
(Odontolabis dalmanni rudicae) ♂
1.はじめに
今回飼育したのは、ルディカツヤクワガタ(Odontolabis dalmanni rudicae)です。本種は、ダールマンツヤクワガタのフィリピンのミンドロ島に分布する亜種にあたります。
ダールマンツヤクワガタ各亜種の中では、ネグロス島やパラワン島に生息する人気のインターメディアツヤクワガタ(Odontolabis dalmanni intermedia)の陰に隠れ、やや地味な存在ですが、個人的には非常に魅力的なツヤクワガタだと思っています。発達の控えめな大顎や、歯型に関係なく現れる独特な頭部の凹みなど、本種ならではの特徴が多く見られます。
2025年の今夏、久しぶりに野外品が入荷し静かに盛り上がりを見せています。しかも今回は、大型個体がかなりリーズナブルな価格で流通しており、まさに“めちゃくちゃ買い”のタイミングだと言えるでしょう。前回の入荷はコロナ前の2019年頃だったので、実に6年ぶりとは思えない価格設定です。
(もっとも私は、今年大きな買い物をしてしまったことに加え、仕事の負荷と飼育キャパシティのバランスが難しくなっていることもあり、今回は泣く泣く見送りました……)
これまで流通していたのは、ミンドロ島北部・ハルコン山産の個体が中心でしたが、今回は南部のバコ山南東に位置するリサップ産のようです。今後もさまざまな産地の個体が流通しそうですし、顎の発達具合などに産地差があるかもしれないと考えると、非常に楽しみな展開ですね。
2.種親紹介
♂ 86.0 mm

♀ 54.9 mm(2022年12月中旬羽化個体)
幼虫を購入したものの♀に偏ってしまい困っていたところ、現レコード飼育者の方が立派な♂とのトレードを快く引き受けてくださいました。その節は本当にありがとうございました。♀はもう1頭(50.0 mm)がおり、2ラインで臨みます。
3.ペアリング-産卵セット-幼虫飼育
① ペアリング (2023年8月1日-)
記録を取り損ねてしまいましたが、♂の方がやや羽化タイミングが遅かったので心配でしたが、同居するとすぐにかかりました。♀は羽化後8か月経過しています。
② 産卵セット(2023年8月初旬)
中ケースを使用。マットはカブトマットと無添加発酵マットを1:1でブレンドし、加水、無加圧で投入したもの。
③採卵(2023年8月下旬)
産卵セットを組んでから1か月程で反応。管理温度は25℃ 430℃プリカで多頭管理。
④ 幼虫飼育-羽化
430ccで個別管理していた幼虫。三齢初期くらいから個別管理。今回は試験的に色々なマットを使用しています。
5Lのフォーロックコンテナで飼育していた個体。管理温度は♂は一貫して25℃。♀は繭入りしそうなタイミングで20℃管理に移行。

中歯で蛹化した個体
中歯が羽化。
4.羽化個体紹介
① ♀ 43.1 mm

2023/12/4 割出
2024/2/4 ビートルマット+B+Lv4 1700cc
2025/2/E 羽化確認
② ♀ 46.7 mm
2023/12/4 割出
2024/3/10 ビートルマット+B+Lv5 800cc
2024/6/25 継ぎ足し
2025/3/E 羽化確認
③ ♀ 47.4 mm

2023/12/4 割出
2024/3/10 ビートルマット+B+Lv5 800cc
2024/6/25 継ぎ足し
2025/3/M 羽化確認
④ ♀ 47.6 mm

2023/10/21 割出
2024/12/22 ビートルマット+Lv3 2300cc
2024/6/22 継ぎ足し
2025/1/M 羽化確認
⑤ ♀ 47.9 mm

2023/12/4 割出
2024/1/22 ビートルマット 430cc
2024/5/25 IT-5 1300cc 16.3g
2025/3/E 羽化確認
⑥ ♀ 50.0 mm
写真・(体長除く)飼育データなし
⑦ ♂ 72.6 mm

2023/12/4 割出
2024/3/10 ビートルマット+B+Lv5 800cc
2024/6/23 Lv3+Lv5 3200cc 27.6g
2025/3/M 自力ハッチ
⑧ 74.8 mm

2023/12/4 割出
2024/3/10 ビートルマット+B 800cc
2024/6/23 IT-5+Lv4 中ケース 26.4 g 13.5mm
2025/1/E 自力ハッチ
⑨ 78.5 mm

2023/10/21 割出
2024/1/21 ビートルマット+Lv3 1400cc
2024/4/25 IT-5 5000cc 30.1g 13.9 mm
2025/3/M 羽化確認
⑩ 80.9mm

2023/12/4 割出
2024/2/5 ビートルマット+B+Lv4 430cc
2024/4/24 IT-5 5000cc 24.7g 14.6 mm
2025/3/M 羽化確認
⑪ 83.4 mm

2023/12/4 割出
2024/2/5 ビートルマット+B 800cc
2024/5/25 IT-5 + Lv4 中ケース 28.3g 14.5 mm
2025/1/26 蛹化確認 24.9g
2025/3/9 羽化確認
⑫ 84.0 mm
2023/12/4 割出
2024/2/5 ビートルマット+B +Lv4 430cc
2024/4/5 IT-5 + Lv5 5000cc 21.8g 14.7 mm
2024/10/18 Lv3+N 34.3g
2025/3/15 羽化確認
⑬ 88.0 mm

2023/12/4 割出
2024/2/5 ビートルマット+B 800cc
2024/4/6 ビートルマット+B+Lv5 5000cc 21.6g 頭幅 14.6mm
2024/5/28 ビートルマット+B+Lv5 5000cc 29.9g
2025/3/15 羽化確認
5.まとめ

掘り出した瞬間、顎が伸びた個体が現れ、「これはレコード越えか!?」と色めき立ちましたが、そうは問屋が卸しませんでした。最大個体は88.0mm。記録には遠く及ばず、肩透かしな結果に。欲を言えば、もう少し大顎が発達していてくれたら…というところです。

今回は、本種に適したマットの傾向を探るべく、さまざまな種類・銘柄のマットを試しました。その中で最大個体が出たのは、粗めのオガが入った発酵の進んだカブトマットを主体として加工の上、使用したパターン。容器は5Lケース。

温度管理については、前回の反省を活かし対応しました。以前の飼育では、幼虫自体は20℃程度でも問題なく育つものの、♂が蛹化の際に不全となるケースが多く見られたため、今回は♂の飼育を通して25℃で一貫管理しました。ただしこの温度帯だと、♀が早期に繭を作り始めてしまうため、繭入りのタイミングで20℃へ切り替え。この采配が功を奏し、♂♀の羽化タイミングが大きくズレることなく揃いました。ミンドロでは比較的低地に生息しているのかもしれません。
まだ1サイクル目の結果ではありますが、なんとなく方向性は見えてきた気がします。次のサイクルも、今回の経験を活かして挑戦してみたいと思います。(最近WDを購入された方の参考になれば幸いです……というか、皆さんの飼育結果もぜひ知りたいので、SNSやブログなどで発信していただけると、とても嬉しいです)
6.参考資料・資材
![BE-KUWA(90) 2024年 03 月号 [雑誌]: 月刊むし 増刊 BE-KUWA(90) 2024年 03 月号 [雑誌]: 月刊むし 増刊](https://m.media-amazon.com/images/I/61M4qfcas6L._SL500_.jpg)