1.はじめに
今回は、インドネシア(スマトラ島、カリマンタン島)、マレーシア(ボルネオ島)に生息するブルークツヤクワガタ(Odontolabis brookeana)の飼育記録になります。
本種はコンスタントにWD入荷があるので入手自体は簡単なのですが、飼育に難ありであることが結構知られているかと思います。初飼育ということもあり色々と考えを巡らせて取り組んでいきます。
2.種親紹介
♂ 38mm
裏面写真も掲載しましたが口唇周りの微毛が密集していてるのが好きです。マルバネにも同じような特徴が見られますね。
♀ 26mm
3.産卵-羽化
①産卵
土化しかけた赤枯れと、この倒木が接している地面の土を採取。
粉砕した赤枯れと山土をブレンドし、十分に加水。
セットしてから10日程で小さな土玉(ピンポン玉小サイズ)を作っていました。(画像上部中央)
土玉の中に小さな卵が産みつけられています。産卵直後はとても柔らかいので、慎重に取り扱う必要があります。
産卵セットを組んでから2か月程経過。当方のブリードルーム環境(18-20℃)での成長はゆるやかなので、このまま多頭で管理します。
個別管理に移行した幼虫。珍しく姿を確認できたので撮影。
500ccのボトルで管理。壁面に姿を現すことは少なく、中央部分で居食いをしていることが多い。羽化させることを念頭においたため、ネブト幼虫飼育で使ったマットを二次利用するなど、慎重に管理しましたが結構落ちました泣。
最大個体幼虫の体重計測(14.0g)
最大体重個体が地上徘徊をしてしまったので、人口蛹室管理。
蛹化した別個体
人口蛹室で管理、羽化。棺桶タイプの人口蛹室を準備しています。(BE-KUWA 78号 「フェモラリスツヤクワガタの飼育」を参考にしています)
4.羽化個体紹介
① 28.3mm
2021/3/16 セット
2021/5/26 割出→430cc プリカ多頭管理
2022/1/22 産卵残土+ネブト管理マット二次利用(クヌギ赤枯れベース)+ビートルマット少量 500cc
② 29.4 mm
2021/3/16 セット
2021/5/26 割出→430cc プリカ多頭管理
2022/1/22 産卵残土+ネブト管理マット二次利用(クヌギ赤枯れベース)+ビートルマット少量 500cc
2023/4/24 自力ハッチ
③ ♂ 36.8mm
2021/3/16 セット
2021/5/26 割出→430cc プリカ多頭管理
2022/1/22 産卵残土+ネブト管理マット二次利用(クヌギ赤枯れベース)+ビートルマット少量 500cc
2022/12/30 マット継ぎ足し 500cc
④ ♂ 39.4mm
2021/3/16 セット
2021/5/26 割出→430cc プリカ多頭管理
2022/1/22 産卵残土+ネブト管理マット二次利用(クヌギ赤枯れベース)+ビートルマット少量 500cc
2022/10/11 マット継ぎ足し
⑤ ♂ 46.5 mm
2021/3/16 セット
2021/5/26 割出→430cc プリカ多頭管理
2022/1/22 産卵残土+ネブト管理マット二次利用(クヌギ赤枯れベース)+ビートルマット少量 500cc
2022/10/11 マット継ぎ足し 14.0g
2022/12/30 マット継ぎ足し
2023/4/29 蛹化確認 5.8g
2023/7/10 羽化確認
5.まとめ
本種は、産卵報告はよく耳にするものの、幼虫飼育以降の情報が少なかったため、人口の添加物が多く含まれた用土や分解の浅い用土摂取への適応力が低いものと仮定。極力、市販のマットは使わず、天然の資材や他種が食べた餌の二次利用等を意識しました。案の定、少しでも市販マットの量が多いロットの個体群は、十分に加齢していたとしても死亡率が高いように感じました。チャイロマルバネクワガタ等の山土をメインに使用するブリード経験をお持ちの方は比較的容易に飼育が出来るかもしれません。とにかく羽化させることを第一目標に慎重に飼育したので、サイズは特段意識していなかったのですが、最大羽化個体は46.5mmと短歯であったものの、レコード更新していたので、虫社に応募、BE-KUWA No.89 レコード号にて登録されました。
本種の詳細飼育記事については同誌No.90 ツヤクワガタ特集号で執筆させていただておりますので、興味のある方はご覧いただければと思います。羽化までの飼育のコツは掴めたので、サイズアップに精進します。
6.参考資料