
1.はじめに

今回飼育したのはインドネシア ハルマヘラ島産のトラグルスノコギリクワガタ(Prosopocoilus tragulus tragulus)原名亜種です。ニューギニア西部には亜種のP.t.assimilisがおり、内歯の鋸歯の付く場所や形状、エリトラの色味が異なります。飼育下ではassimilisの方が大型化し人気もあります。trag(tragos)部分が古代ギリシャ語で雄ヤギ、-ulusがラテン語で「小さい」という意味のようです。和名であれば、さしあたり「チビヤギノコギリクワガタ」とかでしょうか。モロッカ諸島には本種をはじめ色彩豊かなビソンノコギリクワガタの仲間が数多く生息しています。このグループは飼育が容易で価格もお手頃なものが多いので初心者の方の入門種としてもオススメです。
2.種親紹介
2020年7月のインドネシア便でWDを購入。

褐色のエリトラと小豆色の頭部、前胸背板が美しいです。
爪の掛かりもしっかりしており状態良好。

♀はやや擦れていますが体重もあるので産んでくれるでしょう。
♂44-5mm 短歯型です。喧嘩傷でしょうか、前胸背板の右側が欠けています。

♀32-3mm 黒化型です。眼の付き方が上向きの珍妙な表情。

3.産卵セット‐割出-幼虫飼育
① 産卵セット

2020年8月5日 にセット。握って崩れず水も出ない程度に加水した産卵一番を小ケースにやや堅詰めしたオーソドックスなセットです。
組んでから1週間で産卵を確認。
② 割出


2020年10月21日に割出。適度にとれました。
③ 幼虫飼育
1本目は菌糸瓶飼育(容量500cc)で臨みます。特段温度変化をつけず一貫して20℃で管理しますが、あまり大きくなりませんでした。200ccプリカでも良かったかもしれません。2本目は3次発酵マットを使用しようしました。2本返しです。
④ 蛹化

♂♀ともに目立ったズレはなく1年~で蛹化・羽化してきました。
4.羽化個体紹介
① ♂ 51.4mm

2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/9 DOS 3次発酵マット 500cc
2021/10/10 蛹化確認
2021/11M 羽化
② ♂ 51.7mm

2020/8/5 セット
2020/10/21 卵
2020/11/12 KBファームAG 500cc
2021/2/9 DOS 3次発酵マット 500cc
2021/10/10 羽化確認
③ ♂ 55.0mm

2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 2g
2021/10/10 前蛹確認
2021/12M 羽化
④ ♂ 57.0mm
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 3g
2021/10/10 蛹確認
2021/11M 羽化
④ ♂ 57.0mm
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 4g
2021/10/10 蛹確認
2021/11M 羽化
⑤ ♂ 57.8mm
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 4g
2021/10/10 蛹確認
2021/11M 羽化
⑥ ♂ 59.8mm
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 8g
2021/10/10 蛹確認
2021/11M 羽化
⑦ ♂ 59.2mm

2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 3g
2021/10/10 前蛹確認
2021/12M 羽化
⑧ ♂ 60.0mm
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 8g
2021/10/10 羽化確認
⑨ ♂ 60.4mm
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 8g
2021/10/10 蛹化確認
2021/11/M 羽化
⑩ ♀ 34.3mm

2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 3g
2021/10/9 羽化確認
⑪ ♀ 34.0mm
(画像割愛/黒化型)
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 4g
2021/10/10 羽化確認
2022/1M 自力ハッチ
⑫ ♀ 35.0mm
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 4g
2021/10/10 羽化確認
2022/1M 自力ハッチ
⑬ ♀ 33mm

2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/9 DOS 3次発酵マット 800cc 6g
2021/10/10 羽化確認
2022/1M 自力ハッチ
⑭ ♀ 33mm
2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 2g
2021/10/10 前蛹
2021/12M 羽化
⑮ ♀ 32.5mm

2020/8/5 セット
2020/10/21 KBファームAG 500cc
2021/2/14 DOS 3次発酵マット 800cc 1g
2021/10/10 前蛹
2021/12M 羽化
5.まとめ

♂のエリトラの色彩は薄茶色型、褐色型、♀は薄茶/黒色、黒色型とそれぞれ2タイプが出てきました。

人気色はやはり薄茶色型ではないでしょうか。個人的にはトラグルスノコといえばこのカラーリングをイメージしますが、

薄茶と黒色の中間的な褐色個体も出てきました。玄人好みな渋い色合いです。


累代が進むと色は固定化出来そうですね。


上述した2タイプ色の♀
割とキチンと飼育したつもりですが最大個体は60.4mm程度と、レコードの65.5mmには遠く及びませんでした。60mmが第一関門といった感じでしょうか。1本目の容器を500ccではなく200ccとして2令後半くらいまでマット飼育して雌雄判別、2本目で菌糸(♂800cc、♀500cc)で飼育温度をもう一段下げてもおもしろそうです。温度変化をつけずとも20℃程度、500cc以上の容量で管理していれば大歯が出てくると思います。サイズに拘らなければ厳格な温度管理も必要なさそうですし、色彩変異を楽しめるので色虫好きの諸兄姉にこそやっていただきたいですね。

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