1.はじめに
今回の飼育記事はタイワンミヤマクワガタ(Lucanus formosanus)です。本種はヒマラヤ近辺からベトナム南部-台湾・奄美大島まで広く分布するラミニフェルミヤマグループに属します。ミヤマ自体、耳状突起が立体的でそこが魅力の一つですが、本グループはその突起が他グループに比べて小さいものの、突起縁部が上方向に上がっているのが特徴的です。それに加えて内歯が大顎の根元に乗っかって生えたりします。真上から見るだけだと、このグループの良さが中々伝わらない感じがするので、実際に手に取って見てみると魅力が伝わるかと思います。ラミニフェルグループの中でも本種はWD・ブリード品ともにお値段もお手頃でオススメです。現地では1500M程までの標高に生息、5月くらいから発生しているようです。亜種分けはされていないものの、台湾北部、中部、南部で(亜種分けしても良いほど)体躯や形状に違いがあり、今回飼育したのは顎が伸び体長を稼ぎやすい台湾北部産(新北市烏来区福山)です。
2.種親紹介
♂61mm
本種の最大サイズ(野外レコード85mm、飼育レコードは79.8mm)からするとやや小ぶりな個体ですが、一応大歯型です。野外レコードサイズの方が飼育レコードサイズよりもまだまだ大きいので、レコード獲得狙い目かもしれないですね。
♀35mm
今回は結構黒っぽいですが、やや栗色がかった個体も見られます。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①ペアリング(2019年7月30日)
WDなので交尾済みかと思いますが追い掛けします。
②産卵セット(2019年8月26日)
引っ越しでゴタゴタしておりペアリングから1か月にセット。
園芸用の黒土と産一を1:1でブレンド。この辺りは感覚なので、色々と工夫してみてください。
握って崩れない程度まで加水。足場用の芯のある堅い材(カワラ材の割カスだったかな?)を埋め込み。
水苔をしき同居させます。
③幼虫確認・割出(2019年10月-)
セットから2か月後の2019年10月28日に幼虫を確認
割出は年を越して2020年1月10日に実施。
♀の産卵の足場用に材を埋め込んでいたのですが、その中にも複数入っていました。
10頭程度得ることが出来ました。
④幼虫飼育(2020年1月-)
1本目はRTN Uマット+富山のクワ貧 カワラマット+割カス。飼育温度は18-20℃管理。
2020年6月20日 2本目へ交換。
2020年11月12日蛹化を確認。同条件で飼育していても同ラインでも1年1化と2年1化で分かれますね。
⑤蛹化-羽化(2020年11月27日-)
ミヤマは凹凸があって映えるサナギ写真が撮れますね。
2021年1月14日羽化。前蛹から3-4か月かかりますね。長いです。
羽化直後の個体。70mmに達していませんが格好良いですね。
4.羽化個体紹介
① ♂ 62.8mm
2019/8/26 セット→2020/1/10 割出
2020/1/19 Uマット+カワラマット+割カス1400cc
2020/8/2 DOS生オガ+割カス(ボトル1本目)1400cc 12g
2021/8/21 蛹確認
2021/10/M 羽化確認
② ♂ 66.0mm
2019/8/26 セット→2020/1/10 割出
2020/1/27 Uマット+カワラマット+割カス800cc
2020/8/2 DOS生オガ+割カス(ボトル1本目)1500cc 12g
2020/11/27 蛹化確認
2021/1/14 羽化確認
③ ♂ 68.0mm
2019/8/26 セット→2020/1/10 割出
2020/1/27 Uマット+カワラマット+割カス1400cc
2020/6/19 DOS生オガ+AG割カス+割カス(ボトル1本目)2200cc 14g
2020/11/27 蛹化確認
2021/1/14 羽化確認
④ ♂ 69.5mm
2019/8/26 セット→2020/1/10 割出
2020/1/27 Uマット+カワラマット+割カス800cc
2020/6/19 DOS生オガ+AG割カス+割カス(ボトル1本目)1400cc 12g
2021/8/21 羽化確認
⑤ ♂ 70.3mm
2019/8/26 セット→2020/1/10 割出
2020/1/27 Uマット+カワラマット+割カス800cc
2020/6/19 DOS生オガ+AG割カス+割カス(ボトル1本目)1500cc 12g
2021/8/21 羽化確認
⑥ ♂ 71.2mm
2019/8/26 セット→2020/1/10 割出
2020/1/27 Uマット+カワラマット+割カス800cc
2020/8/2 DOS生オガ+割カス(ボトル1本目)1400cc 12g
2021/1/E 羽化確認
⑦ ♂ 73.6mm
2019/8/26 セット→2020/1/10 割出
2020/1/27 Uマット+カワラマット+割カス800cc
2020/8/2 DOS生オガ+AG割カス+割カス(ボトル1本目)1400cc 14g
2021/8/21 蛹化確認
2021/12/M 羽化確認
美しい裏側。黄色が鮮やか。♀は真っ黒です。
⑧ ♀ 40.3mm
2019/8/26 セット→2020/1/10 割出
2020/1/19 Uマット+カワラマット+割カス800cc
2020/6/19 DOS生オガ+AG割カス+割カス(ボトル1本目)800cc 8g
2021/8/21 羽化確認
他2頭♀幼虫(2022.2現在)
5.まとめ
今回のサイクルで最大は73mmUPでしたが、この辺りからより一層厳つい雰囲気が出てきて見応えがありました。同ラインでも1年1化もいれば2年1化の個体も居るのと、♀はデフォルト2年1化で、このブログを書いている2022年2月時点で前蛹の♀も居るので3年1化のパターンもありそうです…前蛹から羽化までも長いですし、気長にやる虫ですね。幼虫飼育は様々な割カスを使ってフザけた飼育をしていたので、真面目にやればもうちょいサイズも伸びそうです。上述していますが、写真と実物のギャップが凄い虫なので、是非実物を手にしてみてください。その格好良さに惚れ込む方も多いはず。お勧めですよ、タイワンミヤマクワガタ。