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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

長崎県 対馬 チョウセンヒラタクワガタ 採集記

チョウセンヒラタクワガタ WD ♂
(Dorcus consentaneus consentaneus)

1.はじめに

昨年に続き今年も対馬に行ってきました。

前回の雪辱を果たすべくチョウセンヒラタクワガタDorcus consentaneus consentaneus) 狙いです。昨年の対馬採集記はこちら。山越え谷越えを忌避しがちだった去年の反省を踏まえ、今年は「踏破」をスローガンに置きました。

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2.採集本編

勿体ぶらずにいきなり結果からご紹介。

今回、三産地から合計9♂2♀を確認できました。いやもう、感無量です。

以下、採集個体を紹介します。

■A産地

①♂ 28.1 mm 

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わずかに樹液が滲み出るコナラの捲れに、頭を突っ込んでいました。小さすぎて、手に取るまでは本種とは分かりませんでしたが、前脚や頭楯、尻の丸みなど、特徴がしっかりと表れています(※特徴については簡単に後述しますので、よろしければご覧ください)。記念すべき私のチョウセンヒラタ初採集個体は、越冬を経たためかボロボロな姿でしたが、それでもとても嬉しい一頭となりました。

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② ♂ 28.4 mm

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①採集した場所から数十メートル離れた地点で確認。樹液も何も出ていない大きなウロの側面で休んでいたようです。

 

A産地は比較的内陸で標高は60-70mほど。念のため周囲にバナナトラップを仕掛け、夜に再訪しても採れませんでした。①のポイントに至っては一晩でイノシシに持っていかれ跡形も無くなっていました。対馬では地面近くにフルーツトラップを設置する場合は色々と対策が必要そうです...

 

■B産地

③ ♂ 28.4 mm

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④ ♂ 30.3 mm

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⑤ ♂ 30.3 mm

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このポイントは、公道からほど近く、アクセスしやすいイージーな場所。昼間から複数のチョウセンヒラタが樹液を吸っている様子が見られました。実はその中で、2頭のメスがペアリングしている場面にも遭遇したのですが、痛恨のロスト。メスは警戒心が強いようで、近づいた瞬間にどちらも落下し、そのまま根元に空いた穴へ吸い込まれていきました。まるで漫画のような展開に、いい歳をした中年男性の咆哮が林内に響き渡ったのは言うまでもありません。この時ばかりは、前世で徳を積めなかった?自分を本気で呪いましたね。

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夜に再訪したときはいませんでしたが、別日の昼間に小さな♂がいて、コクワガタと小競り合いしている光景が観察でき、良いものを見せてもらいました。

 

■C産地

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ついにやりました。

チョウセンヒラタクワガタのペア採集に成功。B産地でやらかしているのを見兼ねた神仏の施しでしょうか。実は日頃の行いが良いのかもしれません。今回は歓喜の雄叫び。

⑥ ♂ 26.6 mm

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⑦ ♂ 38.0 mm

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⑧ ♂ 41.7 mm

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♀ 26 mm

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⑩ ♀ 22 mm

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ペア採集後に41.7mmの大型♂、越冬個体でボロボロですが♀も追加するという神展開。

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いずれもアベマキやコナラの根本の捲れに絡む樹液木にいました。

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ポイントは危険なガレ場のある谷を超えた山奥で標高は110-120mほど。

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厳重な装備の上、かなり苦労して入っているので、この記事を読んで興味を持たれた方は、しっかりと準備を整えて入山してください。アイゼンは必須装備ですし、ヘルメットやフルハーネス安全帯もあればなお安心です。

3. チョウセンヒラタクワガタの特徴について

大型個体であれば、見ればすぐに分かるだろ?という感覚もありますが、実際にフィールドで遭遇すると悩ましくなるのが、ツシマヒラタと本種の小型個体です。そこで今回は、頭部の比較をしてみます。

<ツシマヒラタクワガタとチョウセンヒラタクワガタの小型♂の頭部比較>

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頭楯の形状がまったく異なる(赤線部分)点に加え、大顎基部はツシマヒラタと比べると小型個体でもしっかり発達しています。一方で、顎の幅はかなり狭くなっているのが特徴です。

つぎにメスの比較写真をば。複眼周りや前脚先端の曲がり方の違いはよく知られていますが、大顎の太さやエリトラ縁部の湾曲具合も違いますね。

<ツシマヒラタクワガタとチョウセンヒラタクワガタの♀の頭部比較>

 上がツシマヒラタ。下がチョウセンヒラタになります。複眼縁部下部と胸部縁部の距離の狭小度に違いが見られますね。チョウセンヒラタは頭楯が僅かに凹んでいるように見えます。

<ツシマヒラタクワガタとチョウセンヒラタクワガタの♀の全体比較>

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左がチョウセンヒラタで右がツシマヒラタです。特筆すべきはエリトラ下部にかけてチョウセンヒラタの方が膨らみ、下膨れしていますが、ツシマヒラタがストレートでスッキリした見た目です。ただ、全体を眺めると小型な分、ツシマヒラタより細いです。特大個体は分かりにくくなるかと思われます。

 

なお、本種とツシマヒラタの特徴比較については、観音崎自然博物館の学芸員の方のブログで非常に分かりやすくまとめられており大変参考になりすので、気になる方はぜひご覧ください。

cybister20.exblog.jp

 

4. 番外編 - ツシマヒラタクワガタの顎の長さに地域差はあるか? - 

今回の3日間の遠征では、約600kmを車で走りまわり、朝から晩までチョウセンヒラタ採集に勤しみました。そのついでに「ツシマヒラタの顎の長さに地域差はあるのか?」というサブテーマを設定し、できるだけ多くの大型個体(70mm以上縛り)を観察・記録することに決めていました。

対馬は、日本でも10番目の広さを誇る大きな島であり、本種に酷似しつつも、より細く長い顎を持つファソルトヒラタクワガタ朝鮮半島に生息)に近い地域でもあります。特に「上県に行くほど顎が長くなる」といった話を耳にすることもあり、その真相を確かめてみたいという思いが、今回のサブテーマ設定の背景です。

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結果として、最大75mm UPを筆頭に、10頭の大型個体を採集することができました。

た。

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上記BOXの個体の顎率を下記のとおり。

顎率(全長に占める顎の長さ比)

(1-(体長/全長))

上県

下県

0.321

0.304

0.327

0.314

0.339

0.317

0.344

0.318

 

0.325

 

0.333

とにかくN数が少ない(70mmBOX作るの大変でしたけど…)ので偶然な感じが否めないですが、やっぱり上県の方が顎が長めな個体が多いのかもしれません。2日間で大小含めて上県にて50頭ほど見ましたが、上県の方が下県よりもファソルトに近いタイプの個体が濃いエリアが多く、ある程度傾向はありそう、というのが所感です。

参考までに上県と下県でそれぞれの顎率最長・最短の写真を並べてみます。

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左が上県産で全長70.3mm 顎率は0.344である一方で右の下県産は全長71.5mmで顎率は0.304となります。こうして並べてみると顕著に違って面白いですね。

<参考資料 -顎率0.344個体の採集風景->

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シラカシの根元の窪みに潜む本個体。写真がブレてしまっていますが、この状態からでも顎の長さと細さが伝わってきました。

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掻き出した直後。思わず「なっげー」とつぶやいていました。この木からは似たような特徴を持つ♂が10頭ほど得られましたが、♀は不在。ブリードしたいなと思い夜に再訪も考えましたが、ポイントまでのアクセスに非常に難儀したので今回は諦めました。

5. チョウセンヒラタクワガタ 採集 まとめ

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上記の番外編では少し脱線しましたが、今回の採集記、いかがでしたでしょうか。
書籍やネット情報などで、本種の生息環境については以下のように紹介されていることが多いかと思います。

  1. ツシマヒラタがいない環境を好む

  2. 海に近い森に生息している

  3. 木の根元にいることが多い

1と2については、ケースバイケースと言えるのではないでしょうか。実際にはツシマヒラタを同じ木で見かけることもありましたし、比較的内陸のポイントでも確認できました(島なので、そのあたりの感覚は人それぞれかもしれません)
おそらく個体数は少ないものの、局地的に薄く広く生息しているため、そのように表現されているのでしょう。本土の低地に生息するスジクワガタのような存在かもしれません(自宅がある神奈川県東部ではかなり局地的な生息イメージでそうした表現になりました。低地だが沢山居るぞ!という方、ご容赦ください…すみません、また話がそれました)
ちなみに、海辺近くの林縁部でもツシマヒラタは多く見かけたため、本種の生息には別の要因があるのだと思います。3については同感で、目線の高さで採集できた個体は3頭だけで、残りはすべて木の根元で確認できました。

今回のチョウセンヒラタ採集遠征では、時間のあるときに地図を広げ、本種がいそうなポイントを一つひとつプロットしていきました。そして実際に訪れた際には、それらをすべて回り、山を越え谷を越え、3日間で30km以上を歩き通しました。その結果、本種と出会えたのは、まさに足で稼いだ成果だと感じています。

さらに、数が採れはじめると、どこにいるのかの勘も冴えてきて、予想した場所で見つけることができるようになりました。やはり何事も、経験を重ねて感覚を磨くことが大切だと、今回の遠征を通じて改めて実感しています。

しばらく対馬には足を運ぶ機会はないかもしれませんが、未採集の別種にもこだわりを持って挑戦していきたいと思います。最後まで長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。


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