1.はじめに
今回飼育したのはカメラツヤクワガタ(Odontolabis camela)です。ツヤクワガタの学名の語源(「”Odonto-” ”歯の、歯をもった”」)は、本属の大顎の内歯や鋸歯の多様性を上手く表現したものですが、本種の大歯型の内歯はなく、大きく弧を描く感じが学名の語源とかけ離れていて、そこはかとない違和感があります。一方で、中歯、短歯の形状は大歯型のそれとは大きく異なり、ザ・ツヤクワガタの変異で、こちらは妙な?安心感を覚えます。この辺りは完全に個人の感覚なので何言ってんだコイツ、と思う方は悪しからず…
本種の大歯型は2000年代初頭は大珍品とされていましたが、最近は生息地であるフィリピン ルソン島、ミンドロ島、カタンドゥアネス島から野外便がコンスタントに入荷があり、大歯型~短歯型まで様々な個体が見られます。ルソン、カタンドゥアネス産をよく見かけるような感じですかね。飼育レコードは短歯の62.5mm(2024年9月時点)で登録されておりブリードの伸び代が感じられる中型の黒色ツヤクワガタです。
2.種親紹介
今回の種親は、G氏から譲っていただいた幼虫から羽化した個体が種親になります。いつもありがとうございます。
♂ 51.8 mm
中歯型♂は大顎基部に突起がある。
ツヤクワガタらしい蛹。
♀ 39.5 mm
自力ハッチしていた♀
3.ペアリング-幼虫飼育-羽化
① ペアリング (2023年7月20日-)
上述した通り、雌雄同時期羽化のためペアリングはスムーズでした。
地域差なのか個体差なのか分かりませんが、やや栗色っぽい♂
②産卵セット(2023年7月21日)
ツヤクワガタの幼虫飼育で使用したマットとグローバルビートルマットをブレンドして中ケースでセット。管理温度は20℃ほど。
③割出(2023年8月27日)
約一か月程で割出。数が多すぎて小分け管理を断念。ケースに用土を足して戻します。
④幼虫飼育(2023年10月21日)
初令幼虫が大量に孵化していましたが、確認した卵の数ほどはいない
⑤羽化(2024年8月24日)
繭から大歯型がこんにちは
4.羽化個体紹介
① 53.9mm
2023/7/21 産卵セット
2023/10/21 割出→T5+T4+グローバルビートルマット 1400cc
2024/8/4 羽化確認
② 55.5mm
2023/7/21 産卵セット
2023/10/21 割出→T5+T4+グローバルビートルマット 1400cc
2024/8/4 羽化確認
5.まとめ
えっ!?あんなに卵確認してたのに羽化個体紹介2頭で終わりなの!?そう思いますよね…ハイ、そうなんです。カメラツヤクワガタの若齢期は滅茶苦茶低温に弱いようで、このタイミングでこの2頭を残して他は全滅しました。私の標準飼育管理温度が18-20℃なので、少なくとも20℃以上ないと厳しそうです。2齢後期のタイミングで譲り受けた種親は同様の環境で飼育していましたが、殆ど落ちることなく羽化したのと同温度帯で問題なく産卵も(というか爆産)していたので、低温環境もいけるのではないかと勘違いしてしまいました…
今回、大きくはないものの長歯型を出せましたが、種親の飼育とは異なり、通気性と餌持ちを意識した餌に変更した点が奏功したと思っています。次回やる機会あれば温度管理はメリハリつけてやってみたいですね。これで長歯型に固められれば餌重視の飼育が大事なことがわかるのですが、♀が居ないのでまた別の機会で検証です。とりあえず今回の金言は”テイオン、ダメ、ゼッタイ”です。
追伸:地域差かなーと思ったりしましたが、栗色個体(左)と黒色個体(右)同腹から出たので個体差でした。
6.参考資料