1.はじめに
今回飼育したのはオニクワガタ(Prismognathus angularis)です。野外レコード27.2mm、飼育レコード27.0mmとあるように小型種。山地-高山帯に生息しており、8月頃に歩行個体や灯火に飛来する個体がよく観察されているようです。分布は北海道から九州(中北部)まで広く分布しており、うち本種の亜種は九州(南部)に生息するキュウシュウオニクワガタ(Prismognathus angularis morimotoi)がいます。
(ご参考)
キュウシュウオニクワガタとの並列写真を以下、貼っておきます。
原名亜種(左)に比べて、九州亜種(右)大顎、前胸背板、腹部の形状等が異なりますね。
*写真をご提供くださいましたR氏にはこの場を借りて御礼申し上げます。
2.種親紹介
2021年5月3日に自己採集個体(幼採)を羽化させたものを種親としています。幼虫は1000-1200Mの高山帯のブナ立ち枯れ根部の水分をよく含み、朽ち果てて脆くなったところで数多く得ることができましたが、5-6 頭程を持ち帰り飼育することに。恵栽園さんのクワガタ発酵マットを加水の上、800ccのボトルに多頭で投入、18-20℃で管理します。7月初旬には全頭が自力ハッチ。
小さいですが大顎の形状が複雑でとても格好の良い虫です。
3.ペアリング
雌雄いずれも自力ハッチ個体で、ペアリングがイージーです。ゼリーを与えても摂食しませんね。一たび交尾をすると♂はすぐに死んでしまいました。
4.産卵セット・割出
幼虫飼育で使っていた800ccボトルへ里帰りさせるズボラ産卵セットです。クワガタ発酵マットはブナが原料ですし、やや添加物が気になりますが、食性の広い虫と言われているのでまあ大丈夫でしょう…
投入から2か月半でおびただしい数の幼虫が見えています。爆産していますね。
そこからさらに2か月放置してしまい、ややヒネ気味に。幼虫数も減ってしまいました。それでも20頭を回収、うち半分は友人のR氏に飛ばします。
5.幼虫飼育・羽化
90ccのプリカに個別管理。クワガタ発酵マットを使用します。やや加水量が少なく、途中プリカの乾燥が進んでしまい4頭程落ちてしまいました。反省。その際に加水、マットを詰めなおしてあげます。
2022年6月初旬には自力ハッチ個体がチラホラ。
6.羽化個体紹介
①♂18.1mm
2021/8/4 産卵セット投入(KSK800cc )
2021/12/28 割出→2021/12/28 KSK 90cc
2022/6/1 自力ハッチ
② ♂ 19.5 mm
2021/8/4 産卵セット投入(KSK800cc )
2021/12/28 割出→2021/12/28 KSK 90cc
2022/6/1 自力ハッチ
③ ♂ 23.5 mm
2021/8/4 産卵セット投入(KSK800cc )
2021/12/28 割出→2021/12/28 KSK 90cc
2022/6/1 自力ハッチ
④ ♀ 19.3 mm
2021/8/4 産卵セット投入(KSK800cc )
2021/12/28 割出→2021/12/28 KSK 90cc
2022/6/1 自力ハッチ
⑤ ♀ 17.3 mm
2021/8/4 産卵セット投入(KSK800cc )
2021/12/28 割出→2021/12/28 KSK 90cc
2022/6/1 自力ハッチ
⑥ ♀ 17.9 mm
2021/8/4 産卵セット投入(KSK800cc )
2021/12/28 割出→2021/12/28 KSK 90cc
2022/6/1 自力ハッチ
7.まとめ
ズボラ飼育を披露してしまいましたが、本種の丈夫さに助けられました。高山種は一見すると飼育が難しそうな印象を持ちますが、本種の場合は18-20℃の温度を維持できる環境があり、産卵セット及び幼虫飼育においてやや多湿な環境を維持・管理することが出来れば非常に簡単に飼育が出来るかと思います。
小さいですがオニクワガタ属の厳つさはしっかりと体現していてカッコ良いですし、小さなプリカで羽化まで持っていけるので、スペースもとりませんので小型種好きで飼育環境が整っている方にはオススメです。