1.はじめに
今回はブルーマイスターツヤクワガタ(Odontolabis burmeisteri burmeisteri)の幼虫-羽化までの飼育記録になります。本種は野外レコード105mm、飼育レコードが109.9mmに達するツヤクワガタ属最大種で、美しいエリトラと前方に長く発達する大顎はインパクトがある人気種ですね。
インド南部の高地に生息し、タミル・ナードゥ州ニーラギリ県産ラベルが流通しています。ニーラギリ県は4つの区に分かれていて、平均海抜1,500m-2200mの高地で冷涼な気候です。ニーラギリの県庁所在地であるウダガマンダラムの気候は以下の通り。
季節毎の温度 (ニーラギリ県 ウダガマンダラム 標高2,240m)
暑期 (3月-6月) 最高25℃-最低10℃
雨期(7月から10月) 最高18℃-最低11℃
乾期(11月から2月) 最高14℃-最低0℃
うーん、寒い!雪が降ることがあるのも頷けます。文献によれば本種の活動時期は雨期後半の9-10月、5-600Mの標高での採集・観察記録があることから、もう少し気温が高いとは思われるものの、湿潤・冷涼な環境の構築がブリードのヒントになりそうです。
2.幼虫入手
2019年11月15日 オークションでニーラギリ丘陵産 初令3頭を購入、1頭をオマケしていただき計4頭体制でブリードに臨みます。DYNAさん、この場を借りて御礼申し上げます。
3.幼虫飼育-羽化
2019年11月21日 Uマット+LBマット(使用済み)を7:3で配合したマットを特段加圧せず1500CCボトルへ。飼育温度は一貫して20℃前後で臨みます。
2020年2月2日 コバエが発生したボトル1本のマット交換。体重は4g程。他のボトルはUマットを継ぎ足し。
2020年4月初旬 4頭中3頭のマット交換。最大25g
手狭になってきたので、5Lタッパー(DAISOメガフードコンテナ)へ切替。空気穴を食い破られないように園芸網を置いてガードします。
2020年4月25日 最大個体の31g を5Lタッパーへ投入。
廉価ケースなので製品ムラがあるんですよ...ちゃんと閉まらないモノがあるので、コバエ対策として8方をテープ止め。
2020年6月27日 交換のショックによるものか、最大個体の31gが死んでいるのを発見...3齢になるとマットを押し付けながら坑道を作るので、マットは8分目くらいまでにしたり、通気口の数を増やす等、通気対策は充分にした方が良さそうです...落ち着くまでは密閉せず、暫く様子を見れば良かったか…
2020年8月中旬-下旬 出来るだけ坑道を破壊しないようにマットを部分的に交換します。容器がタッパーだと部分交換が容易です。
②前蛹-羽化(2020年11月中旬-)
2020年11月18日 ♀の前蛹。そっと蓋を戻して土で固定します。本種は前蛹期が2-3か月と異常に長いのでこのまま放置します。
2021年1月23日 中歯の♂が蛹化していました。
♂蛹化を確認後、待つこと40日。2021年3月3日に完品羽化!同時期に最終個体の♀が蛹化していましたが、こちらはコバエの発生で繭玉が劣化、壊してしまったので教科書通りに人口蛹室を作製し管理。
体が無事固まった♂(2021年3月中旬)
人口蛹室で羽化させた♀は2021年3月中旬に羽化。ツヤクワガタはとてもコンパクトに羽化するので蛹室のクリアランスは殆ど必要ありません。
4.羽化個体紹介
① ♀55.2mm
2019年11月上旬孵化
2019年11月21日 Uマット+LBマット 1500cc
2020年2月2日 Uマット継ぎ足し
2020年4月8日 Uマット 5000cc 19g
2020年8月16日 Uマット継ぎ足し
2020年11月17日 蛹室形成
2021年3月中旬 掘り出し(羽化済み)
② ♀53.8mm
2019年11月上旬孵化
2019年11月21日 Uマット+LBマット 1500cc
2020年2月2日 Uマット継ぎ足し
2020年4月4日 Uマット 5000cc 18g
2020年8月28日 Uマット継ぎ足し
2020年11月17日 蛹室形成
2021年3月21日 羽化確認
③ ♂80.0mm
2019年11月上旬孵化
2019年11月21日 Uマット+LBマット 1500cc
2020年2月2日 Uマット継ぎ足し
2020年4月4日 Uマット 5000cc 25g
2020年8月16日 Uマット継ぎ足し 34g
2021年1月23日 蛹化確認
2021年3月21日 羽化確認
羽化後3か月弱で後食を開始。ペアリングまではあと3-4か月は待ちます。
左右非対称の中歯も趣があって良いですね。次サイクルでは長歯が見たいところです。
5.まとめ
今回飼育した4頭中3頭が1♂2♀で羽化してくれたので、本種ブリードのスタートラインに立つことが出来ました。♂は羽化までに17か月かかりましたが、過去のギネス個体の飼育期間や飼育温度等と大差がないにも関わらずサイズが伸び悩んでしまった(気合い溢れた5000ccメガフードコンテナ起用は何だったのか…泣)ため、次サイクルは色々と検討すべき課題や試してみるべきことがありそうです。