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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

プラティオドンネブトクワガタ/レオポルディ(インドネシア パプア州 ナビレ県産 )飼育記録まとめ

 

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ラティオドンネブトクワガタ レオポルディ

1.はじめに

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ラティオドンネブトクワガタ(Aegus platyodon)はモルッカ諸島、パプア・ニューギニアに6亜種が生息している大型のネブトクワガタです。大顎基部の突起が特徴的で、和名はオノツキネブトクワガタですね。懐かしい…。今回飼育するのはパプアニューギニア島西部やモルッカ諸島のミソール島などに生息している亜種、レオポルディです。多産且つブリードも簡単なので累代品の入手は容易です。野外の個体数は多そうなのですが、WD品はお値段張るんですよね。洞深くに潜む本種を鉈か何かで生木を割って採集しているような記載を本で読んだことがありますが、採り子がめんどくさがって数が集まらないのでしょうか。同地には本種の他に潜洞性の強い売れそうな種類のクワガタも居ませんし。自分が採り子だったらパプキンとか採って売った方が楽そうだもの。  真面目な話、パプア州インドネシアからの独立を目指す武装勢力もいるようですし、治安の悪さもある?かもしれませんね。そんな状況とはいえ累代品の国内入手が可能なことに感謝です。

Aegus属は大学生だった頃に本土ネブトを飼育したことはありました。大学の裏手の山にたくさん採れる場所があったんだよなぁ…しかし、WD♀から卵を捻りだすような飼育技術や環境がなく、全く産まずに苦い思い出に...ネブト=難しいという印象を持ったまま、これまで手を出さずにきていました。最近になって、いよいよ飼育環境が整ってきたのと、本種自体、幼少期のころから独特なフォルムに魅力は感じていたことや、飼育も容易という話を聞いていたので、苦手意識克服のよいリハビリになるのではないかと思いやってみることにした次第です。

2.種親紹介

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オークションで購入。ご厚意で♀をおまけしていただきトリオになったのですが、私の管理が甘くセット前に落ちてしまい、結局ペアでの挑戦です。雌雄は別系統なので次世代はCBとなります。♂51mm、♀28-9mmほど。

いやあ、ネブトで50mmオーバーとか圧巻のサイズですよ、20mmもないような小さい国産ネブトしか触ったことなかったので。大顎基部にある星型の突起は本種のトレードマーク(otaniiloebleiは除く)ですが、光の当たり方によっては漆黒のエリトラが青みを帯びるんですよね。この特徴が個人的には大好きで見とれてしまいます。 

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その他の推しポイントは、このオレンジ色の体毛(下唇ひげでええんかな?)です。この存在感はクワガタの中ではかなり異質ではないでしょうか。♂程の立派なものはありませんが、♀にもそれらしきものが見えますね。

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3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化

①ペアリング(2020年2月6日)

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既に後食も始まっており、即ブリの状態だったのですぐにペアリング。クリアスライダーに3-4日ほど同居。交尾の様子は確認出来ず。

②産卵セット(2020年2月11日) 

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Uマットと赤枯れを半々くらいにブレンドし、加水したものを中ケースへ投入。あまり固く詰めずにケース壁面回りだけ指圧して真ん中はふんわり。24-5まで加温してセット。

③幼虫確認(2020年3月18日)

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ケース壁面に初令幼虫を確認。大きさからして投入してすぐに産卵行動したご様子。Aegus属は自分にとって鬼門種だったので幼虫とれただけでも素直に嬉しい。

④再セット(2020年4月10日)

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追い掛けのうえ、Uマットを詰めた1400ボトルへ投入。後日こちらからは幼虫が3-4頭回収できています。

⑤割出-幼虫飼育(2020年5月3日-)

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水苔をどけると表面にまで幼虫が這い出ている状態。少し放置しすぎてしまいました。28頭回収、そのほとんどが既に3令まで加齢しています。Uマットを1400と800ボトルに手詰めし投入。スコップの面で押す程度の圧力。ここからは温度をぐっと下げて18-20℃で管理。本種が入っているボトルを持つと振動か発音しているのかブブブブブという音がするのは面白かったですね。周囲の仲間に危険を知らせるのでしょうかね。割出が遅くなってしまい、結局羽化まで1本返し。

⑥繭確認-蛹化(2020年8月28日-)

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繭が出てきました。ラグビーボールのような楕円の繭を形成しています。

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雌雄で繭の体積が大きく異なります。

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前蛹で眉割してしまった個体は人工蛹室へ投入、どうなるか心配でしたがきちんと蛹化してくれました。蛹化したてで非常に美しい…

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蛹体重7gと、50mmmオーバーの期待の持てる個体も確認できました。

⑥羽化(2020年10月20日-)

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人工蛹室でもちゃんと羽化してくれました。ゴツくて格好良いですね。

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羽化ズレの心配もなさそうです。
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40mmを下回る個体は出ず。
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青味がかっていて綺麗です。

4.羽化個体紹介

① ♂ 52.1mm 

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次回の種親候補です。横に太い個体。

2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1400

2020年10月23日蛹化確認(7g)

2020年11月中旬羽化

② ♂ 50.5mm 

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前胸背板にディンプルがありますが、均整がとれていて①の個体よりカッコいい気が...

2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1300

2020年9月2日蛹化確認

2020年10月初旬-中旬羽化

③ ♂ 47.2mm 

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2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1300

2020年10月23日羽化確認

④ ♂ 46.6mm 

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2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1300

2020年10月23日羽化確認 

⑤ ♂ 44.0mm 

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2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1300

2020年8月28日蛹確認

2020年10月23日羽化確認 

⑥ ♂ 43.3mm 

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2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1400

2020年10月23日羽化確認 

⑦ ♂ 42.8mm

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2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1400

2020年10月23日羽化確認

⑧ ♂ 41mm

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2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1400

2020年10月25日自力ハッチ

⑨ ♂ 50.0mm

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まだ赤いので少し縮むかも?羽パカが残念。乾燥要注意ですね。

2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1400

2020年12月10日羽化確認

(後続割出組)

♂ 50.4mm  

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2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1400

2020年8月28日Uマット1400(9g)

2021年2月3日掘出

 

♂ 42.7mm

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2020年3月20日 セット

2020年8月28日Uマット(廃)1400(5g)

2021年2月3日掘出

 

⑩-②② ♀27mm-30.5mm

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メスは最大個体(30.5mm)のみを掲載。

2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット800

2020年10月23日羽化確認

(参考記録)

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管理中に落ちてしまった最大個体。53.7mm

2020年2月11日 セット

2020年5月2日割出→Uマット1400

2020年10月23日蛹化確認(7g)

2020年11月11日羽化(人工蛹室羽化も不全)

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親の51mmと並べて撮影。2-3mm違うだけで数字以上の迫力を感じます。

5.まとめ

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残念ながら最大個体は落ちてしまったものの、完品50mm台をとりあえず2頭羽化させることが出来ました。今回の結果が出せたのは、本種の飼育人口が比較的多く、ひとえに諸兄姉の飼育記録が数多く公開されており、それらを大いに参考にすることができたからにほかなりません。この場を借りて御礼申し上げます。Aegus属復帰の良いリハビリになりました...。私自身が工夫した点が少なかったので、次回サイクルは、自分なりに色々と試行錯誤しながらブリードをして55mmを目標としたいと思います。今回、三齢初期まで24-5℃管理で引っ張ってしまったからか、セットから約10か月程で早期羽化してしまっています。もう少し早い段階で温度を落とし個別管理すべきだったと反省。加えて、1本返しにしてしまったことで、終盤マットが劣化してしまった印象でした。適切なタイミングで割出をして、せめて2本返しくらいはしたいところですね。飼育は簡単でカッコいい個体が拝めるのでプラティオドン、おススメです!