1.はじめに
今回飼育したのはアローコクワガタの中央ベトナム亜種 (Dorcus arrowi lieni) になります。日本でいうところのアカアシクワガタの仲間ですが、アカアシクワガタを1億倍凶悪に発達させた大顎が目を引きます。そして飼育レコードが78mmと同亜種最大なので人気も断トツです。やはりデカいは正義ですね。
本種、よくよく見ると大顎はウネっていて殺傷力の高いサイクロンナイフを彷彿とさせるんですよね。
エリトラも赤味があって色気もあります。
今回は幼虫でR氏から頂いていた♂が羽化、別血統の♀を交配したラインの飼育記事となります。一般的には菌糸で大きくなると言われている本種ですが、恒温環境の元でお財布に優しいマット飼育をしたらどれくらいまで大きくなるか、これが今回記事のコンセプトになりますので、その前提で読んでいただけると幸いです。
2.種親紹介
♂ 66.5mm
<飼育データ>
2020/9/18セット→2020/11/15割出
2020/11/28 月夜野エレメント 800cc
2021/4/2 月夜野エレメント 800cc 12.8g
2021/6/29 羽化確認
♀ 38.7mm
3.産卵セット-割出-幼虫飼育
①産卵セット 2022/1/03
菌糸ボトルや菌床産卵でセットを組む方が多いようですが、上述したとおり今回のコンセプトは経済性です。ホダ木を加水、樹皮を剥いたあと廃マットに埋め込み中ケースでセットしました。保湿を目的として水を十分に吸わせた水苔を敷いています。管理温度は18-20℃です。以下の”5. まとめ”でも記載していますが、雌雄で羽化ズレすることが多いので後食までの種親管理の手を抜かないことが大事かと思います。
② 割出 2022/6/18
セットから半年後。初令後半~2令幼虫が見られたのでセットしてから2-3か月で産卵しだしたようですね。菌床よりやや反応が遅いのかもしれません。なお、ケース側面からは全く幼虫は見えませんでした。割出後、プリカで個別管理していたのですが、仕事が忙しく、小さなプリカで3か月ほど放置してしまいかなりヒネさせてしまいました。
③ ボトル個別飼育
恵栽園のクワガタ発酵マットで1本目の個別管理を、2本目からDOSの生オガ発酵マットを使用しました。思ったよりは育っている印象です。管理温度は一貫して18-20℃です。
④ 蛹化
⑤ 羽化
蛹室形成・羽化は上手いようです。
4.羽化個体紹介
① ♀ 34.9 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 800cc 2.4g
2023/3/M 羽化確認
② ♀ 35.5 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 800cc 2.3g
2023/3/M 羽化確認
③ ♀ 38.5 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 800cc
2023/1/18 DOS生 500cc 7.9g
2023/6/M 羽化確認
④ ♂ 50.4 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 800cc 2.6g
2023/1/18 DOS生 800cc 9.2g
2023/4/1 蛹化確認
2023/6/M 羽化確認
⑤ ♂ 54.5 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 800cc 2.4g
2023/4/1 DOS生 500cc 9.6g
2023/8/M 羽化確認
⑥ ♂ 60.3 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 800cc 4.4g
2022/12/30 DOS生 800cc 11.8g
2023/4/28 蛹化確認
2023/8/M 羽化確認
⑦ ♂ 60.6 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 800cc 1.8g
2023/1/18 DOS生 800cc 9.6g
2023/8/M 羽化確認
⑧ ♂ 64.5 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 800cc
2023/1/18 DOS生 800cc 11.2g
2023/3/28 DOS生 800cc 16.3g
2023/8/28 羽化確認
⑨ ♂ 66.1 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 500cc
2023/1/18 DOS生 800cc 11.3g
2023/4/1 DOS生 800cc 14.7g
2023/8/28 蛹化確認
2023/9/E 羽化確認
⑩ ♂ 66.3 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 500cc
2023/1/18 DOS生 800cc 10.4g
2023/4/1 DOS生 800cc 15.2g
2023/8/28 羽化確認
⑪ ♂ 66.8mm
2022/1/3 セット → 2022/6/28 割出
2022/9/20 KSK 500cc
2023/1/15 DOS生オガ 11.0g
2023/4/1 DOS生オガ 15.8g
2023/8/28 羽化確認
⑫ ♂ 67.3mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 500cc
2022/12/30 DOS生 800cc 11.3g
2023/3/27 DOS生 800cc 15.7g
2023/8/28 蛹化確認
2023/9/E 羽化確認
⑬ ♂ 67.8mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 500cc
2023/1/18 DOS生 800cc 13.0g
2023/4/1 DOS生 800cc 16.7g
2023/9/E 羽化確認
⑭ ♂ 68.3 mm
2022/1/3 セット→2022/6/18 割出
2022/9/20 KSK 500cc
2023/1/18 DOS生 800cc 11.5g
2023/3/27 DOS生 800cc 15.7g
2023/8/28 蛹化確認
2023/9/E 羽化確認
5.まとめ
♀が早く羽化することもあり、休眠期間も長いので、成体管理は万全にする必要があると思います。乾燥すると種なしや産まなくなったりするので、湿度を保つ管理が求められますね。ボトルやミニケース等の底面に粗目のおが屑やヤシ殻チップを敷き、生体をおき、その上にしっかり水分を吸わせた水苔を被せ、湿らせたティッシュを最後にのせて温度変化の少ない暗所で寝かせて管理します。記録し損なったので定かではないのですが、♂と♀は半年ほど羽化時期がズレていました。♂の羽化時期(2021年6月末)を踏まえると♀は2021年1月頃だったかと。♂で羽化後6ヶ月、♀で12ヶ月ですが、上記のような管理をしていれば、Dorcus属なので全く問題ありません。このように後食まできちんと管理するのがポイントです。
一般的には本種は菌糸飼育で大きくなるようなので、その先入観もあって今回は60mm前半が中央値かなーと思っていましたが、60mm後半寄りの結果となりました。割出してから90ccプリカで3か月放置してしまったのはイタかったな…恐らくマット飼育が上手な人がやれば十分、70mmは射程に入るのではないかなと思います。許容度が高い虫なので、色々と試し甲斐のある虫ですね。次サイクルはもう少し管理精度を高めて70mm連発させてみたいところです。
6.参考資材・情報