1.はじめに
今回はアンタエウスオオクワガタ(Dorcus antaeus antaeus)原名亜種を飼育しました。十数年前にWDペアが百万円単位で取引されていた話は有名ですが、継続してWDが入荷し続けたことと、容易な飼育も手伝ってあっという間に普及、サイズに拘らなければお安く購入できます。ヒマラヤ、インド北東部に生息する原名亜種の他にインドシナ亜種、マレー亜種がいる中で、原名亜種が最も大きくなり、本種を専門で飼育しているブリーダーさんも数多く居ることから、飼育方法が洗練され、血統化も進んでいる印象です。(95mmを超える弩級サイズが作出されているようですね…)野外最大が88mmのようなので、いかに擦られまくっているかが分かります。今回はtwitterで知り合いになったHくんが一旦ブリードを休止するということで、本種の幼虫を譲っていただくことになり、ブリードの機会を得ることができました。この場を借りて御礼申し上げます。
大型個体作出を目指すにあたっては、原産地(今回産地であるブータン王国シェムガン県は標高2000m前後)に合わせた低温飼育が必須になります。飼育記等読むと13-14℃で管理されているのですが、私のブリード部屋の管理温度は18-20℃が基本なのでやや高め。エアコン吹き出し口付近(16-18℃)に置いておけばまぁなんとかなるでしょう。
2.種親紹介
幼虫飼育で割愛
3.幼虫飼育-羽化
①2020年4月11日(ボトル投入)
いただいた初令幼虫。卵もチラホラ混じっています。3ライン送ってもらいました。
エアコン吹き出し口近くの棚を占有。16-18℃です。
② 2021年6月29日(幼虫飼育経過-)
順調に成長しています。1本目はDOSのアンテマットを加水し、800ccボトルに投入しました。かなり肥大化してくれたのでコスパ良いですね。
③ 2021年10月4日(幼虫飼育経過-)
40g前後なのでまずまずでしょうか。2本目へ交換します。2本目は MDクワガタマットプロ改、北斗恵栽園クワガタ発酵マットを加水。使用容器は1500ccと3200ccの両方を使用しました。
④♀羽化(2021年12月29日-)
初令でボトル投入してから8.5か月程で羽化。DOSアンテマット800ccの1本返しです。♂に比べるとマットな質感ですね。ホペイ、クルビ、リツセマの♀とは違って、コクワとヒラタの♀を足して割ったような雰囲気で独特だなと感じます。シェンクリンオオの♀も似たような見た目で本種と近縁とされるのもうなづけます。
⑥ ♂ 蛹化(2022年2月3日-)
初令投入から10か月程で早期蛹化した♂
4.羽化個体紹介
① ♂ 78.8mm (大顎基部:NA 頭幅:NA 胸幅:NA)(C LINE)
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/10/4 MDクワガタマットプロ改 1500cc 36.4g
2022/2/3 蛹化確認 23.5g
2022/3/E 羽化
② ♂ 83.6mm (大顎基部:5.6mm / 頭幅:30.5mm / 胸幅: 32.7mm)(B LINE)
2020/12/25 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/10/4 MDクワガタマットプロ改 1500cc 39.0g
2022/5/15 蛹化確認 26.9g
2022/6/M 羽化
③ ♂ 85.0mm (大顎基部:5.8mm / 頭幅:30.5mm / 胸幅: 33.5mm)(D LINE)
2021/2/25 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/10/4MDクワガタマットプロ改 1500cc 38.7g
2022/8/M 羽化確認
④ ♂ 85.3mm (大顎基部:6.0mm / 頭幅:33.8mm / 胸幅: 34.0mm)(C LINE)
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/10/4 MDクワガタマットプロ改 1500cc 37.7g
2022/9/21 羽化確認
⑤ ♂ 86.6mm (大顎基部:6.2mm / 頭幅:32.1mm / 胸幅: 34.1mm)(C LINE)
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/10/4 MDクワガタマットプロ改 3200cc 39.3g
2022/8/23 蛹化確認 32.0g
2022/9/E 羽化確認
⑥ ♂ 87.2mm (大顎基部:6.1mm / 頭幅:32.1mm / 胸幅: 33.8mm)(C LINE)
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/12/29 北斗恵栽園 クワガタ発酵マット 3200cc 41.5g
2022/8/23 蛹化確認 30.6g
2022/9/1 羽化確認
⑦♀46.9mm (頭幅 13.1mm) (C LINE)
【画像割愛】
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/12/E 羽化確認
⑧♀47.2mm (頭幅 13.4mm) (D LINE)
【画像割愛】
2021/2/25 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2022/2/E 羽化確認
⑨♀47.4mm (頭幅 13.2mm) (C LINE)
【画像割愛】
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/12/E 羽化確認
⑩♀47.6mm (頭幅 13.1mm) (C LINE)
【画像割愛】
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/12/28 羽化確認
⑪♀47.6mm (頭幅 13.1mm) (C LINE)
【画像割愛】
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/12/28 羽化確認
⑫♀48.2mm (頭幅 13.4mm) (C LINE)
【画像割愛】
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2021/10/4 MDクワガタマットプロ改 800cc
2022/3/E 羽化確認
⑬♀50.1mm (頭幅 14.0mm) (C LINE)
2021/1/16 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2022/1/E 羽化確認
⑭♀52.1mm (頭幅 14.4mm) (D LINE)
【画像割愛】
2021/2/25 セット
2021/4/10 DOSアンテマット800cc
2022/5/15 羽化確認
5.まとめ
蛹化-羽化で死亡してしまう♂が複数いたのは残念でした。幼虫時代に大きくなりすぎると羽化が上手くいかないからか腹ボテ個体もいましたし♂の歩留まりはイマイチでした。ただ、マット飼育だけで90mmに迫る個体を出せたので楽しかったですね。♂は2本交換でしたが、2本目の1500ccはやや手狭な感じだったので2300cc以上あった方が良さそうです。蛹化終盤で軒並み暴れていたので、その瞬間に加温、小さめの容器に交換(3本目/捨て瓶)、強制的に羽化スイッチを入れ、また温度を下げるような手間をかければもうちょっとサイズが伸びたような気もします。今のブリード環境で90mmを目指したいですね。実は、本種の継続モチベーション、大型個体を出したいだけではなくて、幼虫の食いカスが微粒子でとても良質なので、色々な種類の産卵マットに使いたいという別の目的もあります。
Hくん、まだまだ続けているのでブリード再開したらいつでもお声掛けください!
6.参考資料・資材