2020年2月29日セット(DOS菌床)
2020年5月1日割出→バンブーインセクト ヒラタケ800cc
2021年5月中旬羽化
5.まとめ
羽化後1年くらいじっくり寝かせてからペアリング・セットを組めば容易に産む印象でした。菌床セットでも問題なく産んだので、今後はこのやり方でやってみたいと思います。クリアスライダー小で産ませられるので省スペースで良いですし、材割下手糞マンにはうってつけかなと。
雄判別出来るようになるまでプリカで管理してから♂は500-800cc、♀は250-500ccの菌糸飼育で充分な気はします。幼虫も丈夫で管理しやすかったものの、1回目割出分の反省点はカワラが急激に劣化してしまいヒネてしまい大型化出来ませんでした。2回目割出分については、2本返し(1本目菌糸→マット)にしたところ、♂34mm、♀31mm(羽パカ)で一応親同等サイズの大型個体を羽化させることができました。一方、飼育ギネスが39.2mmと特大なので、継続し甲斐があります。独特の雰囲気をもつクワガタで個人的にはツボな主ですし、スペースもとらないので全亜種コンプしたいところ。願わくば自己採集で...