1.はじめに
今回の飼育記録はモーニッケノコギリクワガタ(Prosopocoilus mohnikei mohnikei)です。マレー半島、ボルネオ、スマトラ、ジャワ、バリ島に生息する原名亜種(今回飼育種)とパラワン島に生息する(ssp.akayamai)、ミャンマー南東部に生息する(ssp.pseudospineus)がいます。地理的に原名とパラワン亜種が大顎形状が似ていますが、ミャンマー亜種は近縁のスピネウスノコギリクワガタ(Prosopocoilus spineus)寄りの顔をしています。
2.種親紹介
♂43mm
インドネシアWD便を購入。パッと見た感じはカラフルで派手ですが、じっくり見るとつや消し感がある渋い虫です。頭部のV字の窪みや赤褐色の大顎が特徴的です。
♀21mm
♀はカラフルな♂とは対照的に漆黒なんですよね。頭部、胸部に点刻が無数にあり、エリトラはツヤがあります。右前足のフセツが力強さに欠けるので少し心配です…
3.産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①産卵セット(2020年7月3日-)
文献や諸兄姉のブログ・HPを読み漁ると本種の産卵セットのキーワードは材産み+乾燥です。持ったらパラパラ落ちるくらい乾燥させたマット(使用済みグローバルLBマット)に無加水のホダ木を埋め込んだものでセット。
セットしてから僅か1か月間程度で材の表面が無数に齧られています。
材産種であることは間違いなさそうです。産卵中の♀
②割出(2020年10月13日)
極小の幼虫を発見。とても小さいので取りこぼしがありそうですね。
卵も発見。写真を撮り忘れましたが、孵化してすぐに落ちたような幼虫の死骸が散見されました。無数に齧られている割には孵化率が悪い感じです。もしくは♀が食べているのかもしれません。
結局3幼虫5卵を回収。
割出から2か月後の2020年12月18日にプリカ管理⇒個別飼育へ。
割カスから1頭追加し、8頭体制です。
③幼虫飼育(2020年12月18日-)
虫吉さんの無添加マットを使用。800ccでの1本返しを想定しています。やや乾燥をキープ、管理温度は20℃程度です。
④蛹化-羽化(2022年1月12日-)
結構時間掛かりました。幼虫回収から15か月かけて蛹化。羽化まで合算すると16-17か月はかかる感じですね。長い…
8頭の内、4頭は前蛹で★に。確証はないですが菌床系のマットは合っていない感じがします。
♀は9-10か月で羽化。♂とは壮大に羽化ズレしてしまっています。
蛹室から顔を出す♂ 良い色してます。
4.羽化個体紹介
① ♂50.5mm
2020/7/3セット → 2020/10/13 割出
2020/12/18 虫吉マット800
2022/1/11 割出
② ♂46.7mm
2020/7/3セット → 2020/12/18 割出
2020/12/18 虫吉マット800
2022/1/12 蛹化確認 2.4g
2022/1/E 羽化
③ ♀24.0mm
2020/7/3セット → 2020/10/13 割出
2020/12/18 虫吉マット800
2022/1/11 割出(自力ハッチ)
④ ♀25.8mm
2020/7/3セット → 2020/10/13 割出
2020/12/18 虫吉マット800
2021/6/27 羽化確認
5.まとめ
モーニッケがWD流通品多いのに累代進んだ生体の流通を殆ど見ない理由が分かりましたよ…こんなに小さいのに羽化までが長い…♂は1年半近くかかり、♀はわずか1年弱で羽化してます。羽化ズレ甚だしいのでそりゃあ累代きついですよ。幼虫も十分に採れませんでしたし、ややクセがあるような感じもしました。♀が再度穿って卵や初令幼虫を食べていたような気もしたので、フタマタみたいに材をたくさん入れて定期的に交換→割出をした方が良いのかもしれません。
野外品ペアが来たらアウトラインやるかなぁ…飼育レコードは56.5mm、野外レコードは59.2mm…数抱えて挑めばなんとかなりそうな感じがします(毎回言ってますが毎回なんとかなってません。生意気言ってすいません)が、不滅の記録になりつつあるのは、繰り返しになりますけれども、たくさん採れない×幼虫飼育期間長くてズレる×採れても前蛹で落ちる、の3重苦でレコード出すのが実は難易度高いのかもしれません。やる?やらない?やる?…即ブリ♂お持ちの奇特な方がいらっしゃれば是非販売してください。とりあえず次回インドネシアWD便見て考えようかな…。