1.はじめに
ファブリースノコギリクワガタは、鮮やかなベージュのエリトラ縁部に毛筆でなぞったような黒い紋様が特徴的なビソンノコギリクワガタの仲間です。このグループのノコギリクワガタは、大顎の形状が独特で体色も美しい種類が多いので根強い人気がありますよね。
本種の分布と分類について、インドネシアのスラウェシ島東部に浮かぶペレン島などに生息する原名亜種と、さらに東方のタリアブ島などに生息し、より大型化するtakakuwaiに分類されます。原名との判別が一目では難しいのですが、日〇会長さんが比較記事を詳細に纏められているので勉強になります。原名はコンスタントに野外品が輸入されていますがその殆どが中歯か短歯です。飼育ギネスは72.7mm。出せる気が全くしないので 今回はひとまず大歯を目指してブリードしたいと思います。
2.種親紹介
アリストさんにて2019年3月下旬にペアで購入。送料除きで1,500円くらいだったかな。
体長は49mm 短歯型、といったところでしょうか。冒頭でも述べましたが、エリトラの紋様もそうですが、前胸背板のカラーリングも美しいですね。根強いファンがいるのも頷けます。初めてファブリース触りましたが、結構気性が荒いですね。
こちらは♀ 33mm。大顎を盛んに開閉して威嚇してきます。爪もがっしり引っかかる上に、重量感もあるので爆産してくれそうな感じ。フォルムは国産ノコのメス。リングライトの影響もあるものの、より光沢が強く色彩豊かです。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①産卵セット(2019年4月18日)
便宜上、ペアの写真を掲載していますが、♂の威嚇と♀の拒絶が激しかったため、ペアリングはさせず、持腹前提でセットを組みます。今回使用したのはOYKインセクトの爆産くんを加水し、小ケースに固く詰めたもの。正味、ある程度粒度の細かいマットであれば何でも産むと思います。今回はマットオンリー。朽木割るの下手すぎるのでマット産み種大好き♪
②産卵確認(2019年4月27日)
20度管理で組んでから10日間程で卵を複数確認。爆産の予感。今思えばあと1-2週間で♀を回収しておけば良かった…
③割出 - 幼虫飼育 (2019年9月25日)
卵を確認してから5か月が経過...結果9頭。放置しすぎですね...♀の別居が随分遅れてしまったのでかなり食べられてしまったようです。卵の見え方から20頭くらいは居たように思えたのですが…メスのカロリー源にされましたね。
幼虫飼育は、多めに加水したカワラ菌糸が1本目。♀判定組の3頭はめんどくさいので1400ccでの多頭飼育。他の6頭は800ccの単体管理。12月中盤でマットへ移行。クヌギメインの無添加マット(ヤフオクにて宮崎の業者さんから購入)を加水多目にして使用。♂の体重は9-13gほど。菌糸が泥状に劣化してもコンディションは良好でした。最大体重個体13gは多頭飼育していたボトルから。良い加減、雌雄判定ミスるんじゃねぇよ...
⑤蛹化-羽化(2020年3月- )
♀は一歩早く羽化。光沢があって美しい。
♀が羽化した頃、♂が蛹化開始。最終体重と歯型の形状は以下。
最大体重が何故か中歯に。横にも太そうですが...蛹のタイミングでこの個体は落ちてしまいました。
こちらは最終同体重12g。左の中歯が最終瓶800cc、右の大歯が1400ccになります。温度帯で顎の長短が変化する傾向にあることは周知の通りですが、やっぱりボトル容量にも依存しますね。..
♂は全て人口蛹室で羽化。中歯♂は羽化直後に徘徊してしまい羽化不全...人口蛹室のちょっとしたスペース、きちんと考慮すべきでした。
4.羽化個体紹介
以下、ざっと羽化個体を紹介していきます。
① ♂60 mm 2020年3月羽化。最終体重12g
最長個体ですが顎は細めです。向かって左側の大顎の鋸歯が3つ見られるので辛うじて大歯と言える、のかな?
↓の①-③の鋸歯が揃っていれば文句なしの大歯と思うのだけど、ファブリース原名のブリ経験済み諸兄姉どう思う?特に①の有無はデカいと思うんよな。
② ♂60mm 2020年3月羽化。最大体重11g.
こちらは顎がストレートに伸びてますね。個人的には①よりもこちらの歯型の方が好き。大顎の長さはしっかりでています。
裏も撮影。
③ ♂ 57mm 2020年3月羽化。最終体重9g
濃い赤茶の前胸背板と縁部のコントラストが良い。
④ ♂ 53mm 2020年4月羽化。最終体重12g
羽化直後に人工蛹室の僅かな隙間から抜け出したが為に不全。中歯個体。体長が伸びなかった割に最終体重は①の個体とタイ。
⑤ - ⑧ ♀ は割愛。
35-6mmほどで2020年3-4月羽化。最終体重は軒並み9gにて仕上り。
⑨ (参考) ♂49mm WD
今回、持腹でブリードしたので種親には使用していませんが、撮影したので掲載。短歯個体。2019年3月購入なので、1年以上生きています(2020年6月現在)。♀も1年程生存していましたね。
はい。記念撮影。
大歯〜短歯まで出たので並べてみたの図。小さくなるにつれて大顎が太くなっています。こうしてみると短歯個体だけ異質ですね。鋸歯が消失していくのにも関わらず、短歯になると若干ですが復活しています。歯型問わず大顎基部の突起が発達しているのは、これで樹皮削って樹液吸ってるのかなと。何らか必要な器官なんでしょうね。
5.まとめ
今回目標にしていた大歯の作出。100点満点で自己評価すると60-70点、といったところでしょうか。大顎がどんなに伸びても、やはり大顎基部近くの鋸歯が無いと迫力に欠けてしまうんですよね。今回は惜しくも片顎のみの露出で中途半端!65mm以上は欲しいような印象を受けましたね。寝る種類なので、その間に次サイクルも継続するか考えよう…