1.はじめに
今回飼育したのはパプアヒラタクワガタ(Dorcus arfakianus)になります。①個体差著しい大顎の形状、②大型化するほど凹凸が明瞭に発現する複眼周辺のアバタ模様、③太ましい前胸背板、④後脚先端部に密集する褐色の微毛等、とにかく見た目がとても特徴的なクワガタで、前々から飼育したいと思っていました。大顎の形状は遺伝の要素が強いのか、サイズに関係なく長歯型と短歯型が発現するようです。
野外品を購入したのですが、産地はインドネシア 西パプア州 アルファックになります。アルファック山の標高は2955mと西パプア州最高峰ですが、本種はニューギニア島全土、低地から高地まで広く分布し、条件の良い洞に大型の♂が居座り、何匹もの♀とハーレムを形成する習性を持つことが知られています。
2.種親紹介
♂ 24mm
内歯が1本で上の方についている小型の♂ 長歯っぽい感じですね。複眼近辺のアバタは小さすぎて特徴が出ていません。エリトラ縁部に微毛がみられますね。
♀ 22mm
♂と同じようにエリトラ縁部に僅かに微毛が確認できます。
♀と並べてみると、小型ながら♂の前胸背板の幅の広さや丸みがよく分かります。
以下、ホワイトバック写真( レンズが傷ついて霞んで写ってしまっている…)
頭楯にブラシ状の鮮やかな微毛が密集しているのがわかります。後脚先端部の微毛は小型だからかあまり主張していません。
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①産卵セット(2021年5月30日)
ケースはダイソーのパン屋さんを使用。種類は忘れましたが幼虫飼育で使用したマットを篩掛けし、堅く詰めただけ。管理温度は20℃
②割出(2022年1月19日)
プライベートが色々と忙しく、産卵セットのまま半年以上放置してしまいました。しっかり管理できる範囲で抱えないと何もかも中途半端になってしまいもったいないですよね。反省です…20頭程幼虫がいた中でまだ伸びしろがありそうな3♂のみを選別、グルコースを添加した菌糸ボトル(500cc)に投入します。
③蛹化(2022年8月中旬)
③羽化(2022年9月中旬)
羽化間もない長歯個体。
4.羽化個体紹介
① ♂52.5mm
2021/5/30セット→2022/1/19割出
2022/1/19 月夜野エレメント(添加剤/グルコース)500cc 7g
2022/10E 羽化確認
② ♂56.5mm
2021/5/30セット→2022/1/19割出
2022/1/19 月夜野エレメント(添加剤/グルコース)500cc 7g
2022/8/23 蛹化確認 9.2g
2022/9M 羽化確認
③ ♂57.0mm
2021/5/30セット→2022/1/19割出
2022/1/19 月夜野エレメント(添加剤/グルコース)500cc 9.5g
2022/9M 羽化確認
5.まとめ
個別管理してから17-18℃まで温度を下げていたものの、セットを組んでから9か月程で羽化。低温管理にも関わらずヒラタ系としては標準的な幼虫期間でした。もうちょっと温度を下げて引っ張っても面白そうです。また、添加剤マシマシの菌糸も問題なく摂取していたので、色々と配合を試すなどして胸幅特大個体の作出!とかも面白そうですね。長歯で揃ってしまうとない物ねだりでマルバネのようなゴツい歯型の短歯も拝みたくなります。
とはいえ、種親では見れなかった複眼周辺の掘りの深いアバタも見れて非常に満足しています。
あれ??♀の画像は??という感じなのですが...実は♂を選別したあと、産卵セットに投入したまま月日が流れてしまい全頭絶やすという失態を犯したのですが、Twitterで交流のあったM氏から同産地の♀を譲っていただけることになりました。この場を借りて御礼申し上げます。次回は今回作出した個体を上回るTwitter血統をお見せしたいですね。
6.参考資料・資材