1.はじめに
今回飼育したのはカンボジア産 パリーオオクワガタ(Dorcus ritsemae khaoyaiensis)になります。種親を知人のMさんからいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。学名の由来のカオヤイ国立公園があるタイ中部 ナコンナヨック産、カンボジア南西部カンポット州Mt.Bokor産が主に流通している産地ですが野外品は最近来ないですね...パリーオオの中では1,2位を争う不人気さは飼育レコード71.3mmと、パリーオオ全亜種の中では南スラウェシ亜種(65.6mm)に次ぐ華奢さによるものでしょうか。
産地のMt.Bokorの諸情報は以下。
・標高1,048mのテーブル型山地
・周囲は標高100m以下の平坦な低地に囲まれ、他の山地からは孤立
・頂上部は南北100kmの台地(エレファント山脈)は海岸まで続き、シャム湾モンスーンの影響を直に受ける
・カンボジアで最も降雨量が多い(平均3,800-5,000mm)この山で雨蔭となり乾季でも海側は結構雨が降ってる感じですかね。
2.種親紹介
♂58-9mmほど (2021年4月羽化) WF4
♀×3 34-5 mmほど (2021年2月羽化) WF4
3♀いただきました。全♀組みます。
ssp.volscens(マレー・スマトラ・ボルネオ亜種)はデカいコクワ感がありますが、本種は全体的に更に細身なので、よりコクワ感が増したようなフォルムです。和なテイストで私は好きになりました。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育
①後食開始
2021年4月に羽化した♂は同年6月頃には後食開始。パリーオオやクルビは羽化後4-5か月でペアリングは可能ですが半年ほど様子をみます。
②ペアリング-産卵セット(2022年1月3日)
3♀とペアリング、産卵セットを組みます。DAISOパン屋さんにボダ木を埋め込んでセット。24-5°で産ませたかったのですがスペースの都合で20°管理とします。
③割出 (2022年3月)
3♀中、2♀が産んでいます。卵は全て材から採取、30卵程とれました。
孵化間もない個体。採卵した卵を含め、2か月ほど養生させたものの、半数近くが孵化せず。詰めてから3-4か月程寝かせたオオヒラタケ菌糸瓶に投入します。温度は一貫して20℃で管理します。
4.蛹化-羽化
①蛹化
蛹体重は7g後半以上で60mm超えてくる感じでした。
②羽化
♀は孵化後6,7か月ほどのスピード羽化。
♂は人工蛹室で羽化させます。
5.羽化個体紹介
① ♂45.2mm
2022/1/3セット→2022/3/19割出
2022/5/8 KBファーム AG 1100cc
2022/10/23 蛹化確認 4.2g
2022/12M 羽化
② ♂57.2mm
2022/1/3セット→2022/3/19割出
2022/5/8 KBファーム AG 1100cc
2022/12/6 蛹化確認 6.6g
2022/12E 羽化
③ ♂58.9mm
2022/1/3セット→2022/3/2 割出
2022/5/8 KBファーム AG 1100cc
2022/10/23 蛹化確認 7.2g
2022/12 羽化
④ ♂61.0mm
2022/1/3セット→2022/3/19 割出
2022/5/8 KBファーム AG 1100cc (劣化のため交換)
2022/6/29 KBファーム AG 800cc 5.9g
2022/10/23 蛹化確認 7.9g
2022/12 羽化
⑤ ♂61.8mm
2022/1/3セット→2022/3/19 割出
2022/5/8 KBファーム AG 1100cc
2022/10/23 蛹化確認 8.1g
2022/11/M 羽化
⑥ ♂62.5mm
2022/1/3セット→2022/3/19 割出
2022/5/8 KBファーム AG 1100cc
2022/10/18 蛹化確認 8.3g
2022/12/M 羽化
⑦ ♂63.3mm
2022/1/3セット→2022/3/19 割出
2022/5/8 月夜野エレメント 800cc
2022/10/18 蛹化確認 8.9g
2022/12/M 羽化
⑧ ♂64.7mm
2022/1/3セット→2022/3/19 割出
2022/5/8 月夜野エレメント 1100cc
2022/10/18 蛹化確認 9.3g
2022/11/12 羽化
⑨ ♂計測不能(66-7mm?)
2022/1/3セット→2022/3/19 割出
2022/5/8 月夜野エレメント 800cc
2022/10/23 蛹化確認 10.9g
2023/1 羽化
⑩ ♀ 33.5mm (頭幅10.1mm)
2022/1/3セット→2022/3/2 割出
2022/5/8 AG 3250cc(5頭多頭)
2022/12/7 自力ハッチ
⑪ ♀ 34.0mm (頭幅10.2mm)
2022/1/3セット→2022/3/2 割出
2022/5/8 AG 3250cc(5頭多頭)
2022/12/7 自力ハッチ
⑫ ♀ 35.1mm (頭幅10.1mm)
2022/1/3セット→2022/3/2 割出
2022/5/8 AG 900cc
2022/12/7 自力ハッチ
⑬♀ 35.7mm (頭幅10.5mm)
2022/1/3セット→2022/3/2 割出
2022/5/8 月夜野エレメント800cc
2022/12 羽化確認
⑭ ♀ 36.5mm (頭幅10.8mm)
2022/1/3セット→2022/3/2 割出
2022/5/8 KBファーム AG 900cc
2022/12 羽化確認
⑮ ♀ 36.6mm (頭幅10.7mm)
2022/1/3セット→2022/3/19 割出
2022/5/8 KBファーム AG 900cc
2022/12 羽化確認
⑯ ♀ 37.9mm (頭幅10.9mm)
2022/1/3セット→2022/3/19 割出
2022/5/8 月夜野エレメント 800cc
2022/12 羽化確認
5.飼育後記
しょっぱい結果になりました。Mさん、ごめんなさい...
他亜種に比べて幼虫初期の成長スピードが遅く、いつまでも小さいままだったのと、同時期が仕事で忙しく交換タイミングを逸しました。こいついつも同じ言い訳してねぇか?
幼虫飼育で使用した菌糸瓶は詰めてから3-4か月くらい経過したやや古いものを使ったのですが、かなり早い段階でさらに劣化進み、それで蛹化スイッチが入った感じです。そんな中でも、蛹体重で10g超えの個体がいたのですが、ボトル底面で蛹室を形成、そのまま蛹化したために大顎が曲がってしまう体たらくを露呈...蛹体重を踏まえると66-7mm?が見れたかと思うと残念です。管理できる範囲でブリードしてナンボですね(n回目…)野外品は入ってこなさそうですし、好きな種類なので今後もサイクルを回していきたいと思います。
6.参考資料・資材