1.はじめに
今回ブリードしたのは沖縄県最北端の有人島である伊平屋島産のオキナワヒラタクワガタ(Dorcus titanus okinawanus)です。本種の分布域は、沖縄県の島嶼に幅広く生息していますが、伊平屋島産は大顎の湾曲が弱く、最大内歯が上がり、体長が稼ぎやすいタイプが多いようです。一方で、本島産は 最大内歯は大顎基部に付き、大顎先端が横に寝る感じで体長が伸びにくい印象を受けるタイプがみられます。もちろん本島においても伊平屋島の特徴を持つ個体がいるのであくまでも傾向に過ぎない点は付言しておきます。
2.種親紹介
WD(幼採) ♂ 62.7mm
WD(幼採) ♀ 39.0mm
3.産卵-幼虫飼育-羽化
①産卵セット(2022年3月~)
中ケースに他種の幼虫飼育で使ったマットを加水、ホダ木を埋め込んでセット。管理温度は20℃程。
卵が底面に見えます。自己採集の次世代飼育なので喜びもひとしおです。
②割出(2022年5月17日~)
材から出てくる割合が多い。
②幼虫飼育
1-2本目は菌糸、2-3本目で発酵が進んだマット飼育のハイブリッドで臨みます。管理温度は18-20℃を基本とし、一部16℃で低温飼育した個体もいます。
菌糸を何度も反芻している幼虫。良い感じの食べ方です。交換のタイミングですが、交換時に暴れさせない管理が難しい…
③蛹化
太めの個体。細い個体も見られ累代の浅さからバラつきがみられた。
④羽化
エリトラのタイミングでは70m UP連発と思っていたのですが…
4.羽化個体紹介
①♀ 34.8mm(頭幅:9.7mm 胸幅:14.1mm)
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 DDA F-ZEROクヌギ100%(以下F-ZERO)120cc
2022/11/4 羽化用捨て瓶 500cc 2.3g
2023/3/E 羽化確認
② ♀ 38.2 mm(頭幅:10.8mm 胸幅:15.1mm)
2022/5/17 セット→2022/7/30 割出
2022/7/30 KSKマット800cc
2023/4/E 羽化確認
③ ♀ 38.3 mm(頭幅:10.1mm 胸幅:15.3 mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出
2022/5/1 F-ZERO 120cc
2022/11/4 マット二次利用 500cc 5.7g
2023/4/8 蛹化
2023/4/E 羽化確認
④♀ 40.3mm(頭幅: N/A mm 胸幅: N/A mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出
2022/6/30 F-ZERO 800cc
2022/11/12 DOS生 500cc 9.5g
2023/4/E 羽化確認
⑤♀ 40.7mm(頭幅:11.6mm 胸幅:16.5 mm)
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 F-ZERO 120cc
2022/11/4 マット二次利用 500cc 6.4g
2023/4/E 羽化確認
⑥♀ 41.2 mm(頭幅:11.9mm 胸幅:16.7mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出 (卵)
2022/6/30 F-ZERO 500cc
2023/2/15 IT-5 プロトマット 500cc 9.3g
2023/4/8 蛹化確認
2023/6/M 羽化確認
⑦♀ 41.5 mm(頭幅:11.9mm 胸幅:16.6mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出 (卵)
2022/6/30 F-ZERO 120cc
2022/9/18 KSK+川口 500cc 6.4g
2023/4/8 蛹化
2023/6/M 羽化
⑧♀ 41.8 mm(頭幅:11.8 mm 胸幅:16.8 mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出 (卵)
2022/6/30 F-ZERO 500cc
2023/2/15 IT-5 プロトマット 500cc 9.8g
2023/6/25 羽化確認
⑨♀ 42.4 mm(頭幅:12.4mm 胸幅:17.7 mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出 (卵)
2022/6/30 F-ZERO 500cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 500cc 9.3g
2023/4/11 蛹化確認 6.4g
2023/6/M 羽化確認
⑩♀ 42.4 mm(頭幅:12.0mm 胸幅:17.3 mm)
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出(卵)
2022/5/17 F-ZERO 120cc
2022/9/19 F-ZERO 800cc
2022/11/12 マット二次利用 500 cc 9.5g
2023/4/8 蛹化確認
2023/6/ 羽化確認
⑪ ♀ 42.5 mm(頭幅:12.3mm 胸幅:17.2mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出 (卵)
2022/6/30 F-ZERO 500cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 500cc 11.9g
2023/5/5 蛹化確認 6.4g
2023/6/25 羽化確認
⑫♀ 43.0 mm(頭幅:12.3 mm 胸幅:17.1 mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出 (卵)
2022/6/30 F-ZERO 500cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 500cc 11.3g
2023/6/25 羽化確認
⑬♀ 43.6mm(頭幅:12.3mm 胸幅:17.5 mm)
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出 (卵)
2022/6/30 F-ZERO 500cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 500cc 11.9g
2023/5/E 蛹化 6.9g
2023/6/E 羽化確認
①④♂ 37.9mm
2022/5/17 セット→2022/7/30 割出
2022/7/30 二次利用マット 800cc
2023/6/E 羽化確認
①⑤♂ 47.5mm
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 F-ZERO 120cc
2022/11/4 マット二次利用 500 cc 3.2g
2023/4/8 蛹化確認
2023/6/E 羽化確認
①⑥♂ 51.2mm
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 F-ZERO 120cc
2022/11/4 マット二次利用 500 cc 5.2g
2023/4/8 蛹化確認
2023/6/E 羽化確認
①⑦♂ 51.3mm
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 F-ZERO 120cc
2022/11/4 マット二次利用 500 cc 6.2g
2023/4/8 蛹化確認 6.0g
2023/6/E 羽化確認
①⑧♂ 54.4mm
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 F-ZERO 120cc
2022/6/29 F-ZERO 500cc
2022/11/4 マット二次利用 500 cc 7.2g
2023/4/8 蛹化確認 6.7g
2023/6/E 羽化確認
①⑨♂ 54.8mm
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 F-ZERO 120cc
2022/11/4 マット二次利用 500 cc 7.2g
2023/4/8 蛹化確認 6.8g
2023/6/E 羽化確認
②⓪♂ 56.4mm
2022/5/17 セット→2022/7/30 割出
2022/7/30 F-ZERO 200cc
2022/11/15 One In a Million プロトマット 800 cc 14.3g
2023/2/25 IT-5 プロトマット 14.2g
2023/5/5 蛹化確認 7.4g
2023/7/E 羽化確認
②①♂ 64.7mm
2022/5/17 セット→2022/7/30 割出
2022/7/30 F-ZERO 200cc
2022/12/7 IT-5 プロトマット 800cc 11.0g
2023/7/17 蛹化確認 12.4g
2023/9/E 羽化確認
②②♂ 67.2mm
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 月夜野エレメント 800cc
2022/7/30 F-ZERO 800cc 16.8g
2022/9/13 One In a Million プロト 1300cc 20.7g (低)
2023/1/13 One In a Million プロト+N+黒 1300cc 23.7g
2023/3/2 蛹化 12.2g
2023/4/8 羽化
②③♂ 67.5mm
2022/5/17 セット→2022/7/30 割出
2022/7/30 F-ZERO 500cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 800cc 14.2g
2023/11/7 ホビーマット 800cc 19.2g 9.8mm
2024/1/24 蛹化 12.8g
2023/4/E 羽化確認
②④ ♂ 68.2mm
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出(卵)
2022/6/30 F-ZERO 800cc
2022/11/4 One In a Million プロト 800cc 25.4g (低)
2023/2/11 One In a Million プロト+黒 800cc 25.6g
2023/3/28 蛹化 13.0g
2023/5/E 羽化確認
②⑤ ♂ 68.4mm
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出
2022/5/1 F-ZERO 120cc
2022/6/29 F-ZERO 800cc 2.3g
2022/11/4 One In a Million プロト 1500cc 21.2g
2023/4/15 蛹化 13.5g
2023/7/E 羽化確認
②⑥ ♂ 68.5mm
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出
2022/5/1 F-ZERO 120cc
2022/6/29 F-ZERO 800cc 6.0g 11.0mm
2022/10/20 F-ZERO 800cc 24.9g
2022/11/19 One In a Million プロト 800cc 21.9g
2023/1/22 蛹化 13.7g
2023/4/E 羽化確認
②⑦ ♂ 69.0mm
2022/5/17 セット→2022/7/30 割出
2022/7/30 F-ZERO 200cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 800cc 5.4g
2023/11/7 ホビーマット 800cc 19.5g 10.1mm
2024/1/24 蛹化 13.7g
2023/4/E 羽化確認
②⑧ ♂ 69.0mm
2022/5/17 セット→2022/7/30 割出
2022/7/30 F-ZERO 200cc
2022/12/7 IT-5 プロトマット 800cc 17.0g
2023/5/5 蛹化 12.7g
2023/7/E 羽化確認
②⑨ ♂ 69.1mm
2022/4/22 セット→2022/5/17 割出
2022/5/17 月夜野エレメント 800cc
2022/9/12 One In a Million プロト 800cc 23.7g
2023/1/13 One In a Million プロト+黒 1300cc 23.4g 11.1mm
2023/3 /1 蛹化確認 14.3g
2023/6/E 羽化確認
③0♂ 69.3mm
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出
2022/5/1 F-ZERO 120cc
2022/6/29 F-ZERO 500cc 2.3g
2022/11/4 One In a Million プロト 800cc 21.4g
2023/3/2 One In a Million プロト+黒 800cc 20.5g
2023/4/8 蛹化 13.7g
2023/7/E 羽化確認
③① ♂ 69.5mm
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出(卵)
2022/6/30 F-ZERO 500cc
2022/12/21 IT-5 800cc 20.0g
2023/3/2 IT-5 800cc 22.3g 10.0mm
2023/7/17 蛹化 14.4g
2023/8/17 羽化確認
③② ♂ 70.2mm
2022/3/21 セット→2022/4/22 割出(卵)
2022/6/30 F-ZERO 800cc
2022/11/4 One In a Million 800cc 22.6g
2023/3/3 One In a Million 800cc 25.3g
2023/5/3 蛹化確認 14.9g
2023/7/E 羽化確認
③③ ♂ 71.0mm
2022/5/7 セット→2022/7/30 割出
2022/7/30 F-ZERO 200cc
2023/2/25 AG 800cc 7.5g 10.0mm
2023/6/15 AG 800cc 20.3g
2023/9/5 MD 800cc 21.6g
2023/12/M 蛹化確認 15.2g
2024/1/E 羽化確認
5.まとめ
No.25 以降の個体はテネラル時は余裕で70mm超えていたのでWF1から70mmUP連発か?!と浮足立っていたのですが、めちゃくちゃ縮みました…最大体長は71.0mmどまり。とはいえNo.33はお気に入りの個体です。
南西諸島のヒラタクワガタの中でダントツにカッコいいはずなのに中々布教が進みません...
今回は菌糸とマットのハイブリッド飼育で臨みましたが、菌糸で伸び悩んでいたところにマット切替が刺激となって右肩上がりに食い上がって急成長、という個体(今回飼育では多数派)と、初手が菌糸でも十分に食い上がる個体(菌糸慣れしている?)に分かれました。
次世代は菌糸慣れしている系統を重点的に飼育してみようかとも思いますが、ヒラタクワガタは、きめ細やかな管理や餌馴れによってサイズの爬行性が顕著なので、それなりに数を抱えてみないと何とも言えません。完全自己採集からの累代なので出来るだけ次世代を確保しています。本種のブリード記録は今後も続けようと思うのでお付き合いくださいますと幸いです。
6.参考資料