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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

アラガールホソアカクワガタ(パラワン島 ブルックスポイント Mt.ガントン産)CB 飼育記録まとめ

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アラガールホソアカクワガタ パワラン州ブルックスポイント Mt.ガントン産

1.はじめに

今回の飼育種は、フィリピンのパラワン島に生息し、赤味のある大顎、せりあがったトサカのような頭楯、ベージュの体色が特徴的なアラガールホソアカクワガタ(Cyclommatus alagari)です。本種の魅力は何といっても大型化すればするほど立体化・発達する大顎と頭楯ですね。WD品は毎年コンスタントに輸入されていて累代品も多いので流通量は少なくありません。コロナウイルスの影響で今年のフィリピン便は厳しいかな…

産地はMt.ガントン産やMt.マンタリンガハン産、それらの山塊を包含するパラワン州ブルックスポイント産のラベルをよく見かけます。ブルックスポイント隣のバタラザ産も数は少ないですが流通しているようです。

相場は最大内歯基部から突起が下方に出る所謂「スーパー大歯」は別として、サイズに拘らないのであれば安く手に入りますし、飼育自体は容易な方なので、ホソアカ入門種として非常にオススメです。話が戻りますが、「スーパー大歯」は、ホソアカ好きの心を揺さぶる艶めかしい形状で飼育で作出するのは至難の業。幾多のブリーダー諸兄が苦杯を舐めてきました。事実、野外レコード74.0mmに対して飼育レコードが65.7mmなので8.3mmの差は本種を大きく育てることの難しさを如実に表していますね。短歯、通称ハサミ虫を連発することも普通のようなので、まずは55mmを目標に頑張りたいと思います。

2.種親紹介

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短歯型 ♂37mm ブルックスポイント Mt.ガントン産 CBF4. 2019年1月にオークションでペアで購入。値段は2,700円。購入して1か月ほどで後食を開始。3月頃からペアリングさせようと思ったものの♀が急逝。ブリード継続のピンチに陥りましたが知人に♀を譲ってもらいました。

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♀28mm ブルックスポイント Mt.ガントン産 30mm弱の♀ってそこそこ大きいような...

3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①ペアリング

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2019年4月後半にペアリング。♂交尾欲がすさまじく、オガを敷いたプリンカップに投入するとすぐさま交尾行動へ。エゲツない姿勢で♀をホールドしていますな。

②産卵セット(2019年4月後半)

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産卵セットの使用容器はデジケースの小。OYKインセクトの爆産くん特Aマットを水分多目に加水(産卵一番等の低添加マットで問題なく産むと思います)し、壁面だけ固めるようにセッティング。このときの温度は24-5度くらいで管理。

③割出(2019年9月中旬)

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セットを組んで約1か月もすると容器壁面からたくさん幼虫は見えていたのですが、忙しくて放置。挙句の果てには可食部がなくなったようで表面に出てくる個体が居たので大変遅ればせながら割出を決行。

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軒並み4gほど。

④幼虫飼育(2019年9月~)

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合計22頭回収。♂は1400cc/800cc、♀は500ccへ投入。使用マットはきのこの山のLBマットを握って水が出るくらいまで加水したものを使用し20度で管理しました。

⑤羽化(2020年1月~2020年3月)

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2020年1月頃から小型の♂と♀が先行して羽化。♀は自力ハッチしてきている個体が多かったので恐らく12月初旬くらいには羽化していたかもしれないですね。

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中型♂は2月中旬から順次羽化していきました。

4.羽化個体紹介
以下、ざっと羽化個体を紹介していきます。
① ♂56.3mm 2020年3月中旬羽化。
今回サイクルの最大個体がこちら。またまだ大歯とは言えないレベルです。とはいえ初挑戦で55越えできたので素直に嬉しいですね。
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② ♂ 53.7mm 2020年2月羽化。
綺麗な個体です。
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③ ♂ 52.5mm 2020年2月中旬羽化。
50mmを超えていますが内歯の発達が未熟です。

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④ ♂ 51.5mm 2020年3月中旬羽化。

こちらの個体は③よりも小型ですが内歯が発達していますし、頭楯のトサカも同様に見応えがありますね。

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⑤ ♂50mm 2020年2月中旬羽化。

このあたりから頭楯のトサカが消失してきていますね。

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⑥ ♂ 50.0mm 2020年2月中旬羽化

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キクロの裏面が好きだったりします。

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⑦ ♂ 48.5mm 2020年2月中旬羽化。f:id:kohya0727tj:20200328010354j:image
⑧ ♂ 48mm 2020年2月中旬羽化。

50mmを切ると大顎が直線的になり、内歯がさらに下にきて二股状になっています。

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 ⑨-⑩ ♂48mm 2020年1月頃自力ハッチ

⇒知人へ里親に。

⑪-⑳♀25-28mm程は1匹のみ掲載し割愛!(撮影するのめんどくさいのよ) 

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5.まとめ

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初挑戦で当初目標である55mm越えを達成したものの大歯の作出は出来ませんでした。そんな簡単にいくわけないだろうが!60mmを超える個体を作出されている諸先輩方は、①初令から1低温管理の徹底と②マットが腐るギリギリのラインで加水し交換頻度を落としていると聞きます。①は実現できるとして、やはりポイントは②でしょうね。お前もうちょい早く割出しようや...加水すれば劣化は早まりますし、酸欠も引き起こしかねない...工夫の余地が沢山ありそうです。いくつかアイディアがあるので次サイクルで実践、紹介したいと思います。サイズが伸ばしにくい本種はブリードのやりがいがある点が魅力ですが、変化に富む大顎の歯型や頭楯、見た目の美しさ等も根強い人気の要因なんだと思います。みんなでアラガールやりませんか??

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小型化するにつれて大顎は直線的になり、内歯が徐々に下がっていき、鋸歯と同化します。(種親画像参照)