1.はじめに
今回飼育したのは久々に(10年ぶりとのこと)WD便がきたメタリフェルホソアカクワガタ アエノミカンス(Cyclommatus metallifer aenomicans)です。産地はハルマヘラ島、バチャン島、カシルタ島が知られています。一般に知られている全3産地から入荷があり、そのうちカシルタ島産をブリードしました。本種は現在(2020年12月時点)レコード未登録種なのでこれを意識して購入された方も多いはず。次のレコード号の登録サイズが楽しみですね。登録ラインは80ミリUPが来るような気がします。しばらくブリード品も出回るでしょうからカシルタ島産以外もトライしてみたいですね。
2.種親紹介
2020年4月中旬に最終便をオークションでアリストさんより購入。最後の駆込みで5-6千円ほどだったかと。サイズは♂56 mm ×♀21mm。オスは小さいながらも長歯です。原名やfinaeと比べると大顎の湾曲が強いのと顎含めやや太い印象をうけます。
体色は赤銅色で繋ぎ目が青みがかっているように見え、脚は黄色くこの個体は原名と雰囲気が似ています。体が擦れているので活動してからだいぶ時間が経っていそうな感じです。
実は♀も、爪のかかりがイマイチで不安が残る状態です。野外品は爪のかかりが悪いと不安になりますよね。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①ペアリング(2020年4月12日)
持ち腹の可能性が高いですが念のため。
交尾欲が強い種ですぐに交尾が始まり、メートガードをしている様子が確認できました。メスの状態が心配なのですぐに産卵セットを組みます。
②産卵セット(2020年4月12日)
フォーテックの産卵一番とメタリの幼虫飼育で出てきた食いカスをブレンド、十分加水したものを使用。材は使いません。ケースはデジケース小。管理温度は24-5℃設定。
お願いします!
③割出(2020年5月)
5月7日に初令幼虫をケース壁面に確認。この瞬間はいつになっても嬉しいですね。♀を取り出し別ケースに再セット。かなり軽かったのですが、ダメ元です。
5月20日に再セット分含めて割出。1回目からは18幼虫1卵、再セット分はゼロ。♀は息絶えていました。野外で一度産卵していたかもしれません。
④幼虫飼育(2020年5月-)
ボトル容量は1300、800、500を使用、18-20℃設定で管理、1本返し前提での飼育を想定していました。餌はマットを加水、プレス機でかたく詰めたものを与えます。今回、2種類の銘柄を使用しています。
グローバル:LBマット
DOS:生オガ発酵高カロリーオオクワマット(”以下、DOS生オガ”)
LBマットはピーキーで使いこなすのが大変ですが、ハマると大型化するのでホソアカ飼育では登板頻度が高いマットです。DOS生オガは今回試験的に使用しています。激安マットがどこまでホソアカに通用するのか・・・
⑤蛹化-羽化(2020年10月-)
長歯♂が10月8日に蛹化していたので、撮影しようと掘り出そうとしたものの、勢い余って蛹をつぶしてしまい、テンションガタ落ち・・・
♀は11月20日に羽化している個体を確認。25.5mm
最後に蛹化した♂(2020年12月12日)よく見ると頭部に毛が生えています。
オスも既に羽化し、体も固まっている個体が殆どですね。11月中旬から12月初旬にかけて羽化したような感じです。だいたい70mm前後のサイズですが親虫を大きく上回るサイズで素直に嬉しいですね。♀も同時期に羽化しているようなので、羽化ズレはほぼなさそうです。
4.羽化個体紹介
① ♂ 71.8mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 DOS生オガ500
2020年11月17日 蛹化確認
2020年12月13日 羽化確認
② ♂ 70mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 LBマット800cc
2020年11月17日 蛹化確認
2020年12月11日 羽化確認
③ ♂ 68.3mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 DOS生オガ800cc
2020年11月17日 蛹化確認
2020年12月13日 羽化確認
④♂ 68.3mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 LBマット800cc
2020年11月17日 全蛹
2020年11月26日 蛹化確認(5g)
2020年12月中旬-後半 羽化確認
⑤♂ 67.5mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 DOS生オガ800cc
2020年11月17日 蛹化確認
2020年12月13日 羽化確認
⑥♀ 27.9mm
2020年4月12日セット
2020年5月21日 割出
2020年6月9日 LBマット1400cc
2020年9月29日 前蛹
2020年11月17日 蛹化
2020年12月13日 羽化確認
以下、♀は写真割愛。
⑦♀27.5mm
2020年4月12日セット
2020年5月21日 割出
2020年6月10日 LBマット1400cc
2020年12月13日 羽化確認
⑧♀27.3mm
2020年4月12日セット
2020年5月21日 割出
2020年6月10日 LBマット1400cc
2020年12月13日 羽化確認
⑨♀27.1mm
2020年4月12日セット
2020年5月21日 割出
2020年6月10日 LBマット1400cc
2020年9月15日 蛹室確認
2020年9月29日 蛹化
2020年11月17日 羽化
⑩♀26.5mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 DOS生オガ800cc
2020年12月13日 羽化確認
⑪♀26.2mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 LBマット800cc
2020年9月29日 前蛹
2020年11月17日 羽化確認
⑫♀26.1mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 LBマット 800cc
2020年12月13日 羽化確認
⑬♀26.0mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 DOS生オガ+川口商会オオクワヒラタマット 500cc
2020年9月15日 蛹室確認
2020年9月29日 前蛹
2020年11月17日 羽化
⑭♀25.5mm
2020年4月12日セット
2020年5月20日 割出
2020年6月10日 DOS生オガ+川口商会オオクワヒラタマット 500cc
2020年9月15日 蛹室確認
2020年9月29日 前蛹
2020年11月17日 羽化
5.まとめ
そこそこ見れる個体は出せたものの、特大サイズではなかったので残念。格安市販マットの代表格であるDOS生オガで充分にブリードできましたし、500容器でも比較的大きく育ったがように、本種含めメタリフェルで大型個体をブリードしたいのであれば、まずは恒温状態(18-20℃ほどかな?)を維持できる環境の構築がマスト条件であると再認識しました。一方で、雌雄判定ミスって1400容器に入れていた♀は軒並み27mmを超えているので、容器依存はある程度あるかとは思います。クワガタ飼育は変数が多いとはいえ、環境構築はやはり大事なファクターですね。雌雄バランス良く出てきてくれたので次世代もブリードを継続し、75upを目指したいと思います。