1.はじめに
今回はツシマヒラタクワガタ(Dorcus titanus castanicolor)の飼育記録です。国産ヒラタクワガタの中では体長に対し大顎比率が最も長くなるので、とても特徴的なフォルムをしています。
本種の近縁ですが、
国産は壱岐諸島(ssp.tasutai)、五島列島(ssp.karasuyamai)
海外は朝鮮半島(ssp.fasolt)、中国東部(ssp.platymelus)
にそれぞれ生息しています。大陸を経由して日本の諸島に伝播したのでしょう。九州北部産の本土ヒラタ(ssp.pilifer)で顎が長い本種の特徴のある個体群が生息しており、1サイクル回した記事もありますので、ご参考まで。
ツシマヒラタはかれこれ20年程前に一度飼育したことがあり、お手軽にブリードを楽しめた記憶(菌糸瓶850ccの1本返しで70mm程度でしたが…)があります。今は当時と違って温度管理もできる環境ですし、80mmUPを目標としたいと思います。
2.種親紹介
♂75mm、♀36mm、39mm
アウトブリードの2ラインで臨みます(…1ラインでお腹いっぱいになりそう…)36mmのラインをA、39mmのラインをBとします。種親は羽化から半年以上経過し、餌の食いも良く即ブリ。良い状態です。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①ペアリング-産卵セット(2020年4月22日- )
顎を縛り同居。すぐに交尾を確認。titanusは楽で良いですね。
25℃設定の温室へ投入。セットはマットのみ。川口商会のオオクワヒラタ幼虫マットを使用。
数日で卵を発見。戦慄のレスポンスの良さ。卵や幼虫を食べてしまうので、セットを組んでから3-4週間で♀を引き上げました。(意図的に放置することもあります)
②割出(2020年6月5日-)
Aライン(36mm)からは37頭、Bライン(39mm)からは15頭を回収。取れ過ぎた…
③幼虫飼育(2020年6月中旬-)
■1本目
数も多く時間もなかったので1本目は既製品の菌糸ボトル(ヒラタケ)550ccで統一。管理温度は一貫して20℃ほどです。
■2本目以降
2本目以降はマット飼育(無添加の廃菌床マット)に移行。菌糸が再活性化?しボトルが真っ白になりましたが、それでも落ち着いて居食いをしていました。
幼虫時に確認できた最大個体(26g)。もう一声欲しいところですよね。
④蛹化-羽化(2021年1月-)
2番手の蛹。15gほど。75mmを超えてくるか。
完品羽化。
4.羽化個体紹介
① ♂ 60 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 12g
2020/11/24 前蛹確認
2020/12/4 蛹化確認 8g
② ♂ 62 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 3g
2021/3/M 羽化
③ ♂ 69.2 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 12g
2020/12/9 虫吉マット 130cc 18g
④ ♂ 69.4 mm (Bライン:♂75mm×♀39mm)
2020/5/2 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 14g
2020/12/9 虫吉マット 130cc 17g
⑤ ♂ 70.0 mm (Bライン:♂75mm×♀39mm)
2020/5/2 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 5g
2020/12/5 虫吉マット 130cc 19g
⑥ ♂ 70.0 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 17g
2020/12/9 虫吉マット1300 19g
⑥ ♂ 70.5 mm (Bライン:♂75mm×♀39mm)
2020/5/2 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 15g
2020/12/5 虫吉マット 130cc 18g
⑦ ♂ 71.1 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 18g
2020/12/4 前蛹確認
⑧ ♂ 72.0 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 19g
2020/12/4 前蛹確認
⑨ ♂ 72.1 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 18g
2020/12/4 前蛹確認
⑩ ♂ 72.4 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 17g
2020/12/4 前蛹確認
⑪ ♂ 72.6 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 17g
2020/12/5 虫吉マット1300 19g
⑫ ♂ 73.0 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 19g
2020/12/5 虫吉マット1300 20g
⑬ ♂ 73.1 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 18g
2020/12/4 前蛹確認
⑭ ♂ 73.5 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 18g
2020/12/4 前蛹確認
⑮ ♂ 74.6 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 22g
2020/12/5 虫吉マット1300 22g
⑯ ♂ 74.8 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 18g
2020/12/9 虫吉マット 1300cc 20g
2020/12/30 前蛹確認
⑰ ♂ 75.0 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 22g
⑱ ♂ 76.0 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 23g
2020/12/9 虫吉マット 1400cc 24g
2021/1/14 蛹確認 15g
⑲ ♂ 77.3 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 850cc 22g
2020/12/4 虫吉マット 1400cc 26g
2021/5月下旬 羽化
以下、♀は最大個体のみを撮影
⑳ ♀ 42.3 mm (Aライン:♂75mm×♀36mm)
2020/4/27 セット
2020/6/5 割出
2020/6/15 G-pot 550cc
2020/9/11 虫吉マット 550cc 8g
2021/5/7 掘出
5.まとめ
2ライン体制で臨んだものの、目標の80mmには及びませんでした。割出や交換タイミングは結構シビアにやれたと思いますし、交換直後でも暴れることなく、しっかり餌を食べていましたが74-5mmに収斂してしまった感じです。最大77.3mmとやや物足りない結果となってしまいました。取り組んだのが今回サイクルだけなのでデータが足りていませんが、80mmを狙うには最大体重20g後半はのせないといけない感触です。
温度変化つけずに20℃で引っ張ってしまいましたが、淡々と大きくなっていました。日本より涼しい朝鮮半島経由で来た虫だとすればもうちょい温度低くして引っ張っても良かったのかな…何サイクルか回して色々イジメてみたいところですが、他にやりたい虫もいるので、本種は一旦中止します。こういう思い切りがないと減らないので… 次回やるのであれば、自己採集個体から80mm再挑戦したいところです。