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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

アルケスツヤクワガタ (フィリピン共和国カタンドゥアネス島産) WF1 飼育記録まとめ

カタンドゥアネス島産
アルケスツヤクワガタ (Odontolabis alces) ♂

1.はじめに

今回飼育したのは、フィリピン特産のアルケスツヤクワガタ(Odontolabis alces)です。本種はフィリピンに広く分布していますが、特にミンダナオ島産は大型になることで知られており、あまり人気のないアルケスツヤの中では一番人気と言える存在です。

と、ここまで書いてて自分でも何言ってるかちょっと分からなくなってきましたね。そんな中でも、あえてカタンドゥアネス島産に手を出すあたり、「ああ、自分はこの種が好きなんだな」と自覚する次第です。ミンダナオ島産のブリードでは長歯を出せなかったので、今回はその作出を目標に頑張ってみたいと思います。

 

2.種親紹介

♀ 45 mm 3.0g

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通販でリストから購入。手に取った感じが軽く「ハズレ引いたかな」というのが率直な感想。

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ちなみにこちらは♂の参考画像。75mm

鋭利なハッキリした内歯がいいですね。前回ブリードしたミンダナオ産は80mm中盤~90mm後半のサイズで基部にゴツい突起状の内歯を持つ個体が見られました。

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こんな感じ。カタンドゥアネス島産は体長の割に顎が伸びやすいのか、アベレージが小さいのかもしれません。

 

3.産卵セット- 幼虫飼育-羽化

① 産卵セット 2022年6月6日

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DAISOのメガフードコンテナにビートルマットを加水して5センチくらい無加圧でセット。管理温度は24-5℃

②割出 2022年9月13日
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初令から二令くらいがワラワラと出てきました。軽い♀でしたが頑張ったようです。ここから430ccプリカへ個別飼育。ここから20℃管理。

②2本目へ移行

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一番大きい♂の頭幅は15.2mmほど。心なしか顎が長い…か?管理温度が低すぎるのか、成長速度が遅く、落ちる個体も多かったです。22-3℃が適温かも。

③ 蛹化確認

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蛹体重25.9g

基部に突起が小さく見えます。羽化時に消滅してくれると良いのですが…

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間もなく羽化f:id:kohya0727tj:20250416074214j:image

無事に羽化

 

4.羽化個体紹介

① ♀ 53.5 mm

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2022/6/6セット

2022/9/13 割出 One in a million プロトマット430cc 2.6g

2023/2/5 ビートルマット+IT-5 2300cc 10.4g

2024/6/M 羽化確認

 

② ♀ 58.0 mm

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2022/6/6セット

2022/9/13 割出 One in a million プロトマット430cc 1.2g

2023/2/5 ビートルマット+IT-5 2300cc 13.6g

2024/6/29 自力ハッチ

 

③ ♂ 71.0 mm

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2022/6/6セット

2022/9/13 割出 One in a million プロトマット430cc 0.6 g

2023/2/5 ビートルマット+IT-5 1500cc 9.1g

2024/6/29 蛹化

2024/9/6 蛹化

 

④ ♂ 80.0 mm

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2022/6/6セット

2022/9/13 割出 One in a million プロトマット430cc 0.3 g

2023/2/5 ビートルマット+IT-5 1400cc 6.7g

2024/7/4 自力ハッチ

 

⑤ ♂ 89.7 mm

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2022/6/6セット

2022/9/13 割出 One in a million プロトマット430cc 0.8 g

2023/2/4 ビートルマット+IT-5 1400cc 8.1g

2023/5/20 IT-5+One in a million プロト+DOS生 中ケース 37.6g

2024/1/20 二次利用マット(加工済)2300cc 44.8g

2024/9/2 羽化

 

5.まとめ
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蛹化時にあった突起は、左顎のほうは消えたのですが、右側だけ残っていまして。まとめの写真は右向きで統一しているので、うまーく隠れております。見えないので「長歯」ってことで許してください。え、だめですか?

さて、飼育の総括に話を戻しますと、産地によって飼育の感触がまったく違いました。おそらく生息している標高の違いだと思いますが、同じ条件で管理した場合でも、ミンダナオ産よりカタンドゥアネス産のほうが成長が遅かったですね。生息エリアの標高差が200〜300mほどあるのではないでしょうか。個別飼育から一気に管理温度を下げたところ、かなりの数が落ちてしまい、やはり環境差の影響だと感じました。

そして、大型ツヤクワガタ飼育では「容器は大きければ大きいほど良い」というのが鉄則だと再認識しました。飼育スペースの圧迫を恐れず、思い切って攻めるべきですね。また、長歯の発現条件についても、他種とは少し異なり、必ずしも低温管理が重要というわけではなく、マットの熟度や通気性のほうが歯型を左右する要素として大きいように思います。

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今回、羽化個体②で紹介したメスが、BE-KUWA 95号にてレコードを獲得しました!アルケスの♀レコードは歴史が古く、錚々たるブリーダーの方々が名を連ねてきた由緒あるタイトルなので、とても光栄に思います。産地もさまざまで、今回のカタンドゥアネス産はこれで2回目。他にはマリンドッケ産やミンダナオ産だったように記憶しています。

これを見ていると、オスのレコード産地もバラける可能性があることがわかり、改めて奥の深さを感じました。ミンダナオ産はとても太くなりますが、カタンドゥアネス産には縦に伸びそうなポテンシャルを感じます。マリンドッケ産やルソン産も同様の傾向があり、どの産地でも狙えるチャンスがあると感じました。

産地ごとにレコードの可能性が広がっているので、この文章を最後まで読んでくださった皆さんも、ぜひアルケスツヤクワガタの飼育に挑戦してみてください!

6.参考資料

stag-beetle-japan.com