ダールマンツヤクワガタ(Odontolabis dalmanni dalmanni) WD ペア
1.はじめに
今回飼育したのはダールマンツヤクワガタ原名亜種(スマトラ島ベンクール産)です。ダールマンツヤクワガタは亜種、近縁種含めて東南アジア広域に生息していますが、本種♂だけが金色の微毛が生えている独特のルックス。個人的には非常に好きなクワガタです。和名はキンケツヤクワガタとか言われたりします。いやー美しいですね。
OdontolabisなのにLucanusな毛が上翅に生えているんですよ!?凄くないですか!?
…気を取り直して産地情報ですが、原名亜種はスマトラ、カリマンタン(ボルネオ)に生息しており、流通量も多いですが、一方でマレーシア領ボルネオ北部産WDは少ないです。
最後に、本種の産地毎の特徴にある程度違いがあるようです。下記に写真を示しますが、スマトラ産は顎は短く体は太くなり、カリマンタン(ボルネオ)産は顎は伸び細身の体になる傾向があると言われています。
♂は殆ど同じサイズですが、顎の長さと体の太さが違いますね。
♀も同様でカリマンタン産の方が顎が長く、体は細身です。全然違いますよね。
2.種親紹介
♂68mm
野外品はエリトラの金毛が擦れていることも多いです。KUWATAでWDを購入したものです。
大顎は縦に伸びますが伸長しません。本種の長歯の定義とは何なんでしょう。ボルネオ、カリマンタン産の特大個体で長歯型が存在するのでしょうか。大図鑑のはそれに近いものがありますが...
♀49mm
♀は♂とは違い微毛はありません。分かりにくいですが、体色は漆黒というよりも茶色味がありワインレッドな感じです。
3.ペアリング–採卵-幼虫飼育–羽化
①産卵セット(2021/5/5)
幼虫飼育で使用済みのマットをふるいがけし、加水。ダイソーのメガフードコンテナに無加圧で投入。管理温度は18−20°です。ツヤの中では産卵は簡単な部類になります。
②採卵(2021/5/18-7/1)
セットを組んですぐに反応。2週間に1回くらいのペースでマメに採卵し、430ccプリカへ10卵づつ投入。40卵ほど回収して打ち止め。
③孵化
18−20°管理で採卵してから1ヶ月ほどで孵化。
④幼虫飼育(2021/9/18)
初令で430ccプリカに個別管理。使用マットはOne in a millionさんのプロトマットを使用。微粒子ベースで加水すると粘りが出て良い使用感ですね。根食い系の虫に合いそうです。
④幼虫飼育 マット交換 (2022/1/22-)
頭幅16.7mm 体重29.2g 430ccでやや引っ張り過ぎてしまいしたね…3250ccのクリアボトルへ投入。
3本目へ交換。期待感が持てる体重です。他に34.9g の個体もいるので楽しみです(2022/4/26)
⑤ 前蛹
2本目交換時3番手の幼虫が前蛹に(2022/12/30)
1番手の幼虫は最終ボトルの交換タイミングを失敗したようで、最大体重35.8gから前蛹体重19.4gという激しいダイエットをしてくれました…
⑥ 蛹化-羽化
♀は♂よりも3-4か月早く蛹化(2022/9/4)
3番手の♂が蛹化。(撮影時に戻したので分からないのですが)脚が外側に向いてしまっており不全が心配されます。蛹化からオアシスで管理しましたが、蛹室の間隙を作りすぎてしまったような気がします。
うーん顎が短い。
最大体重が1番手(だった)♂が蛹化。頭が持ち上がって蛹化してしまったようでダメそうです…
♀でも2300CCで十分な容量を確保しましたが、羽化時の不全が多発しました。自身の技術力の低さを痛感します。
1番手(だった)♂は案の定、羽化不全。辛いですね~
ちなみに最大体重34.9gまで乗った2番手の幼虫はセミ化してお亡くなりになりました…無念。
3番手の♂はやや腹ボテながら無事羽化してきました。
4.羽化個体紹介
① ♀52.9mm
2021/5/5 セット→6/10 割出
2021/8/18 One in a million 試作品マット 430cc
2022/1/21 One in a million 試作品マット 2300cc 23.3g
2022/9/E 羽化
② ♀53.5 mm
2021/5/5 セット→6/10 割出
2021/8/18 One in a million 試作品マット 430cc
2022/1/21 One in a million 試作品マット 2300cc 24.7g
2022/9/E 羽化
③ ♀53.8 mm
2021/5/5 セット→6/10 割出
2021/8/18 One in a million 試作品マット 430cc
2022/1/21 One in a million 試作品マット 1300cc 21.9g
2022/9/E 羽化
④ ♀55.0 mm
2021/5/5 セット→6/10 割出
2021/8/18 One in a million 試作品マット 430cc
2022/1/21 One in a million 試作品マット 2300cc 24.4g
2022/9/E 羽化
⑤ ♀56.0 mm
2021/5/5 セット→6/10 割出
2021/8/18 One in a million 試作品マット 430cc
2022/1/21 One in a million 試作品マット 2300cc 26.1g
2022/9/E 羽化
⑥ ♀56.1 mm
2021/5/5 セット→6/10 割出
2021/8/18 One in a million 試作品マット 430cc
2022/1/21 One in a million 試作品マット 2300cc 26.7g
2022/9/E 羽化
⑦ ♂ 70.0 mm(腹含まず)
2021/5/5 セット→6/10 割出
2021/8/18 One in a million 試作品マット 430cc
2022/1/21 One in a million 試作品マット 2300cc 21.7g
2022/4/7 One in a million 試作品マット +虫社ビートルマット 継ぎ足し 2300cc 未計測
2022/12/30 前蛹 21.5g
2023/2/M 羽化
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(参考) 最大体重35.8g個体飼育ログ
2021/5/5 セット→6/10 割出
2021/8/18 One in a million 試作品マット 430cc
2022/1/21 One in a million 試作品マット 3250cc 29.2g 頭幅16.7mm
2022/4/6 One in a million 試作品マット +虫社ビートルマット 3250cc 35.8g
2022/12/30 前蛹 19.4g
2023/2/M 羽化不全により死亡
5.まとめ
今回、40卵近く採卵したのですが、結局羽化まで持っていけたのは7頭のみ。自分自身の技術力向上の必要性を突きつけられました。One in a millionさんから試供品としてご提供いただいたマットに助けられて、幼虫飼育中盤まではウキウキだったのに不甲斐なし。試供品マットは、某きのこの廃菌床をベースとした発酵マットですが、前処理がしっかりされているのか、微粒子の仕上がりで保水性があり根食い系クワガタやカブト向きの印象を受けました。現在、原料入手に時間を要しているとのことで、継続使用が出来ていませんが、また使ってみたいところです。
冒頭でも紹介したように、カリマンタンやボルネオ産の方が顎が伸び、細身なのでレコードを目指すのであれば当該産地でやるべきって思いませんか?
ところがレコードの77.8mmって私の記憶が正しければスマトラ産なんです。今回、本種をブリードしてみたところ、3番手の70mmまでしか羽化させることができず、私自身の技術不足を差し置いても、この地獄虫をある程度真面目にやったことがある人しか語れないと思うのですが、このレコード記録って、バケモノだと思います。カリマンタン、ボルネオだったら肉薄出来るのかよって言われてしまうと結果が出ていないので、ぐうの音も出ませんが、スマトラ産は横にめちゃくちゃとられるんですよね。その前提でのレコード77.8mmは凄まじい記録だと思います。2023年5月現在、カリマンタン産をブリードしつつ、スマトラ産の太ましさも好きなので、複数ライン抱えながら今後も頑張ります。
6.参考資料・資材