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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

パハンホソアカクワガタ(タイ チェンマイ県ドーイサケット産)WF1 飼育記録まとめ

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パハンホソアカクワガタ タイ チェンマイ県 ドーイサケット郡産 WD ♂


1.はじめに

パハンホソアカクワガタ。原名亜種はマレー半島に生息するCyclommatus pahangensis pahangensis (大陸系のホソアカなので、マレー半島の中でもマレーシアなどではなくてミャンマー南部辺りにいそうなイメージ…)ですが、今回はタイ北部やミャンマー北部などに生息する亜種(Cyclommatus pahangensis chiangmaiensis)の飼育記録になります。学名のchiangmaiensisは、タイ王国北部に位置するチェンマイ県から取ったもので、今回ペアも同県ドーイサケット郡産です。

チェンマイバンコクと同じように熱帯性気候帯ですが、盆地のため寒暖差が激しく、猛暑期の4月には40度に逹する一方で、乾季の12−1月は15度を下回ることがあります。意外と降雨量が少なく、東京の年間平均降水量が約1500mmに対し当地は1000mm程で比較的乾燥した地域です。本種の発生時期は雨季(5−10月頃)と重なるので、乾季の低温期から気温が上がる頃に羽化スイッチが入り、雨季のタイミングで発生、雨季が終わる頃には昇天するような生活史なのでしょう。この美しいホソアカクワガタを末長く累代出来るよう頑張りたいと思います。

2.種親紹介

種親は2019年6月中旬にlittle storyさんでペアを購入。送料込みで1諭吉程だったかと。

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大顎はバーガンディと鶯色の美しいグラデーション。

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クリーム色の上翅は透明感があるので活動開始すぐの個体と思われます。死期が近づくと黒い斑点が出てくる(↑写真右側参照)ので、本種含め上翅の薄い種類を購入前によく観察することをおすすめします。

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体長は35mmほどの大歯個体。

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♀は20mm台前半です。爪のかかりもよく申し分のないコンディションです。  

3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化

①ペアリング-セット投入(2019年6月中旬〜)

小型種でメス殺しの心配もないので同居させます。フォーテックの産卵1番を握って水が滲み出るか出ないかくらいまで加水したマットを中ケースに壁面を作るように詰め、20−22度で管理します。

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②割出(2019年10月中旬〜)

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16頭回収。♀の状態が良く、もう少し欲しかったので1400のボトルにバクテリア材を入れ再セット。幼虫は初齢で割出と溶ける話を良く聞きますのでしっかり加齢させることがポイントかと思います。

③幼虫飼育

500ccのボトルにLBマットを詰めて羽化まで持っていく予定。軽く握って水が滲み出るくらいまで加水、堅く詰めすぎると嫌気発酵してしまうので、詰めてから2−3日くらい様子を見てから投入しています。

④羽化(2019年12月-3月中旬)

1月中旬頃から蛹化が始まり、3月頃には自力ハッチしてくる個体がちらほら。

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ボトル底部に蛹室を作る個体もいれば、ボトル中央部分で羽化する個体もいます。タランドゥスホソアカに比べれば状況が良く分かります。(彼らは全く分からなさすぎてヤキモキさせられます…)

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3月になると自力ハッチする個体も。穴から頭部だけ出してじっとしている個体。

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 自力ハッチした雌雄。

4.羽化個体

ざっと羽化個体を紹介していきます。
① ♂38.6mm 2020年3月中旬自力ハッチ
2019年10月中旬→500cc LBマット

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② ♂ 38.0mm 2020年3月割出 

2019年10月中旬→500cc LBマット

横に太い個体。小型種で細いも太いもないだろう、と思っていましたがよーく見ると全然違います。次期の種親です。

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③ ♂ 37.8mm 2020年3月中旬割出
2019年10月中旬→500cc LBマット

自力ハッチする際に容器に引っかかって顎先が欠けてしまっています。

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④ ♂ 37mm 2020年3月中旬自力ハッチ
2019年10月中旬→500cc LBマット
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⑤ ♂ 37mm 2020年3月中旬自力ハッチ
2019年10月中旬→500cc LBマット

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⑥ ♂35.9mm 2020年3月中旬自力ハッチ
2019年10月中旬→500cc LBマット

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⑦ - ①⑤ ♀ 20mm前半 2020年3月中旬割出(金太郎飴なので割愛します)
2019年10月中旬→500cc LBマット

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①⑥ ♂39mm 2020年4月下旬自力ハッチ

2019年10月中旬→500cc LBマット

今サイクル最大個体が羽化。

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(2回目セットの結果)

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上述してある通り、1400ボトルに産卵1番、バクテリア材を埋め込んだセットを解除せず多頭飼育した結果、4♂3♀を回収。サイズも悪くない...個別管理必要ないのでは...

5.まとめ

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WDからの1サイクルのみのブリードで評価が難しいですが、幼虫も丈夫で容易に飼育出来る印象でした。一方で、累代品は多少寝る場合もあると聞くので、累代継続出来て初めて本種を攻略できたと言えそうですね。まさに次サイクルでのブリード成功が試金石と言えそうです。あまり見かけることは少ないですが、本種含め大陸系ホソアカは美しい種類も多いので是非挑戦してみてください。