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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

レギウスオオツヤクワガタ CBF2 飼育記録まとめ 

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カメルーン産 レギウスオオツヤクワガタ CB

 1.本種周辺情報

オオツヤクワガタ(Mesotopus)といえば、今回記事で紹介するレギウスオオツヤクワガタ(Mesotopus Regius)とタランドゥスオオツヤクワガタ(Mesotopus tarandus)がブリーダーの間ではよく知られています。分類上では1属1種で混同されていたのですが、2019年にベルギー王立自然史博物館のTierry Bouyer氏がアンゴラコンゴ民主共和国ウガンダルワンダ産のMesotopusは新種”Mesotopus imperator”であると発表しています。(Noteと記載されていて論文ではなくunofficial?)断片的にしか分かりませんでしたがどうもそのように読めます。ゲニタリアの比較検討はされておらず、別種とした根拠が大顎形状の差異比較のようでしたが、単なる地域変異のような気も…Bouyer氏が定義・分類したタランドゥスオオツヤクワガタ(Mesoptopus tarandus)の産地はギニアシエラレオネ、コードジボワール、ガーナ産のラベルのもの。一方で国内で流通しているのはコンゴ産(若しくはコンゴ共和国と混同している?)がほとんど。Bouyer氏の論文には書かれていないけれど、互いに隣接しているのでMesotopus imperatorの産地としてコンゴも含み入れて良いのであれば、日本に流通しているタランのその多くが新種となってしまう?如何せんフランス語なのでいまいち分かりませんでした...URLを貼っておくのでご興味ある方はご参照ください。

https://www.entomoafricana.org/ent%20afr%202019%2024%201%20Bouyer%20Mesotopus%20c.pdf

今回飼育したレギウスは大きく湾曲する大顎をもつタランとは異なり、まっすぐ伸びる大顎が特徴的ですよね。顎がストレートな分、体長を稼ぎやすく、2019年度のBE-KUWAギネスでは台湾のブリーダーの方による96.4mmというモンスターサイズが登録されています。

本種の生活史に関する詳細情報が殆どないものの、カワラ材による産卵・幼虫飼育方法が確立されており、多くのブリーダーの手によって育てられています。

2.種親紹介

種親は東京江戸川にあるクワガタショップ「モンスター」さんのセールで2018年12月に購入したもの。5-6,000円くらいだったと記憶。このショップさんの値下げの潔さには毎回感服しています…

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♂75mm CB 羽化時期は2018年6月。顎がスラっとのびてカッコよろしい。触れるとMesotopus独特の威嚇振動をしますね。ブーンブーンと音がするのは驚きです。この振動は性成熟の目安にもなります。羽化直後は全く振動しません。わかりやすくて良いですね。

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♀48mm CB こちらも羽化時期は2018年6月。♀はタランもレギウスも全く区別付きません…f:id:kohya0727tj:20200203145836j:plain

妖しい雰囲気を醸し出すクワガタです。即ブリなので購入してすぐにペアリング。

3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫管理ー羽化

①ペアリング(2018年12月下旬)

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交尾欲の強い種類なので性成熟を迎えていればペアリングは容易です。このときは4時間以上メートガードして一向に挿入しませんでしたが…目視で確認しますが、メス殺しは心配なさそうな感じですね。

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1週間程クリアスライダー小にて同居していただきます。写真撮影するだけで威嚇振動してきます。ちなみにこの時は冬場でしたので、25度設定の温室で管理しています。

②産卵セット(2019年1月初旬)

セットは床材を敷いたゴバエシャッターにカワラ材を転がしたもの。写真を見返していると導入孔を開けていますね。産卵意欲があれば勝手に齧るので最近は何も手を加えていません...皮もそのまんま。f:id:kohya0727tj:20200204094659j:plain

使用材はカワラ材。芯が残ったオオクワ向きの硬めの材が多い印象。

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すぐに穿孔しました。ここでケース内をウロウロしている個体が居る場合は性未成熟、温度・湿度が高い乃至は低い等、産卵に適さない要因が潜んでいるので対策を練る必要があります。

③割出(2019年2月初旬)

セットからちょうど1か月が経過したため割出。

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カワラ材をひっくり返して皮を剥ぐと産卵スペースを作っているメスが観察できました。

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Mesotopus属はメスが子守をすると言いますが、まさにそんな感じで、幼虫に寄り添っています。材を削り、フレーク状木部とフレークの間部分に産卵しているようですね。

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殻が見つかりました。青味がかった独特な卵の色です。

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フレークを全て取り除くとこんな感じ。綺麗に穿孔していますね。芸術作品です。割ってみて分かりましたが、水分少なめです。水分が多すぎるとカビが発生して卵が全滅、ということがありますが、経験上、植菌霊芝材等はそんな事例が多いように感じているので、従って、霊芝を使うときは穿孔してから1週間くらいで採卵しちゃいます。今回はカワラ材なので放置しました。

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フレークの掻き出しは離乳食用スプーンを使います。先端がシリコン状になっているので、卵や幼虫を優しく掬えてと便利なんですよね。

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結局、13頭回収できました。平均的な回収数ではないでしょうか。90cc程度の容器で2-3週間養生させてから800ccボトルへ投入します。

④幼虫管理(2019年3月)

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孵化後間もない個体ばかりでしたので、割りカスをミキサーにかけ、90CC程度のケースをひとまとめにして100均で購入したプラケースに入れ、25℃設定の温室にて養生していました。

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13頭中全頭の生存を確認。

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800CCのカワラ菌糸ボトルへ投入します。月夜野きのこ園さんのカワラ菌糸ブロックの手詰め。タランドゥス・レギウスは比較的菌糸の活動が安定したものを好むものと判断、予め3か月寝かしておきました。2か月程管理したのち、オスは2300cc、メスは1400ccへ次回投入予定です。管理温度は20度。

⑤2回目交換(オスは3回目も含む)

プライベートでバタバタしたため写真を撮り忘れちゃっていましたが、2回、場合によっては3回菌糸交換を実施。だけれども全然大きくなりません。最大でも28g。微粒子で水分が多いため劣化が早く、口に合わなかったようです。菌糸の活動を安定させるために一定時間置いておくのであれば、劣化スピードを緩めるために粒子が荒いタイプを選択しておくべきだったかな。

⑥蛹化-羽化(2019年7月-11月下旬)

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劣化したままで蛹室を作ってしまうと羽化不全が続出、メスは比較的強いのですがオスが結構★になってしまいました。BE-KUWAギネス号が出るまでは管理温度が低すぎを疑っていましたが、ギネスブリーダー曰く15-18度!の低温管理していた旨の記載があり除外。菌糸劣化によるものかなと思っています。

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蛹化時の劣化が確認次第、間に合ったオスはきちんと羽化してくれたので、人工蛹室管理にすべきでした…仕事、引っ越しで忙しかったんだ…許せ… 

4.羽化個体紹介

①♂75mmm 2019年12月下旬羽化

2019年3月 800cc  (月夜野きのこ園 カワラ)

2019年5月 2300cc (月夜野きのこ園カワラ+粗粒子オガ)20g

2019年7月 2300cc (月夜野きのこ園カワラ)28g ちっさ..... f:id:kohya0727tj:20200206091114j:image

親と同サイズなんだけど、短歯気味でレギウスの良さが消されちゃってますな…。

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 ラグジュアリー成金っぽいなクワガタ。

② ♂69mm 2019年11月初旬羽化

2019年3月 800cc  (月夜野きのこ園 カワラ)

2019年5月 1400cc (月夜野きのこ園カワラ+粗粒子オガ)18g

2019年7月 1400cc (月夜野きのこ園カワラ)

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蛍光灯直下ではわかりにくいですが、脚部先端が赤味がかっています。眼も赤い。上翅に皺が入っていますが、翅パカまでには至らず何とか踏みとどまってくれました。太陽光下で撮影したら真っ赤やろうな。あの撮影方法、詐欺っぽい感じがして嫌なんすよ。赤くなるのは嬉しくなる大いなる矛盾…

③♀48mm 2019年9月羽化

2019年3月 800cc  (月夜野きのこ園 カワラ)

2019年5月 1400cc (月夜野きのこ園カワラ+粗粒子オガ)13g

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 ④♀45mm 2019年9月羽化

2019年3月 800cc  (月夜野きのこ園 カワラ)

2019年5月 1400cc (グローバル WISH-K)4g 体重の軽さから★になるかな?と思いましたが、ちゃんと羽化してくれたようです。

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⑤♀49mm 2019年9月羽化

2019年3月 800cc  (月夜野きのこ園 カワラ)

2019年5月 1400cc (グローバル WISH-K)16g

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⑥♀52mm 2019年9月羽化

2019年3月 800cc  (月夜野きのこ園 カワラ)

2019年5月 1400cc (グローバル WISH-K)16g 前胸背板は凹んでいますが当代一のビッグママ。

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以上です。ショボショボ個体のオンパレードでお目汚し失礼致しました…

5.まとめ

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Mesotous属はもうしばらくええかなと。ここまで長ったらしく書いといて結論それかよ、と思われるかもしれませんが…ブルブル振動するしとっても可愛いやつなんですが、冒頭に書いたように産地詳細が良く分からない、生物学的にきちんと分類されていない(自分で理解できない)等、ルーツが不明確な種はブリードするモチベーションを持続するのが辛いところですね。ごちゃごちゃ言いましたが、ブリードなんて自己満足の世界でしかないのですけれども。