1.はじめに
今回はアマミノコギリクワガタ原名亜種(Prosopocoilus dissimilis dissimilis)の飼育記録になります。国産ノコギリクワガタ(飼育レコード82.1mm, 野外レコード80.5mm)の中では最大種で、6月後半から7月中旬頃にかけて野外品が数多く出回ります。飼育が容易なのと漆黒の体躯、強く湾曲する大顎等、見た目もカッコいいので国産人気種の代表格といえるでしょう。今回、友人のRUIさん(http://blog.livedoor.jp/rui_kuma/)から採集品を譲ってもらったので飼育経過をまとめてみたいと思います。
2.種親紹介
2020年7月下旬採集個体、産地は奄美市(旧名瀬市)ラベル。
♂47-8mm
♀32-3mm
♀のエリトラに刻まれているスジ。ノコギリ属としてはあまり見られない特徴で個人的にはこの異形な感じが好きだったりします。顎が欠けていますがマット産みなので問題ありません。
小歯型♂
本土ノコ(P.inclinatus)を見慣れている者からすると鋸歯のまばらな付き方やボディーカラーを目の当たりにすると南西諸島の虫だと強く感じさせられます。与路島や請島産は奄美大島産のそれと比べて赤味の強い個体が多いようなので機会があれば飼育してみたいところですね。
3.ペアリング-幼虫飼育
①ペアリング (2020年8月2日)
中ケースに川口商会の特選クワガタマットを少し加水、ケースの6-7割まで手詰め固めたのち無加圧でマットをギリギリまで足して水苔を敷いてセット。念のためペアで同居させます。管理温度は20度ほど。
②産卵確認(2020年8月11日-)
ケース外面から卵を確認
セットしてから一月ほどで幼虫を確認。かなり産んでそうですね。
③割出(2020年9月26日)
卵、幼虫合わせて50頭以上。多産ですね。小ケースや800ccボトルでのセットでも良かったくらいです。
④幼虫飼育
一本目は菌糸、二本目以降はマットで飼育してみます。
菌糸はカワラ、オオヒラタケの2種類を使用、羽化まで特段温度変化をつけず18−20°で飼育。
良い感じに居食いしていました。
食性が広く菌糸もマットもバリバリ食べる印象です。
⑤蛹化-羽化
マットの詰め方が緩いと大きな蛹室を作ってしまう気がします...
蛹体重12g 70mm前後でしょうか。
羽化間際
羽化直後
露天掘りしそのまま羽化させた♂
4.羽化個体紹介
① ♂65.8mm
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/10/19 KBファーム AG500cc
2021/2/3 DOS 3次発酵マット 800cc 10g
2022/3/19 羽化確認
② ♂66.3mm
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/9/26 月夜野カワラ 800cc (2頭飼育)
2021/2/3 DOS 3次発酵マット 1300cc 13g (頭幅10.3mm)
2022/3/19 羽化確認
③ 66.9mm
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/9/26 月夜野カワラ 800cc (2頭飼育)
2021/2/3 DOS 3次発酵マット 800cc 10g (頭幅8.9mm)
2022/3/19 羽化確認
④ ♂70.6mm
(画像無し)
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/9/26 月夜野カワラ 500cc
2021/2/3 DOS 3次発酵マット 1300cc 16g (9.9mm)
2022/1/M 羽化確認
⑤ ♂70.8mm
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/9/26 月夜野カワラ 500cc
2021/2/3 DOS 3次発酵マット 800cc 14g (10.0mm)
2022/3/19 羽化確認
⑥ ♂71.8mm
(画像無し)
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/9/26 月夜野カワラ 500cc
2021/2/3 DOS 3次発酵マット 1300cc 18g (10.2mm)
2022/3/19 羽化確認
⑦ ♂72.2mm
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/9/26 月夜野カワラ 500cc
2021/2/3 DOS 3次発酵マット 1400cc 19g (10.7mm)
2022/3/19 羽化確認
⑧ ♂76.4mm
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/9/26 月夜野カワラ 500cc
2021/2/3 DOS 3次発酵マット 1300cc 11g (10.4mm)
2022/8/11 羽化確認
⑨ ♀40.2mm(最大個体のみ掲載)
2020/8/2 産卵セット→2020/9/26 割出
2020/9/26 月夜野カワラ 800cc (2頭飼育)
2020/12/31 DOS 3次発酵マット 800cc 9g
2022/3/19 羽化確認
5.まとめ
同腹からでも大顎の湾曲が強めのタイプ、弱目のタイプ等、バラツキがあって視覚的な楽しさと、目に見えて成長するのでブリードしている実感がありました。野外品次世代ということと、途中仕事が忙しくなってしまい管理が後手になったことでマット交換が疎かになり70mm前半に収斂してしまったのでこんなものなのかな、と思っていましたが、最後の一頭が76mmを超える良型で羽化してきてくれました。
やはり大型を目指すのであれば2年1化に持っていくことですね。もう少しメリハリつけた飼育をして、幼虫期間を伸ばすような工夫をすれば平均サイズの底上げができたかもしれません。この個体は2本返しで特段温度変化をつけずに大型化したのでポテンシャルがある個体と見做して種親として使いたいところなのですが♀と羽化時期は半年以上離れているのでインラインでのブリードが厳しいかも...
お気づきの方が居られるかと思いますが、割り出し時の数と羽化個体数が全然合わないですよね。実は、上の写真のようなルアーケースにティッシュを湿らせて入れて活動開始まで保湿管理しようと思っていたのですが、多忙により管理を怠ってしまい10頭以上が乾燥が原因でお亡くなりになりました。活動開始まで期間を要する種はティッシュよりも保水性が担保できる水苔等で個別管理するようにしないと私のようなズボラ飼育者にはルアケ管理は不向きかもしれません。顎も欠けてしまいますし…もう少し真面目に成体管理します。
6.関連資料・資材