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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

メタリフェルホソアカクワガタ(ペレン島産)WF1 飼育記録まとめ

 

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メタリフェルホソアカクワガタ(ペレン島産)

1.メタリフェルホソアカクワガタについて

色虫の代表格、メタリフェルホソアカクワガタ。体色が金属的な輝きを放つ昆虫は昼間に活動し、その派手な外見は外敵から身を守るための擬態、とよく紹介されています。そんな虫たちを単体で見るとその鮮やかさからほんとかよ?って思いますが、例えばタマムシなどは日光下で枝葉に紛れていたら見つけるのは至難の技です。乱反射して分かりにくくさせているのでしょうな。本種も昼間に活動し外敵の目を逃れながら、低地の花や樹上の茎等を傷つけ樹液を吸う生態のようです。指の先に置くと飛翔行動をすぐに見せることからもブンブン飛び回って出会いを見つけてるんでしょう。1種5亜種が登録されており、生息域は、インドネシアスラウェシ島、バンガイ諸島(ペレン島、バンクル島)、モルッカ諸島(ハルマヘラ島、モロタイ島)、スーラ諸島、サンギール諸島が産地として知られています。世界随一の島嶼国であるインドネシア。前人未踏の無人島はありそうですし、本種は低地から高地まで幅広く生息しているようなので未だに知られていない産地があるとすればロマンがありますね。

日本国内ではfinaeと原名亜種の生体流通量が多く、次点はsangirensisでしょうか(2020年2月にaenommicansが10年ぶりに入荷)。原名亜種は茶褐色で光沢が少なく、別亜種に比べて横に太くなることに加え、ミヤマのような黄色い脚部が特徴的です。今回、ブリードしたfinaeは、本種最大亜種(野外ギネス:100mm、飼育ギネス95.8mm)ですが、原名に比べると細長い個体が多い傾向にあります。ブルータイプと呼ばれる美しい青色になる個体も流通しています。亜種毎の違いもさることながら、個体毎の色彩変異が楽しめるのも人気種たる所以でしょう。他亜種の特徴は、サンギレンシスが比較的小型で光沢が強いくらいしかわかりまへん...

2.種親紹介

種親はアリスト便にてブルータイプを購入(2019年3月末)。人気カラーなので、最後まで競り合って落札、5-6千円くらい。♂は80mm. ♀はフリーサイズ(ノーマルカラー)。

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光の角度によってはパープルに見えます。

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室内灯で見るとこんな感じ。黒味のある青、といった感じでしょうか。

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♀は刻点が多く、判断難しいですが、ノーマルカラーっすね。

3.ペアリング‐産卵セット投入‐幼虫飼育-羽化

購入してすぐにペアリング。大き目のプリンカップにエサ皿を置いて放置します。

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♂が大きいため、♀が見えなくなってしまっていますが早速メートガード。性成熟していると、争いなく本行動が見られるため、ブリード品ペアリングの目安になります。

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3-4日ほど同居させたのち、産卵セットへ。

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産卵セットを組んだのは3月末。25度設定の温室へ投入。スペースがあまり無かったため、泣く泣く小ケースを使用。マットはOYKインセクトの爆産くん特Aマットを強めに握って水が染み出るくらいまで加水したものを使用。壁面に親指で押し込みながら壁を作って、真ん中はフンワリ仕上げ。BE-KUWA73号のモンギローニホソアカの飼育記事も類似の方法でセットを組んでおり、参考になるかと思います。ちなみに材は今回使用していません。

割出は2か月程経過した5月初旬に実施。

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セット組んでから1か月半程度でケース壁面に初令幼虫を数頭確認。25℃設定の温室で管理していたので、孵化までのレスポンスも早かったようです。

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全部で20頭の初令幼虫を回収。爆産とまでは至らなかったものの、まずまずの結果。雌雄判別がこの時点では難しかったため、90ccのプリンカップで養生させ、ある程度雌雄判別出来るくらいになったところで、マット(GLOBALのLBマットを使用)を加水(産卵セットと同じくらいの湿潤度合)して使用。本種含めホソアカはマットの選り好みがかなりあるように思います。某有名低価格マットを使用した別ラインは高カロリー過ぎたのか、全部溶けました…

1か月程の養生を経て6月初旬から♂は1400cc乃至は800cc、♀は500ccへ投入、18-20度管理。途中1回くらいマット交換を考えていましたが、ズボラ飼育が炸裂、1本孵しちゃいました。だって自宅の建設、引っ越しで忙しかったんだもん…

概ね11月初旬頃から羽化が始まりました。かなり強い力で蛹室が作られているようで、ボトル壁面から見える蛹室断面が嫌気発酵しているのか、淡い茶色に変色しています。  

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細長い蛹室からこんにちは。

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若干、顎先等パープル入っているような気もするが...

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ディフューザー使うとこんな感じの色合い。

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羽化ズレもなく♀も羽化してきたのは嬉しいですな。問題なく次世代繋げることができます。

4.羽化個体紹介

20頭の幼虫を回収したうち、無事羽化したのは17頭、♂12頭、♀5頭。

♂に大きく偏ってしまいました...

① ♂87.2mm 今回ラインの最大個体。1400cc、2019年11月初旬羽化。

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②♂85mm 大顎先端が湾曲するタイプ。800cc1本でここまで伸びるポテンシャル高い個体。2019年11月初旬羽化。

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③ ♂80.9mm こちらも800cc1本。ボトル径の小ささが悪影響し羽化時に大顎先端を干渉、真横に曲がってしまった。

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④ ♂80.3mm 大顎の左右で長さに違いある他は問題なし。800ccにて羽化。

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⑤ ♂79.8mm 2019年11月初旬1400ccにて羽化。

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⑥ ♂79.6mm 1400cc バランスが良い。2019年11月下旬羽化。

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⑦ ♂79mm 雌雄判定ミスって500ccに投入してしまい、狭くて大顎が曲がってしまった個体。2019年12月中旬羽化。

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⑧ ♂77.8mm こちらも雌雄判定ミスって500ccに投入されていたものの、完品羽化してくれた。2019年11月中旬羽化。

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⑨ ♂77mm 800cc 2019年11月中旬羽化

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⑩ ♂76.5mm 500cc 2019年12月初旬羽化。光度を落とすと大顎や頭部側縁部はパープルが入ったマジューラカラーに。上翅の緑がかった色彩変化も楽しめる個体。

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①① ♂74.7mm 500ccにて2019年11月下旬羽化個体。

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①② ♀28.8mm 2019年11月初旬羽化

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①③ ♀26.5mm 2019年12月中旬羽化。撮影中にトラブル発生、脚を失っています...

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①④ ♀26.1mm 2019年11月初旬羽化。

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①⑤ ♀26mm 2019年11月中旬羽化。

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(1/17追記)

棚の奥からもう1ペア出てきた。

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①⑥ ♂86mm 11月初旬羽化 1400cc

①⑦ ♀28mm 11月初旬羽化 500cc

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裏面もついでに。

5.まとめ

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上の写真が種親で下がその子供。やっぱり青い体色の形質は受け継がれませんでした。追いがけはしたものの既に♀が他のノーマル♂と交尾していたからか、はたまた隔世遺伝か。他方で、finaeが青くなるのはバンガイ諸島の土質が石灰質を含む土壌によるという説もあるのでマットに苦土石灰を混ぜる実験もしてみたい (アルカリ性に寄るから前世代で使ったマットの土壌ph検証せにゃあかんけど) 。大顎や頭部側縁部がパープル、上翅の一部が青味がかったグリーンのマジョーラカラー個体(個体番号⑩)が出てきた。羽化時にボトル壁面に干渉したかな?

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1400cc1本返しで80後半届くなら、サイズ狙いで2300cc一本返しとかやってみるか。雌雄判定ミスったら泣く... あとは、♂の大顎が非常に長いため蛹室が他種に比べ細長くなるので、10cm弱のボトル径(今回使用した500ccや800cc)は羽化時に大顎が曲がってしまうリスクがあり(個体番号③と⑧)。本種はやはり必然的に1400cc以上じゃないとキツいと思いました。雌雄判定緊張するぜ…