1.はじめに
今回の記事は自己採集の愛知県産ヒラタクワガタ(Dorcus titanus pilifer)の累代記録になります。早いものでF2まで来ました。 先代の記録でも記載したように、採集場所は造成され太陽光発電所になってしまっています。年々個体数が少なくなっているので、大事にブリードしていきたいですね。(余品が大量に出てしまうと捌くのが大変なので)今後は1ラインでいきますが、今シーズン中に60アップ♂が採れればもう1ライン足しても良いかな?と思っています。昨シーズンに、同産地で小規模ですが新規開拓ができ、その場所では死骸ではあるものの、67mmを超える大型個体が確認できたので、6月頃から7月初旬にかけて探索したいと思っています。
本州生息個体としてはかなり大型です。生きているときに見つけたかった…
おそらくカラスに啄まれたのでしょう。
同産地産の58mmとの比較。
どの地域でも共通かと思いますが、発生初期の新成虫は根城が固定化されていないのでフラフラしており、何の変哲もない樹液木にペタッと張り付いていたりします。これが8月になってしまうと、大型個体から条件の良い洞に居着いてしまうので、手軽に行える採集としては6-7月がベストシーズンと考えています。少し脱線してしまいました。前回記事では、今回サイクルで70mmUPの目標を掲げいたのですが、これがどうなったか見ていきたいと思います。
2.種親紹介
今回は70UPを目指して、3ラインで臨みました。①×③をAライン、①×④をBライン、②×⑤をCラインとします。種親選定の際に、体長のある①か横に太い②で悩みましたが、縦に伸びそうな①に重点を置くことにしました。個人的には顎もボディも太い個体が好きなので…
①♂63mm:採集エリアは比較的顎が短くて横に太い個体が多いのですが、この個体は顎が細めです。
②♂60mm:馴染みあるフォルム。
③♀36mm
④♀35mm
⑤♀35mm
3.ペアリング-産卵セット-割出-幼虫飼育-羽化
①ペアリング(2020年9月25日)‐産卵セット
Aライン及びBラインは川口商会の産卵マットにホダ木を埋め込みんで組みます。一方でCラインはマットのみでのセット。
②割出(2019年11月26日‐2020年1月10日)
1回目割出(2019年11月26日)
以下の通り、計18幼虫6卵を回収、材に穿孔している個体も居そうだったので、埋戻しをして年明けに2回目割出を行います。
■Aライン
8幼虫4卵を回収。
■Bライン
8幼虫1卵を回収。
■Cライン
4幼虫1卵回収したものの、2幼虫はブヨブヨ病に罹患…
2回目割出(2020年1月10日)
Bラインから追加で6幼虫を回収。
③幼虫飼育(2019年11月~)
1本目は基本的には月夜野BASIC(オオヒラタケ系)を使用し、2本目以降はマットを使用します。一本目は430プリカを使用、20度で一定管理していきます。
菌糸に投入する前の養生プリカで加齢した個体。ポテンシャルが低いのか温度が低いのか分かりませんが、この個体を除いて成長は総じて遅めな印象です。
④蛹化(2020年4月-)
↓4月に入り早くもメスが蛹化。
↓♂の蛹化第一号は5月中旬ごろから。
↓最大個体の蛹。
⑤羽化(2020年4月末-)
小さな♀が4月末に羽化。
最大個体は9月中旬に羽化を確認。
羽化後1か月ほど時間をかけて固化していきます。写真はテネラル個体。
4.羽化個体紹介
(Cライン)
① ♂57.6mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出→月夜野B 430cc
2020年2月27日 DOS SRDヒラタケ 500cc 3g
2020年4月4日 DOS生オガ 800cc
2020年9月15日 割出(羽化確認)
(Bライン)
① ♂54.8mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出→月夜野B 430cc
2020年4月4日 DOS生オガ 1400cc (11g)
2020年9月15日 割出(羽化確認)
② ♂53.0mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出→月夜野B 430cc
2020年4月4日 DOS生オガ 1400cc (11g)
2020年9月15日 割出(羽化確認)
③♂58mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出(埋戻)
2020年1月10日 月夜野B 430cc
2020年4月11日 DOS生オガ 1300cc (11g)
2020年9月15日 掘出(羽化確認)
④♂57mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出(埋戻)
2020年1月10日 月夜野E 430cc
2020年4月9日 DOS生オガ 800cc (8g)
2020年12月1日 羽化
⑤ ♂ 64.4mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出(埋戻)
2020年1月10日 月夜野B 430cc
2020年4月9日 DOS生オガ 1300cc (13g)
2020年9月11日 蛹化確認(12g)
2020年9月15日 羽化
⑥ ♂ 63.0mm
2020年1月11日割出
2020年1月11日 月夜野B 430cc
2020年4月2日 DOS生オガ 800cc (8g)
2020年9月18日DOS生オガ 800cc (14g)
⑦ ♂ 62.4mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月25日割出→月夜野B 430cc
2020年3月27日 DOS生オガ 1400cc (13g)
2020年8月24日 捨てビン800(14g)
2021年4月1日 自力ハッチ
⑧ ♂ 60.0mm
2020年1月11日割出→月夜野B 430cc
2020年3月27日 DOS生オガ 1400cc (6g)
2020年9月15日 DOS生オガ800(13g)
⑨ ♀ 37.8mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出(埋戻)
2020年1月10日 月夜野B 430cc
2020年4月9日 DOS生オガ 500cc (4g)
2020年9月28日 羽化
⑩ ♀ 34.4mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出(埋戻)
2020年1月10日 月夜野B 430cc
2020年4月9日 DOS生オガ 800cc (5g)
2020年9月頃羽化
⑪ ♀ 34.1mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出(埋戻)
2020年1月10日 月夜野B 430cc
2020年4月9日 DOS生オガ 500cc (4g)
2020年9月頃羽化
⑫♀35.6mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出→月夜野B 430cc
2020年4月4日 DOS生オガ 500cc (4g)
2020年7月末 羽化確認
⑬♀33.9mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出→月夜野B 430cc
2020年4月4日 DOS生オガ 800cc (5g)
2020年8月末 羽化確認
Aライン
①♀35.8mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出→月夜野B 430cc
2020年2月27 DOS生オガ 800cc (6g)
2020年7月末 羽化確認
②♀34.8mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出→月夜野B 430cc
2020年2月20日 AG800cc (3g)
2020年7月末 羽化確認
③♀30mm
2019年9月25日産卵セット
2019年11月26日割出→月夜野B 430cc
2020年4月27日 羽化確認
5.まとめ
残念ながら70mmUP作出の目標達成ならず。
65mmにも及ばなかったので出直しです。雌雄ともBラインから最大個体(64.4×37.8)が出ましたので、来期はこのペアを種親として使用する予定です。初齢の菌糸食い上げが悪く、F2でも菌糸慣れしていない印象でした。WF1からガンガン菌糸を食べていた福岡産と対照的なので興味深いですね。次世代こそはなんとか70UPを手にしたいところです。温度環境や幼虫のボトル投入タイミング、用品選定など改善余地があるので微修正しながら地道にやっていきたいと思います。ここまでご一読いただきありがとうございました。
左が親個体兄弟60mm。右が最大個体64.4mmのコラボショット。