1.はじめに
今回飼育したのはユンナンヒラタクワガタ(Dorcus titanus typhoniformis)になります。流通当初は高額取引されていましたが、良くも悪くも飼育が容易な”ヒラタクワガタ”なので、ここ数年で飼育品供給量が激増、とてもお求めやすくなっています。産地は中国南西部の内陸、貴州省 黔東南 苗族 侗族 自治州産(けんとうなん ミャオぞく トンぞく じちしゅう)です。読み方難しいですね。
本種は、大顎が細長くオオヒラタとしては華奢で上品な見た目なのと、最大内歯位置に爬行性が見られることが知られ、個人的に興味がある種類でした。そんな好意的な印象もあり、お値段も小慣れてきたし、そろそろやろうかな、と思っていたタイミングでブリード仲間のH氏から幼虫をいただいてしまいました。いつもありがとうございます。
それでは早速、以下、飼育記録を紹介していきたいと思います。
2.幼虫飼育-蛹化-羽化
①幼虫飼育(2022年4月~)
1本目は800ccのオオヒラタケ菌糸瓶へ投入。管理温度は18℃ほど。成長スピードは速い印象です。
②蛹化
孵化してから凡そ10か月程で蛹化してきました。
人口蛹室で管理した羽化間近の♂
③羽化
羽化直後は赤い個体が普通なのですが…
羽化直後でこのように真っ黒な個体も見られました(6♂中2♂)
3.羽化個体紹介
① ♀ 42.8mm(頭幅:12.4mm 胸幅:17.2mm)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2023.1.10 前蛹 6.8g
2023.3M 羽化
② ♀ 43.8mm(頭幅:12.4mm 胸幅:16.7mm)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2022.12.31 羽化
③ ♀ 44.9mm(頭幅:12.8mm 胸幅:17.9mm)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2023.1.10 DOS生 500cc 9.6 g
2023.5M 羽化
④ ♂ 75.5mm(体長:50.7mm 頭幅:22.8mm 胸幅:23.3mm 顎率:0.328)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2022.7.19 F-ZEROクヌギ100% 800cc 20.8g
2023.1.10 蛹化 15.6g
2023.3M 羽化確認
⑤ ♂ 83.5 mm(体長:55.8mm 頭幅:24.9mm 胸幅:25.1mm 顎率:0.331)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2022.7.19 F-ZEROクヌギ100% 1400cc 25.2g
2022.11.12 蛹化 19.5g
2023.1M 羽化確認
⑥ ♂ 83.5mm(体長:56.6mm 頭幅:26.2mm 胸幅:26.9mm 顎率:0.322)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2022.7.19 F-ZEROクヌギ100% 1400cc 27.1g
2022.11.4 One in a million プロトマット1400cc 27.8g
2023.1.10 蛹化 20.4g
2023.3M 羽化確認
⑦ ♂ 85.2mm(体長:57.3mm 頭幅:25.6mm 胸幅:25.7mm 顎率:0.327)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2022.7.19 F-ZEROクヌギ100% 1400cc 27.7g
2022.12.17DOS 生オガ 1400cc 27.6g
2023.3.1 蛹化 20.7g
2023.5M 羽化確認
⑧ ♂ 86.2mm(体長:57.0mm 頭幅:26.3mm 胸幅:27.1mm 顎率:0.338)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2022.7.19 F-ZEROクヌギ100% 1400cc 26.7g
2022.11.4 One in a million プロトマット1400cc 31.5g
2023.4.16 蛹化 21.6g
2023.6M 羽化確認
⑨ ♂ 86.6mm(体長:56.9mm 頭幅:26.0mm 胸幅:25.9mm 顎率:0.342)
2022.3 孵化
2022.4.3 KBファーム AG800cc
2022.7.19 F-ZEROクヌギ100% 1400cc 28.4g
2022.11.4 One in a million プロトマット1400cc 29.1g
2023.4.30 蛹化 20.6g
2023.6E 羽化確認
4.まとめ
最大内歯は噂通りバラツキが見られたことや、大顎自体も体長とは無関係に細めと太めで分かれ、個体差があって面白かったですね。
実際に成体を手にとって見てみると、90mm近い大きさにも関わらず、細い大顎とヒラタにしては控えめな内歯が外国産オオヒラタの無骨な印象を見事に中和し、華奢で上品な見た目を醸し出しているのだと実感。うーん、エレガント。
飼育については、2齢初期で菌糸800ccに入れましたが、18℃管理下でも投入後3か月もあれば最大体重に乗るスピード感でした。温度管理が出来る環境が前提ですが、85-6mmまでは普通に出る印象です。飼育レコードを見据えるとなると、上述の通り、最大体重に乗る時期が早いので、この辺りを念頭に置きつつ、温度管理や容器、劣化スピードの遅い餌の検討等、もう少し工夫する必要がありそうです。飼育レコードの88.0mmが登録されたBE-KUWA レコード号(No.85)の講評にもあるとおり、血統化すれば更なる大型個体がバンバン出てきそうですね。種親♀は③が第一候補ですが、♂は悩ましいですね。最大個体は⑨ですが、形で好きなのは太目な⑥と⑧…もう少し悩んでみようと思います。
5.参考資料・資材