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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

タウルスヒラタクワガタ(カリマンタン島/Mt.Bakayan産)WF1 飼育記録まとめ

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カリマンタン島産 タウルスヒラタクワガタ WD

1.はじめに

今回飼育したのはタウルスヒラタクワガタカリマンタン島亜種(Dorcus taurus subtaurus)になります。本種の分類や飼育方法については、別亜種(jampeanus)のレコードブリーダーである牡牛屋さん(ブログタイトルからタウルス好きが滲み出ていますね)が以下にて大変分かり良く網羅的に纏められていますのでご覧ください。(リンク許可いただきました。ありがとうございます)

dorcustaurus.livedoor.blog

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本種のラベルは主に2産地が流通しています。マレーシア領サバ州(クロッカー山脈)産とインドネシア領北カリマンタン州(Mt.Bakayan)産がそれになります。上記産地の距離は直線で7-800KM程度しか離れていませんが、カリマンタン島は険しい山々に覆われ生息地が分断されているからか、同亜種でも特徴の差異があるようですね。♀でその差異が顕著と聞いたように記憶していますが、牡牛屋さん、亜種ごとの差異含め解説記事の執筆をお願いします。今回、飼育したのは北カリマンタン州の中央部に位置するMt.Bakayan産になります。早速飼育記事に進みましょう。

2.種親紹介

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2020年3月にオークションにて2ペア3,000円程で購入。60mm×61mmの長歯型です。

エリトラの色がそれぞれ違いますね。むかって左側60mmの個体はパープルがかった色合いで、タウルスの典型的なカラーリングと思います。一方、右側の個体はやや黒っぽいですね。顎先が欠け、本種の特徴である大顎のヒゲも薄くなっており、土が付着しているWD感溢れる味のある個体です。

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♀は29mm×27mm

30mmを超える個体を落札したのですが、残念ながら発送前に落ちてしまったようで代替品の27mmがきました。

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茶色いやや大型のダニが付着しています。

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60mm
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61mm

レコードは2020年度に登録された71.0mmですが、比較的大型のペアが入手できたので、真面目に狙っていきたいと思います。

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3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化

①ペアリング(2020年3月26日)

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60mm×27mm WDですが追い掛けします。

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61mm×29mm 特に顎を縛らず、目視でペアリングさせました。

②産卵セット(2020年3月28日)

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材は入れず、小ケースとクリアスライダーにUマットと発酵マットをブレンドしたマットを固詰めした在庫処分セット。レスポンスが良く、クリアスライダーの方のセットはわずか2日で卵が見えました。本種♀は特に卵・幼虫を食べてしまう傾向が強いので、たくさん抱えたい場合はこまめに割出した方がよさそうですね。今回もかなり食べられてしまった印象でした。

③孵化-割出(2020年4月24日-)

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セットを組んでから1か月程で孵化。20℃くらいで一貫して管理していましたが、やや低温でも問題なく産卵し、孵化してきます。

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卵の負荷率は100%と丈夫です。

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マットのみでも問題なく産みます。材は必要ないかと思います。

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結局2ラインから14幼虫11卵を回収。まだまだ産みそうでしたが打ち止めとします。今思えば、半数近く落ちてしまったので、もっと搾り取っておけばよかったですね。

④幼虫飼育(2020年6月-)

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初令幼虫の雌雄判別が難しいので500-550cc容器を使用しました。1本目は菌糸、2本目以降はマット飼育を基本としてブリードしましたが、初飼育ということもあり色々と試しました。ただ、菌糸種はヒラタケ系で統一したかったのですが、在庫処分の関係でカワラ菌糸も使ってしまっています。このような節操のなさがレコード獲得から自らを遠ざけているのでしょうね…泣

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レコードクラスの幼虫体重は22-3g以上は確実に必要な印象です。20gの幼虫も出たのですがこちらは残念ながら落ちてしまいました。三齢初期までは18-20℃で飼育し、そこから有望そうな♂は16度設定のセラーにて低温で管理しました。

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♀は全体的に成長が早く、孵化後5-6か月で蛹化してしまう個体が多い印象でした。

⑤蛹化-羽化

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長歯で羽化した♂

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後脚がクロスした蛹。上翅を押し上げるタイミングがずれるからか羽化不全する場合が多く、案の定本個体も羽パカしてしまいました。

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蛹化後は徐々に昇温し、22-24℃で羽化させました。
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タウルスヒラタクワガタの♀ 腹部が毛深く、和名のクシヒゲヒラタクワガタの特徴は本種♀でも十分表現されていますね。

4.羽化個体紹介

① ♂ 53.7mm Aライン:種親(60mm×27mm)f:id:kohya0727tj:20210314024153j:image

2020/3/28 セット→5/28割出

2020/6/5 月夜野カワラ500cc 

2020/8/26 グローバルLBマット 800cc 11g

2020/12/M 羽化

 ② ♂ 56.5mm Aライン:種親(60mm×27mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出

2020/6/5 月夜野カワラ500cc

2020/8/26 グローバルLBマット 800cc 15g

2020/9/29 前蛹→2020/10/20 蛹化

2020/12/E 羽化

③ ♂ 58.7mm Aライン:種親(60mm×27mm)

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2020/3/28 セット→5/25割出

2020/6/5 月夜野カワラ500cc

2020/8/26 KBカワラ 1500cc 12g

2021/1/24 掘出

④ ♂ 62.8mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出 (卵)

2020/7/7 月夜野カワラ500cc

2020/12/17 AG割カス+DOS生オガ 1300cc 14g

2021/2/M 蛹化確認 10g

2021/3/M 羽化

⑤ ♂ 65.5mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出

2020/6/5 月夜野カワラ500cc (カビ交換) 4g

2020/7/17 グローバルLBマット1400cc 4g (途中から16度管理開始)

2020/10/17 グローバルLBマット1400cc 17g 

2021/3/23 蛹化確認 11g

2021/4/M 羽化

⑥ ♂ 66.2mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出(卵)

2020/7/7 G-pot 550cc

2020/12/29 KBファーム AG1400cc 17g 

2021/4/13 クワガタ発酵マット 19g

2021/6/M 蛹化確認 12g

2021/7/M 羽化

⑦ ♂ 66.8mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出(卵)

2020/7/7 G-pot 550cc 

2021/1/5  グローバルビートルマット 13g (16℃管理開始)

2021/10/5 蛹化確認 11.8g

2021/11/10 羽化確認

⑧ ♂ 67.3mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出(卵)

2020/7/7 G-pot 550cc 

2020/12/29  KBファーム AG1400 16g (16℃管理開始)

2021/4/13 クワガタ発酵マット 19g

2021/6/20 蛹化確認13g

2021/7/23 羽化確認

⑨ ♀ 31.7mm Aライン:種親(60mm×27mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出

2020/6/5 月夜野カワラ500cc 

2020/12/17 羽化確認

⑩ ♀ 34.0mm Aライン:種親(60mm×27mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出

2020/6/5 月夜野カワラ500cc 

2020/12/17 羽化確認

⑪ ♀ 32.5mm Aライン:種親(60mm×27mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出

2020/6/5 月夜野カワラ500cc 

2020/12/17 羽化確認

⑫ ♀ 32.0mm Aライン:種親(60mm×27mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出

2020/6/5 月夜野カワラ500cc 

2020/12/17 羽化確認

⑬ ♀ 32.6mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出(卵)

2020/7/7 月夜野カワラ500cc 

2021/1/24 羽化確認

⑭ ♀ 30.3mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出(卵)

2020/7/7 G-pot550cc

2020/12/29  DOS3次発酵マット 500cc 4g 

2021/3/M 羽化確認

⑮ ♀ 34.5mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出(卵)

2020/7/7 月夜野カワラ500cc 

2021/1/M 羽化確認

⑯ ♀ 34.6mm Bライン:種親(61mm×29mm)

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2020/3/28 セット→5/28割出(卵)

2020/7/7 月夜野カワラ500cc 

2021/1/24 羽化確認

5.まとめ

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レコード更新を意識して飼育したものの遠く及ばない結果となりました…次世代はもう少し抱えて再挑戦です。本種の生息地である北カリマンタン州のMt.Bakayan周辺ですが最も高い場所でも標高が1,300m程しかないので低温耐性がなさそうな印象でしたが、18-20℃管理で早期羽化する個体も居ましたし、16度で管理していた幼虫も活発に活動していました。また、前蛹段階で停電からの復電によりセラー温度が一桁温度近くまで下がって丸1日晒してしまいましたが、不全することなく羽化しました。これらを踏まえて低温にはかなり強い種類と認識を改めましたが、低温管理に移行する前に羽化してしまう個体群(今回のブリードでいえばAライン)もいる印象を受けたので、Bラインのようにじっくり育つ個体群を多く抱えたいところです。

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WD♂(60mm)と⑨の♀で既にアウトラインは仕込み済み。インラインの種親選定が悩ましいところです。次世代種親の♀は⑯を使用しますが問題は♂....14-5頭から種親を選ぶ予定だったのですが、途中落ちてしまったので…最大サイズは⑦なのですが、歯型から限界が来ている顔と判断、対象外とします。一番バランスの良い⑤か、顎の伸びにポテンシャルを感じる⑥も捨てがたい…孵化から羽化まで16‐7ヶ月引っ張れた⑦で悩みたいと思います。