(Dorcus taurus jampeanus) ♂
1.はじめに
今回は、インドネシア・タナジャンペア島のタウルスヒラタクワガタ(Dorcus taurus jampeanus)の飼育記事になります。タウルス全7亜種の中でも、本種とパラワン亜種(ssp. moinieri)は、歯型や艶感等、雰囲気や存在感がひと味違っていて、個人的には”ツートップ”だと思っています。見た瞬間に「あ、こいつらはちょっと特別だな」と感じさせてくれるんですよね。
とくに本種は野外からの入荷はもう何年も止まったまま。今出回っている個体は、同一の血統から来ていると見てまず間違いないと思います。だからこそ、こういう虫は積極的にブリードして、販売も含めて流通を広げていきたい。好きな人が手に取れる環境が続いてほしいですし、絶やさないためにも、いまやれる人がやることが大事だと思っています。
2.種親紹介
知人のS氏から譲り受けたトリオです。この場をお借りして、改めてお礼申し上げます。
♂ 37.4 mm
内歯の鋸歯が細かく基部は根元につきます。タウルス全種の特徴である微毛が美しいですね。
♀ 31.0 mm
♀ 28.3mm
♀は他亜種との違いが分かりません。
3.ペアリング-産卵セット-幼虫飼育-羽化
① ペアリング(2023年12月3日-)
♀殺しが頻発する種類ですが、十分に成熟しているので、ボトルに同居。冬場なので24-5℃に加温しています。
② 産卵セット(2023年12月17日)
小ケースに加水した発酵マットを固く詰めたマットに投入。細材も埋め込んでいます。24-5℃で管理します。
③産卵確認(2023年12月21日)
セット後、僅か4日で産卵を確認。
④ 割出(2024年1月13日)
共食いによる蛋白質補給中。マットのみのセットにして♀の取出しが遅れてしまうと全頭食べられてしまうこともよくあります。
多産ですね。
⑤幼虫飼育 (2024年1月-)
1本返し乃至は2本返しで管理します。管理温度は18-20℃一定。
4.羽化個体紹介
A ライン ( ♂37.4 mm ×♀ 28.3 mm)
① ♀ 26.1 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/3/23 ビートルマット+無添加発酵マット 500cc
2024/9/14蛹化
2024/11/M 羽化
② ♀ 26.5 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/3/23 無添加発酵マット 800cc 1.9g
2024/9/14 羽化
③ ♀26.6 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/3/23 ビートルマット+無添加発酵マット 1400cc
2024/9/14蛹化
2024/11/M 羽化
④ ♀27.3 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/3/23 ビートルマット+無添加発酵マット 800cc
2024/9/14蛹化
2024/11/M 羽化
⑤ ♀ 27.8 mm
2023/12/17セット
2024/4/3 IT-5 800cc
2024/7/30 羽化確認
⑥ ♀ 28.0 mm
2023/12/17セット
2024/4/3 IT-5 500cc
2024/7/30 蛹化
2024/9/1 羽化
⑦ ♀ 28.2 mm
2023/12/17セット
2024/4/3 IT-5 800cc
2024/7/15 蛹化
2024/11/M 羽化確認
⑧ ♀ 28.2 mm
2023/12/17セット
2024/4/3 IT-5 500cc
2024/7/30 蛹化
2024/11/M 羽化
⑨ ♀ 29.6 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/3/23 ビートルマット+無添加発酵マット 800cc
2024/9/14蛹化
2024/11/M 羽化
⑩ ♂ 28.7 mm
2023/12/17セット→2024/2/19割出
2024/2/19 無添加発酵マット 500cc
2024/10/30 羽化
⑪ ♂ 28.8 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/4/3 IT-5 500cc
2024/7/30 蛹化
2024/9/14 羽化
⑫ ♂ 29.1 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 無添加発酵マット 500cc
2024/9/14 羽化
⑬ ♂ 34.6 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/3/23 ビートルマット+無添加発酵マット 800cc
2024/9/14 羽化確認
⑭ ♂ 36.1 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/3/23 ビートルマット+無添加発酵マット 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 5.3g
2024/7/30 蛹化
2024/9/14 羽化
⑮ ♂ 40.1 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/3/23 ビートルマット+無添加発酵マット 500cc
2024/10/30 蛹化
2025/1/M 羽化確認
⑯ ♂ 43.1 mm
2023/12/17セット→2024/3/23割出
2024/4/3 IT-5 500cc
2024/12/M 羽化確認
B ライン ( ♂ 37.4 mm ×♀ 31.0 mm)
① ♀ 27.6 mm
2023/12/17セット→2024/4/3割出
2024/4/3 IT-5 500cc
2024/7/12 蛹化
2024/11/M 羽化確認
② ♀ 29.8 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 6.0g
2024/7/30 蛹化
2024/9/14 羽化
③ ♀ 29.4 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 5.2 g
2024/7/22 蛹化
2024/9/14 羽化
④ ♀ 30.3 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 6.5 g
2024/7/22 蛹化
2024/9/14 羽化
⑤ ♂ 29.4 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 無添加発酵マット 500cc
2024/9/14 羽化確認
⑥ ♂ 32.6 mm
2023/12/17セット→2024/4/3 割出
2024/4/3 IT-5 800cc
2024/7/30 羽化確認
⑦ ♂ 32.9 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 6.5 g
2024/9/1 蛹化確認
2025/1/M 羽化確認
⑧ ♂ 36.0 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 4.7 g
2024/7/30 蛹化
2024/11/E 羽化確認
⑨ ♂ 37.9 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 5.4 g
2024/7/22 蛹化
2024/9/14 羽化確認
⑩ ♂ 39.3 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 7.0 g
2024/9/1 蛹化
2024/12/E 羽化確認
⑪ ♂ 39.7 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 8.7 g
2024/7/22 蛹化
2024/9/14 羽化確認
⑬ ♂ 40.6 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 前蛹
2024/11/E 羽化確認
⑬ ♂ 40.9 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 7.4 g
2024/9/14 蛹化確認
2024/12/M 羽化確認
⑭ ♂ 45.5 mm
2023/12/17セット→2024/2/19 割出
2024/2/19 ビートルマット+Lv4 800cc
2024/6/22 ビートルマット+Lv4 800cc 9.4 g
2024/7/25 蛹化
2024/12/E 羽化確認
5.まとめ
牡牛屋さんのレコードが57.7mmなのですが、実際に本種を飼育してみると、この数字がどれだけすごいか、身に染みてわかります。
餌はレコード飼育に寄せてみましたが、正直、50mmにさえ届く気配がありませんでした。本種は低地から高地まで広く生息しているタイプの虫のはず(ちなみに本種の生息するタナジャンペア島の最高地点は400-500m程度)なので、メスと小型オスは爆速で羽化することを見越して低温気味で管理しましたが、温度関係なく爆速で羽化してきました。次サイクルでは、早いものは早いものとして割り切って、成長期の温度をもう少し上げてみようと思います。とにかく、まずは50mmオーバーを拝みたい!
6.参考資料