1. はじめに
今回飼育したのはボーリンフタマタクワガタ原名亜種(Hexarthrius bowringi bowringi)です。産地はインド共和国西ベンガル州ダージリン県産。
亜種にバミノルム(Hexarthrius bowringi baminorum)がおり、こちらの有名産地はインド共和国アルナーチャル・プラデーシュ州。両種の生息域は、ブータン王国が挟むような恰好です。どこで両種の生息域が切れるのか興味深いところです。標本屋さん、教えてください。
wikipediaによると、ダージリンの平均標高は2,000メートルを超え、ベンガル湾で発達したモンスーンが大量の降雨をもたらし、年間降水量は2,500mmに達するようです。低温・多湿が飼育のキーワードになりそうですね。典型的な材産種で、卵が腐ってしまったり、数がとれないこと、(現地はたくさん生息しているのでしょうが)WDの流通がないこと等、希少性が高まる要素満載のため、年々お値段も高くなってきています。今回はブリード仲間のM氏からペアをいただいたので(この場を借りて改めて御礼申し上げます)、何とか累代出来るよう気合を入れてサイクルを回してみたいと思います。
2. 種親紹介
♂61.9mm (2020年9月初旬羽化/CBF2)
♀43.7mm (2020年9月初旬羽化/CBF2)
レッドアイ系統です。
艶感あるワインレッドカラーがとても美しいですね。
本種の野外レコードは83mm、飼育レコードは84mm とりあえず80mmを目標に頑張ってみたいと思います。
3.ペアリング- 産卵セット-割出-幼虫飼育
①ペアリング(2020年11月9日)
小ケースに投入してすぐに交尾するも一瞬で離れてしまいました。
不安なので♂をそのまま同居させます。コナラ材の樹皮を綺麗に剥ぎ20分ほど加水、丸一日陰干しした状態の材を使用しています。床材は材から出る水分を吸い取ってもらうイメージでMaxMat 微粒子を無加水で敷きます。何となくですけど、材加水加減をミスると腐りがちな気がするのでおまじないみたいなものですね。管理温度は24-5°
②産卵行動確認 (2020年11月13日〜)
セットを組んでから4日目で産卵行動を確認。
③割出(2020年12月6日)
1か月で10卵回収。齧り具合とは裏腹にやや物足りない感じがします。この後再セットしましたが産まず。難しいですね。卵は5卵1セットとして、Uマットを詰めた430プリカに投入、初齢後半まで多頭で管理します。
④幼虫飼育(2021年2月24日-)
初手はカワラ菌糸、2本目以降はマット飼育で臨みます。管理温度は18-20°です。
最終瓶交換時。ややタイミングが遅くすぐに蛹化してしまいました。
③蛹化
均整がとれた顎や脚のたたみ具合なので無事羽化してくれそうです。
羽化間近
4.羽化個体紹介
①♂70.0mm
2020/11/9産卵セット→2020/12/6 割出(卵)
2021/2/24 恵栽園カワラ1400cc
2021/6/5 DOS生オガ 1400cc 14g
2022/2/13 恵栽園マット1400cc 16.4g
2022/5E 羽化確認
②♂77.2mm
2020/11/9産卵セット→2020/12/6 割出(卵)
2021/2/24 恵栽園カワラ800cc
2021/5/4 恵栽園マット1400cc 5g
2022/2/13 恵栽園マット1300cc 17.9g
2022/5/15 蛹化 14.9g
2022/6/3 羽化確認
③♂75.4mm
2020/11/9産卵セット→2020/12/6 割出
2021/2/24 恵栽園カワラ800cc
2021/5/7 恵栽園マット800cc
2022/5/15 恵栽園マット800cc 18.5g
2022/9/20 蛹化 13.6g
2022/11/M 羽化確認
④-⑥ 3♀39-45.2mm(写真/データは45.2mm)
2020/11/9産卵セット→2020/12/6 割出(卵)
2021/2/24 恵栽園カワラ1400cc
2021/4/11 恵栽園マット1400cc 4g
2022/2/13 捨て瓶500cc 8.8g
2022/5/15 蛹化確認
2022/6/3 羽化確認
5.まとめ
70後半は出せたので満足度は高めです。10卵中6頭羽化まで確認できましたし、今の幼虫が羽化できれば7割羽化した計算になるので、孵化までもっていければ比較的丈夫な印象です。数がとれなかったので確証はありませんが…とりあえず、②と④のペアが揃ったので次世代は最低でも20卵くらいは回収したいですね。水苔等を敷いて保湿しつつ適度な水分比率の材を供給し続ける等の工夫をする等、色々とアイディアはあるので試してみたいと思います。