1.はじめに
今回はオキナワノコギリクワガタ(Prosopocoilus dissimilis okinawanus)の飼育です。2022年8月下旬に採集した個体からの飼育記録まとめになります。
当時は家族旅行で沖縄北部に滞在していたのですが、早朝4時間だけ時間をもらい、沖縄在住のクワガタ飼育仲間のN氏の案内で採集へ。ピンポイントの日時指定に関わらず、N氏とっておきの沖縄本島中南部の採集場所を案内いただくとともに、南西諸島のノコギリ採集のコツまで伝授いただきました。本当にありがとうございます。
本種は6月から発生、7月にピークを迎えるため、8月は個体数が減っていきます。しかも今回の採集は、私の勝手な都合で大変申し訳なかったのですが、往復の時間を考えると実質的な採集時間は2時間程度しかありません。N氏としても私を満足させることが出来るか心配だったようで気を遣わせてしまいました。しかしながら地元の採集に精通していることだけのことはあり、2時間程度という短時間であったにも関わらず61mmの大歯♂、黒化型♀などを筆頭に、オキナワヒラタクワガタを含めて20頭以上を確認することが出来ました。今回はこのうち、今回採集最大個体♂との追い掛け♀、ノーマルカラー♀4頭、黒化型♀1頭の合計6ラインでやってみます。とりあえず70mm超えと漆黒のカッコいい個体を拝みたいところです。
2.種親紹介
♂ 61.0mm
♀ ノーマル色 (追い掛けライン 28.0 mm:Aライン 24.0 mm:Bライン 24.2 mm:Cライン 28.7 mm:Dライン 29.0 mm)
* 写真撮影忘れてますね…
♀ 黒化型 32.5mm
3.産卵セット-羽化
① 産卵セット(2022年8月22日)
こちらはノーマル色の産卵セット。アンテの幼虫飼育で使用したマットを1400ccか2300ccのボトルに詰めたものをセット。
こちらは黒化型。セット内容はノーマルと同じです。中々産まなかったですね…
②割出(ノーマル色:2022年9月4日、黒化型:2022年11月4日)
ノーマル色はセットしてすぐに卵が見えました。
産卵数は多くはない。採卵した卵はプリンカップで管理。
黒化型はセットした当初、反応が悪かったため、手を変え品を変え(昇温・材投入・マット大幅変更)10月中旬に卵を確認、11月に入って割出。
③幼虫飼育
採卵→プリカ内で孵化した幼虫。
今回の幼虫飼育は発酵が進んだマットをメインに2-3回の交換で飼育しました。管理温度は18-25℃。1本目は24,5℃管理です。
④蛹化
まだ透き通っている♂の蛹。取り出すのが少し早かったですね。
♀の蛹。極端な羽化ズレはなかった印象。
⑤ 羽化
羽化後間もない♂
胸幅の広い♀
4.羽化個体紹介
■追い掛けライン(WD♂61.0mm× 28.0mm)
2022/8/20 種親採集
2022/8/27 セット →11/4 割出 KSK 800cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 800cc 7.7g
2023/7/11 蛹化確認 4.4g
2023/9M 羽化確認
■Aライン(24.0mm 持腹)
① ♀ 34.4mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 500cc
2023/1/10 DOS生500cc 6.7g
2023/9M 羽化確認
② ♀ 35.0mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 500cc
2023/1/10 IT-5 プロトマット 500cc 7.0g
2023/9M 羽化確認
③ ♀ 35.5 mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 500cc
2023/1/10 DOS生オガ 500cc 7.1g
2023/9M 羽化確認
④ ♂ 65.8 mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 500cc
2023/1/10 IT-5 プロトマット 800cc 10.3g
2023/8/28 蛹化確認
2023/10/M 羽化確認
■Bライン(24.2mm 持腹)
① ♀ 34.3mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/10/17 ほっとラボマット800cc
2022/2/25 IT-5 プロトマット 800cc 7.6g
2023/7/11 蛹化確認 4.1g
2023/10/M 羽化確認
■Cライン(28.7mm 持腹)
① ♀ 34.7mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 800cc
2023/3/12 IT-5 プロトマット 800cc 8.9g
2023/7/17 蛹化確認
2023/10/M 羽化確認
② ♀ 35.5mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 800cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 500cc 8.9g
2023/7/17 蛹化確認
2023/10/M 羽化確認
③ ♂ 65.0 mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 800cc
2023/2/21 IT-5 プロトマット 1300cc 14.2g
2023/7/11 蛹化確認 9.3g
2023/10/M 羽化確認
④ ♂ 66.6 mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 800cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 1400cc 12.7g
2023/8/28 蛹化確認 9.3g
2023/9/13 羽化確認
■Dライン(29.0mm 持腹)
① ♀ 34.0mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/10/17 ほっとラボマット 800cc
2022/11/4 KSK 800cc
2023/3/12 IT-5 プロトマット 500cc 6.4g
2023/7/17 羽化確認
② ♀ 35.6mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/2 KSK500cc
2023/1/10 DOS生 500cc 7.3g
2023/7/17 羽化確認
③ ♂ 61.4mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/10/17 ほっとラボ 800cc
2023/11/4 KSK 800cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 800cc 11.9g
2023/8/28 蛹化確認
2023/9/13 羽化確認
④ ♂ 64.6 mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 800cc
2023/1/10 IT-5 プロトマット 1400cc 9.3g
2023/8/28 蛹化確認
2023/9/13 羽化確認
⑤ ♂ 65.2 mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/11/3 KSK 800cc
2023/1/10 IT-5 プロトマット 1400cc 9.3g
2023/8/28 蛹化確認
2023/9/13 羽化確認
⑥ ♂ 65.7 mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/10/17 ほっとラボ 800cc
2023/11/4 KSK 800cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 1400cc 14.6g
2023/8/28 蛹化確認 10.3g
2023/9/13 羽化確認
⑦ ♂ 70.7 mm
2022/8/20 種親採集
2022/8/24セット→2022/9/4 割出
2022/10/17 ほっとラボマット 800cc
2023/11/4 KSK 800cc
2023/1/10 IT-5 プロトマット 1400cc 10.7g
2023/9/17 羽化確認
■黒化型(♀32.5mm 持腹)
① ♀ 33.4mm
2022/8/20 種親採集
2022/10/10セット→2022/11/4 割出
2022/11/4 KSK 800cc
2023/2/25 IT-5 プロトマット 800cc 5.4g
2023/8/27 羽化確認
② ♀ 35.2mm
2022/8/20 種親採集
2022/11/4セット→2023/1/20 割出
2023/1/20 IT-5 プロトマット 500cc
2023/11/M 羽化確認
③♀35.6mm
2022/8/20 種親採集
2022/11/4セット→2023/1/20 割出
2023/1/20 IT-5 プロトマット 500cc
2023/11/M 羽化確認
④ ♂ 50.5mm
2022/8/20 種親採集
2022/10/10セット→2022/11/4 割出
2022/11/4 KSK+KG 800cc
2023/7/16 MD改 800cc 9.1g
2023/8/27 蛹化確認
2023/9/27 羽化確認
⑤ ♂ 50.5mm
2022/8/20 種親採集
2022/11/4 セット→2023/1/20 割出
2023/1/20 IT-5 500cc
2023/12/3 蛹化確認
2024/1/13 羽化確認
⑥♂ 63.0mm
2022/8/20 種親採集
2022/10/10セット→2022/11/11 割出
2023/1/19 IT-5 プロトマット 500cc 5.4g
2023/6/30 IT-5 プロトマット 800cc 14.2g
2023/9/E 羽化確認
⑤ ♂ 66.0mm
2022/8/20 種親採集
2022/11 /4 セット→2023/1/20 割出
2023/1/20 IT-5 プロトマット 500cc
2023/5/11 IT-5 プロトマット 800cc 11.2g
2023/11/E 羽化確認
5.まとめ
オキナワノコギリは20年ほど前に今はなきbiddersで野外品を購入、飼育したことがありました。足の力がとても強く、手がボロボロになったことや威嚇を繰り返す期待を裏切らない獰猛さ。本土ノコにはない伸びやかな顎、光沢の強い美しいエリトラ...いつかは採集、ブリードしてみたいなと願っていたので今回の飼育記録まとめは感慨深いものになりました。
70mmUPとカッコいい黒化型♂作出の目標とした今回飼育の振り返りですが、目標はとりあえず達成。6ライン抱えましたが、どのラインも1回あたりの産卵数は少ない印象でした。ノーマル色はすぐに産卵が確認できたのですが、黒化型はなかなか産まず。マットに黒土を混合、材を入れ25℃まで加温、10月中旬にやっと卵を確認できました。シーズン終盤の野外品は一工夫必要なのでそれが報われると嬉しいですね。
幼虫飼育は管理温度の緩急を意識しつつ、粒子の粗いカブトマットをメインに使用、色々と課題はありましたが本種には馴染んでいましたね。
Dラインと黒化型ラインは次世代も継続予定なので、引き続き使用してみたいと思います。
6.参考資料・資材