1.はじめに
今回はスジブトヒラタクワガタ(Dorcus metacostatus)のブリード記録になります。今は廃盤になっている小学館の「クワガタムシ」で紹介されている大歯個体に惹かれたんですよね。
出典:"小学館 の学習百科図鑑 「クワガタムシ」P38"より
顎先が摩耗するまで長生きした野外個体ですが、当時、未就学児の私からすると大型化すると顎先が丸くなる異形のクワガタという認識(ちゃんと解説されているのですけどね…)で、恋焦がれていたことを今でも思い出します。そんな訳で非常に思い入れのある種類なんですよね。ブリードに気合いが入るというものです。ただし本種は産卵の気難しさ、60mm後半以上の大型個体をコンスタントに出すのが難しい一方で、飼育レコードは異次元サイズの74.6mm(2022年現在)というドMブリーダーにはピッタリな種類かと思います....とりあえず65mmを目標に頑張ってみることにしましょう。
私のよもやま話はさておき、本種は奄美群島(奄美大島、加計呂麻島、与路島、請島、徳之島)に生息しています。早い時代に周囲から孤立、その後さらに沖縄諸島とも分離した歴史から、近縁種は台湾に生息するミヤマヒラタクワガタにほかになく、Dorcus属で雌雄ともにエリトラに明確な条(スジ)ができる世界的に見ても特異なクワガタとして知られています。アマミヒラタやトクノシマヒラタなどの大型種が発生する前の6-7月が発生ピークとなり、幼虫は土化した朽木や切株下部から得られることが多いようです。
2.種親紹介
♂57mm 笠利町産 CB
♀37mm 笠利町産 F4
♂はオークション購入、♀は自己ブリード品を掛け合わせます。♀の陰影は息を呑むほどの美しさです…
3.産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①産卵セット(2020年1月21日-)
本種は産卵にやや難ありで、分解が進んだマットで産むとか材を入れると良いとか聞きますが、今回は購入してから時間が経った川口商会のクワガタマットを中ケースに詰めセット(左側)します。24-5℃設定の温室にて管理します。ちなみに右はインラインのF5世代セット(♀しかとれませんでした)
②卵・幼虫確認(2020年1月25日・2020年2月18日)
セットして4日で産卵を確認。
卵を確認してから約1か月後には初令幼虫も見えてきました。
③割出(2020年4月5日-)
やや割出が遅れてしまいしたが、結構取れましたね。30近くでしょうか。サイズがバラバラなのでダラダラ産んだようです。
④幼虫飼育(2020年4月23日-)
幼虫は菌糸-マット飼育、オールマット飼育の2パターン、管理温度は18-20°で臨みます。
1本目交換で13g...微妙です
マット飼育の方が調子がよさそうですが、発酵浅めのマットはあまり合っていない印象でした。
⑤蛹化-羽化(2020年10月24日-)
4.羽化個体紹介
① ♂ 51.0mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/27 バンブーヒラタケ800
2020/7/26 DOS 生オガ1400 13g
2020/11/M 羽化確認
② ♂ 53.0mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/27 バンブーヒラタケ800
2020/8/8 グローバルLBマット500 9g
2020/11/M 羽化確認
③ ♂ 55.5mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/27 バンブーヒラタケ800
2020/7/26 DOS生オガ800 9g
2021/1/M 羽化確認
④ ♂ 56.3mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/23 DOS生オガ800
2020/8/7 DOS生オガ800 12g
2021/1/M 羽化確認
⑤ ♂ 57.0mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/23 DOS生オガ800
2020/7/26 DOS生オガ800 12g
2020/10/23 DOS生オガ800 15g
2021/2/M 羽化確認
⑥ ♂ 58.1mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/23 DOS生オガ800cc
2020/7/26 DOS生オガ800cc 10g
2020/10/25 DOS生オガ800cc 16g
2021/2/M 羽化確認
⑦ ♂ 58.7mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/5 DOS生オガ800cc
2020/7/18 DOS生オガ800cc 13g
2020/10/10 DOS生オガ800cc 14g
2021/2/M 羽化確認
⑧ ♂ 59.5mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/23 DOS生オガ800cc
2020/7/26 DOS生オガ800cc 14g
2020/10/25 DOS生オガ800cc 16g
2021/2/M 羽化確認
⑨ ♂ 59.7mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/26 バンブーヒラタケ 800cc
2020/8/8 グローバルLBマット800cc 11g
2021/2/M 羽化確認
⑩ ♂ 60.1mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/23 DOS生オガ800
2020/8/7 DOS生オガ1300 15g
2021/3/M 羽化確認
⑪ ♂ 62.0mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/23 DOS生オガ800
2020/8/7 DOS生オガ800 14g
2021/3/M 羽化確認
番外編♂(WF1) 63.4mm
2020/8/7 セット→2020/9/30 割出
2020/9/30 KBファーム AG500
2020/12/31 DOS3次発酵マット 1300 15g
2021/7/M 羽化確認
⑫ ♀ 42.7mm
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/27 バンブーヒラタケ800
2020/8/7 DOS生オガ500 9g
2021/1/M 羽化確認
⑬ ♀ 40.5mm
画像割愛
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/26 バンブーヒラタケ800
2020/8/8 LBマット500 8g
2021/1/M 羽化確認
⑭ ♀ 41.1mm
画像割愛
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/23 DOS生オガ800
2020/8/7 DOS生オガ800 7g
2021/1/M 羽化確認
⑮ ♀ 37.0mm
画像割愛
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/23 DOS生オガ800
2020/8/7 DOS生オガ500 7g
2021/1/M 羽化確認
⑯ ♀ 42.6mm
画像割愛
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/26 バンブーヒラタケ800cc
2020/7/26 DOS生オガ500 9g
2021/1/M 羽化確認
⑰ ♀ 41.7mm
画像割愛
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/26 バンブーヒラタケ800cc
2020/7/26 DOS生オガ500 8g
2021/1/M 羽化確認
⑱ ♀ 41.4mm
画像割愛
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/26 バンブーヒラタケ800cc
2020/8/7 DOS生オガ500 8g
2021/1/M 羽化確認
⑲♀ 41.1mm
画像割愛
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/26 バンブーヒラタケ800cc
2020/8/7 グローバルLBマット500 7g
2021/1/M 羽化確認
⑳♀ 41.3mm
画像割愛
2020/1/21 セット→2020/4/5 割出
2020/4/26 DOS生オガ800cc
2020/8/7 DOS生オガ500cc 9g
2021/1/M 羽化確認
5.まとめ
65mm越えを狙ってのブリードでしたが、最大個体は情けないことに目標未達の62mmでございました。別ラインでもうちょい良いサイズが出たので参考画像として載せました…採卵はうまくいったので、やはり分解が進んだマットの方がより産むような気がします。カブトマットでも良いくらいかなと。組んだ時期は1月で眠そうだったので、簡易温室で起こし十分に餌を食べさせてからのペアリング、セットを組んだこともポイントだったかと思われます。ただ幼虫飼育のパラメーターがまだ全然つかめていなくて、少なくとも今回の飼育パターンは合っていなかったですね。サイクルを回して色々と試行錯誤しながら勘所を掴んでいきたいところです。こうしたらダメだよ、な反面教師的記事になりましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。