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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

マレーシア キャメロンハイランド 採集記

<プロローグ>

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長期休暇を得た筆者。未踏の地へ採集に行きたいと考えたものの、時期は2月後半。国内では、この時期に魅力的な候補地が思い浮かびません。


いっそのこと海外採集に行こうと決めたのは、年が明けてすぐのこと。ただ、休暇の前半は家族旅行を先に決めていたため、自分の計画は後回しに。準備はおろか、行き先すら決めないまま出発予定日の1か月前を迎え、ようやくマレーシアのキャメロンハイランドに行くことを決定しました。決定に至るまでの紆余曲折は長くなるので割愛。

 

家族旅行を満喫し、帰宅後の1日を使って急いで宿と車を手配。前日になっての手配とは、我ながらなかなかの怠け者です……。前半休暇の余韻を引きずりつつ、いよいよ機上の人となりました。

 

<1日目>

早朝にクアラルンプール国際空港に到着、レンタカー屋が開く8時まで喫茶店でコーヒーを一杯。空前の円安にも関わらず安く感じます。レンタカー屋はターミナル1駐車場にあります。

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受付はこんな感じ。ここまでの行き方は別の方がブログにまとめられており分かりやすいです。一通り説明を受け早速乗車。

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高速利用にはTouch'nGOと呼ばれるSuicaのようなデポジットカードを空港最寄りのガソリンスタンドで購入します。カード代金として10RM。キャメロンハイランド最寄りのICまでの高速料金は片道約20RMで、コンビニの店員にお願いすればそのままチャージしてくれます。ガソリンは2RM/Lほどで日本と比べるとその安さが羨ましい限りです。現政権に強い怒りを覚えますね。

約2時間の高速道路ドライブを経て一般道は山道を進みます。約1時間で宿のあるタナラタに到着。外国での運転は初日ということもあり強烈な違和感があり少し疲れました。チェックインまで時間があるので夜の街灯巡りの下見へ。

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予想以上に街であることに驚きます。街灯は全てLEDに換えられているのでこれは見切りをつけ、森に隣接する施設や公園を中心に探索、Googleマップに落としていきます。

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下見中、テイオウゼミを発見、世界最大の蝉を体感。迫力に圧倒されつつ暫し鑑賞。

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山辺に近づくとキャメロンハイランドらしい茶畑風景を楽しみながら日没まで散策していると、まとまった量の雨が降ってきました。一過性のものだろうとタカをくくっていたのですが止む気配はありません...事前に週間予報を見ていなかったのでキャメロンハイランドに来て初めて見てみると...まさかの帰国日までゴールデンタイムが雨予報。しかも強風...

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暗澹たる気持ちになりつつ下見を継続。深夜に宿に戻り日本から持ち込んだ氷結無糖を摂取し即就寝。今回の宿はAirbnbで手配。素泊まり3,000円/泊。シャワーが異常に熱いのと、異常に水量が少ない他は、年配オーナーのKenneth氏はとても気さくですし、また別の意味でもおすすめです(後述)。


<2日目>

日の出が7時半と遅いため、朝の街灯巡りから帰ってきてもオーナーは寝ています。朝食をとってからオランアスリの村へ。

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村人曰くバイヤーが来たばかりで在庫がないとのこと。8割何を言っているのか分かりませんが、その言葉通りコツヤクワガタとタウルスヒラタクワガタしかいません。カブトムシはアトラスオオカブトを勧められました。ガイドをお願いしたところ、まさかの塩対応。今晩採集に行くから明日10時に来い!とのこと。とりあえずオランアスリの村を後にしてキャメロンハイランドに戻ります。道中、ビニール袋の捕虫網を持った村人を複数回見たのでクワガタのガイドが出来る人がいなかったのかも?まずは虫を買わないとダメだったのかもしれませんが...


午後からは今回の主目的であるカステルナウツヤクワガタの幼虫及び新成虫の生育環境の観察です。 キャメロンハイランドはトレッキングコースが数多くあり雲霧林の厳かな雰囲気を楽しめます。

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入山すると褐色不朽した倒木や根本が朽ちウロを形成する大木が至るところに見つかります。足が沈むほどに腐葉土が堆積しているので移動が難儀します。山土と良い感じにミックスされたフレークがよく見られ、日本であればこのまま持ち帰りたくなる垂涎モノの状態ですが、無です。雑虫も殆どいません。何箇所か探索しましたが似たような感じで不発。不朽が進み過ぎていたのかも。自分の飼育環境や幼虫に与えている餌のイメージとかなりマッチしていたのですが結果が伴いませんでした。飼育に自信がなくなりそう...

夕飯を食べに宿から歩いて移動していると腹を喰われたハンステインヒラタクワガタ (Dorcus hansteini prosti)の死骸を発見。歯型が左右非対称で面白い。

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宿のすぐそばでの発見で色めきます。拾った地点の標高は1450m。飼育すると低温耐性のある方の虫だったので、さもありなんという感じです。

夜は予報通り雨。仮眠をとってから街灯探索へ。目をつけていたポイントを見て回りますがクワガタはおろか雨足が強く虫が全くいません。風速に至っては最大10m/s...やや気持ちが萎えてはいましたが折角の遠征なのでルッキング採集にシフト。森の縁部に生える木の割れ目を片っ端からチェック。こうなるともう自棄っぱちです。しばらくすると、目線の高さのウロに...

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いる!!!大型Dorcus属のメスのエリトラが見えます。マレーヒラタと一瞬悩みましたがここは 標高1550m。アンタエウスオオクワガタ(Dorcus antaeus datei )を確信。まさか居るとは思っておらず装備を車に置いてきてしまっていたので、ウロの奥にこれ以上進めないよう、枝で行く手を阻んでおきます。逃げないことは分かってはいましたが年甲斐もなく車まで400m猛ダッシュ。やや手こずりましたが掻き出しに成功。

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やりました。キャメロンハイランド産アンタエウスオオクワガタのメスです。

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採集した木はこんな感じ。目線の高さの割れ目にいたので結果的にはイージーな採集でした。

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葉は厚く表面には光沢があり見慣れない形をしています。クスノキ科?でしょうか。こういうときに植物もきちんと把握しておかないとなと痛感します。この日はこれにて終了。


<3日目>

明日の昼過ぎの便で帰国するので実質今日が最終日。10時過ぎにオランアスリの村へ到着。村人が複数人待ち構えています。オウゴンオニクワガタや良型パラレルスネブトなど7,8種ほどのラインナップ。目当てのゾンメルツヤクワガタやリツセマツヤクワガタは居なかったため、タナラタへ戻ります。午後はハイキングしながら樹液木探索や材起こしの時間に充てます。特に成果がないまま夕食を摂りに街へ。

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定番の牛ナシゴレンにイチゴミルクシェイクで腹ごしらえ。仕事で一度マレーシアに来たことがあり食にあまり良いイメージがありませんでしたが、キャメロンハイランドでの食事はどれも美味しかったです。

この日の夜は当初の天気予報から良い方向にハズれ、曇、最大風速は4m/sと一番マシ。風雨の影響で連日連夜、雨ガッパ長袖長ズボンが必須でしたが、この日は少しだけ蒸し暑く期待が高まります。コテ試しに宿の目の前の公園に行くと昨日までとは打って変わって生き物が沢山いる!!

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セダカヘビの一種から始まり、ヤスデセミコガネムシ、キリギリス、トゲナナフシまで。特にトゲナナフシは好きな虫の1つですが、日本産のそれと比べると派手さや棘の鋭さが別格で感動しました。次々と虫が飛来するのでウロウロしているとベンチの下にいたのは...

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コーカサスオオカブトのメス。

カブトムシに微塵も興味がない筆者ですが、実際に外国産を目にすると痺れるものがあります。クワガタの飛来を期待しましたが日没から3時間を過ぎたタイミングで虫の飛来が止まったので終了。他のポイントも見て回りましたが目ぼしい成果はありませんでした。


<まとめ>

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訪問時期が早かったからか初日、2日目と雨と風に悩まされました。朝から昼の数時間は晴れ間が見えるのですがねえ。3日目は街灯採集にピッタリな条件になりました。3月に入ると気候が安定していくようで、その過渡期だったようです。宿前の公園の街灯で1-2時間は楽しめるので興味がある方はAirbnbでKenneth氏の宿を探してみてはいかがでしょうか。

ルッキング採集は、今回かなり運が良かったこともあり、あまりオススメはしませんが、上記で紹介した樹種は結構生えていたので時間に余裕があれば結果が期待できる可能性はありそうです。

こちらも時間次第でなんとかなる気はしますが、主目的であったカステルナウツヤクワガタの生息環境観察はアテが外れてしまったので再訪必須ですね。書籍やHPには同地でのフェモラリスツヤクワガタの幼採や新成虫の掘り出し記事が確認出来るのでフェモラリスは見れるかな!?と仄かな期待を寄せていましたがかなり甘かったです。逆に今後の飼育に迷いが出そうでちょっと怖いです。今回は場当たり的に来てしまったので次回があれば周到に作戦を練りたいと思います。

締めになりますが、3泊5日の自由時間をくれた家族に感謝です。また、ここまで長文を読了いただいた読者のみなさま、いつもありがとうございます。