(Prosopocoilus giraffa timorensis)
1. はじめに
今回はアジア広域に生息するギラファノコギリクワガタのティモール島亜種 (Prosopocoilus giraffa timorensis)の飼育記事になります。主な特徴は8亜種のうち最も小柄で寸詰まりのケツデカ、エリトラに赤みがかかる、こんなところでしょうか。赤い点以外は手を出さない方が良い雰囲気しかしませんが、最近WD便を見かけないので今のうちにやっておこうかなというのと、単純に赤いクワガタが好きなので本種を飼育してみました。
2. 種親紹介
2021年6月初旬に羽化したティモール島産F5 小型ペア(♂59mm ×♀40mm)をオークションで購入。
リングライト下で撮影すると黒の主張が強いです。光量や照射角度を変えると艶消しですが、うっすら赤みが見えるのでティモレンシスの特徴が出ています。
♀は図鑑やノコギリ特集号みていると、産地によって前胸背板の肩口に特徴が出ている感じがしますね。本種は上方に突起が盛り上がる感じでしょうか。全亜種♀画像並べると面白そうですね。
3. ペアリング–産卵セット-幼虫飼育
①ペアリング (2021年9月16日)
羽化後3ヶ月半で後食開始。半年くらいかかるかと思っていました。割出=羽化日で出品されていたのかもしれませんね。ハンドペアリングで交尾目視確認。
②産卵セット(2021年9月16日)
ダイソーのメガフードコンテナに産卵一番をかたく詰めてセット。念の為♂も同居させます。
③割出 (2021年11月16日)- 幼虫飼育
セットして数日で卵が見えました。無精卵だと消失しますが大きく膨らんだ卵が沢山見えたので有精卵で間違いなさそうです。セットして2か月後には卵と幼虫合わせて30頭近く得ることができました。
④幼虫飼育(2021年11月16日-)
ギラファは食性が強く何でも食べる虫の認識です。菌糸で通すのも良し、マットで通すも良し、色々なオプションがありますが、今回は1本目はヒラタケ菌糸投入、2本目はマットの無難なリレーで臨みます。管理温度は18-20°環境で飼育しました。
⑤ 蛹化 (2022年10月17日)
♂の早い個体だと割出してから1年程で蛹化してきました。
⑥ 羽化 (2022年11月28日)
露天掘りで羽化した♂
割り出し後8ヶ月くらいで続々と♀が羽化してきたので、羽化ズレを危惧していたのですが、
パタリととまり、♂と同じタイミングで羽化してくれる♀も一定数いたので良かったです。
4. 羽化個体紹介
① ♂76.6mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/8 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 恵栽園クワガタ発酵マット 1300cc 16.4g
2023/1/16 蛹化確認 15.1g
2023/2M 羽化
② ♂77.3mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/7 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 DOS生オガ 800cc 12.1g
2022/12/7 蛹化確認 13.7g
2023/1M 羽化
③ ♂78.1mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/8 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 恵栽園クワガタ発酵マット 1300cc 15.3g
2022/12/7 蛹化確認 15.2g
2023/1M 羽化
④ ♂79.0mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/7 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 恵栽園クワガタ発酵マット 1400cc 18.3g
2022/11/16 蛹化確認 14.1g
2023/1M 羽化確認
⑤ ♂80.0mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/7 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 恵栽園クワガタ発酵マット 1400cc 15.7g
2022/10/17 蛹化確認 14.9g
2022/12M 羽化確認
⑥ ♂80.8mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/7 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 恵栽園クワガタ発酵マット 1400cc 17.1g
2022/10/17 蛹化確認 15.6g
2022/12M 羽化確認
⑦ ♀45.0mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/8 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 DOS生オガ 800cc 9.5g
2023/1M 羽化
⑧ ♀45.1mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/8 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 DOS生オガ 800cc 8.2g
2022/11/15 蛹化
2023/1M 羽化
⑨ ♀45.2mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/8 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 DOS生オガ 800cc 10.9g
2023/2M 羽化
⑩ ♀46.2mm
2021/9/16 セット→2021/11/16 割出
2021/12/8 月夜野エレメント800cc
2022/4/2 DOS生オガ 800cc 9.6g
2023/2M 羽化
5. まとめ
野外では90mmを超える虫のようですが、遠く及ばない結果となりました。成長スピードが早く餌をよく食べ、瓶の中で動き回るので3-4ヶ月毎に交換して3本サイクルでやればもうちょっと伸びたような気がします。1本目で半年も放置してしまったこと、また、1500cc菌糸瓶1本返しを試したロットもいたのですが、成長の速さと動きで菌糸が泥化してしまい、蛹室が形成できず顎が曲がったり、状態の悪い餌を食べるなどして羽化不全し、結局は全滅するなど、やらかし連発の情けない結果でした。
とはいえ大顎もある程度発達した♂が見れたこと、艶消し赤の渋いエリトラも見れたので、サイズ以外は満足しています。今回羽化した個体たちは、一部早期羽化の♀がいたものの、それ以降は雌雄で羽化時期もバッチリ合っているので、今後も問題なく累代出来そうです。続けるかどうかは飼育スペース次第、といったところでしょうか。ちょっと考えます。
6. 参考資料・資材