1.はじめに
今回紹介するのは、リュウキュウコクワガタ(Dorcus amamianus nomurai)の飼育記事です。南西諸島に4亜種が生息する小型のクワガタで、原名亜種は奄美大島に生息するアマミコクワガタ、他3亜種がトクノシマコクワガタ(徳之島)、リュウキュウコクワガタ(沖縄本島)、ヤエヤマコクワガタ(石垣島?西表島)になります。一昔前は、リュウキュウコクワガタが原名亜種として分類されていましたが、現在は一亜種として認知されています。4亜種の見分け方については、全亜種飼育した暁には検証内容を記事にしたいですね。果たしていつになるのやら…
沖縄本島における生息域は原生林が残る北部地域になり、比較的標高のあるエリアでの観察・採集例が報告されているようです。やんばるの森の限られた範囲でうすーくひろーく生息している感じがしますね。
■本種の起源に関する考察
本種の中で最南端に生息するヤエヤマコクワガタが最も古く分化したことが分かっていることからすると、日本列島が大陸と陸続きだった頃(600万年前頃?)から北上しながら伝播していったと考えます。また、大陸から切り離され、現在の南西諸島と近い島弧となったのは150万年前以降であることが知られていますが、この頃は地球全体の気温が次第に低くなったときであり、おそらく本種の祖先も北上せず、現在の生息域に固定化したように考えられます。黒潮に浮かぶ島となったことで、本種を含む生物たちは、気候の寒冷化に耐えることができたのかなーと(大陸に残った本種の祖先たちは絶滅?)。本種に限らず南西諸島に数多くの固有種が生息しているのは、そういった背景があるように考えられます。
2.種親紹介
種親はINSECT ULTIMAさんにて購入。ペアで3000円弱だったかな?
野外♂ギネスが37mmなので、34mmは比較的大きい方ですかね。
♀は30mmとこちらも大型です。その子供もきっと大型だよね😊
大顎は内歯が重なりながら前に出るオオクワミニチュア版のようなフォルム、前胸背板の広さ、脚の長さが特徴的です。アベレージ50-60mmくらいあったらそこそこ人気あると思うんだけどな...
体色は漆黒ではなく至極色といったところでしょうか。趣がありますね。雌雄ともに2018年7月羽化なので即ブリです。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-蛹化-羽化
①ペアリング(2019年5月上旬)
プリンカップに雌雄を1-2週間放り込んでおきました。警戒心が強く交尾の様子は確認できませんでしたが、まず掛かっているでしょう。
②産卵セット(2019年5月中旬)
(1回目)2019年5月中旬
産卵セットは、デジケース(中)に、ばくさん君特Aマットを4-5センチ固詰した上に同マットを無加圧で同じ厚さだけ敷き、自作のバクテリア材を半分埋めたもの。加水量は握ると水が滲み出てくるほど。20度管理。
割出は2-3か月後を予定。
(2回目)2020年3月中旬
1回目と志向を変え、菌床を使用した産卵セットも試してみました。クリアスライダー小にDOSのヒラタケ菌糸(ブナ)を詰めたもの。
③割出
(1回目 2019年8月下旬)
組んでから4か月弱経過してしまいました。割ってみると良い雰囲気の食痕が確認できたので期待に胸膨らむも結果4頭のみ。1頭はプチった訳ではないのに死んで間もない生々しい頭部が。共食いでしょうかね。サイズもバラバラなのでじっくりゆっくり産んでる感じです。
(2回目 2020年5月上旬)
菌床セットが腐海状態になっていたので割出。組んで1か月程で側面から幼虫が見えていました。5幼虫回収できました。1回目のセットでは20度管理でしたが、今回は25度管理にしていました。多少温度が高い方が比較的レスポンスが良いような気がします。
④幼虫飼育
管理温度はいずれも18-20度です。
(1回目割出分)
1回目で割出た幼虫は月夜野きのこ園のカワラ菌糸(500cc乃至は430cc)を使用、1本返しを前提としていましたが、途中劣化してしまったボトルは一部2本返ししています。
(2回目割出分)
在庫の関係でバンブーインセクトの800ボトルへ全頭投入しました。
⑤蛹化-羽化
(1回目割出分)
2020年4月上旬から蛹化が始まりました。カワラ菌糸で劣化が激しいボトルの個体は人工蛹室管理をします。
4月下旬には色付き出します。
羽化。
小さいですがカッコ良いですね。
こちらは別個体。
500カワラ1本返し。上部含め全然食べていません。食細過ぎ...
♀も同時期に蛹化。
小ぶりな個体ですが良き。
羽化直後なので赤味が強めです。
(2回目割出分)
2020年7月現在幼虫飼育中。
4.羽化個体紹介
以下、ざっと羽化個体を紹介していきます。とりあえず1回目割出分。
① ♂31.8mm 2020年5月中旬羽化
2019年8月→500cc 月夜野カワラ
② ♂ 30.7mm 2020年4月下旬羽化
2019年8月→月夜野カワラ 430cc
2020年1月→DOS ヒラタケ 500cc (3g)
③ ♂ 30.4mm 2020年4月下旬羽化
2019年8月→月夜野カワラ430cc
④ ♀ 28.5mm 2020年5月羽化
2019年8月→月夜野カワラ 430cc
2019年12月→DOSヒラタケ 430cc
5.まとめ
羽化後1年くらいじっくり寝かせてからペアリング・セットを組めば容易に産む印象でした。菌床セットでも問題なく産んだので、今後はこのやり方でやってみたいと思います。材割が嫌いなので… でもクリアスライダー小で産ませられるので省スペースですよ!
デカいのを出せているわけではないので大きな声で言えませんが、雄判別出来るようになるまでプリカで管理してから♂は500-800、♀は250-500の菌糸飼育で充分な気はします。
幼虫も丈夫で管理しやすかったですねぇ。今回の反省点はカワラが急激に劣化してしまったため、次回は新鮮なエサを与え続けたいところ。2回目割出分は良い菌糸の状態で食べさせ続けられているようなので、期待を寄せています。独特の雰囲気をもつクワガタですし、スペースもとらないので、全亜種コンプしたいところ。ヤエコやりたいけどラベルのしっかりした個体を見つけねぇと。オークションとか見てると??これほんとにヤエコ??な個体も売られているので…